第53話 社会の形 3
「それで、その話と部活の勧誘が上手くいかないことについてどんな風に繋がるのか、教えてよ」
「分かってる。まあ大体察してると思うだろうがな。俺たち準貴族の血族は、純潔一族にとっては忌むべき一族なのさ。当時、純潔一族に反発した一族をそう差別したからな。だからこの国にとって、ただ歴史だけが長いだけの危険分子の一族を、社会全体で良しとしない風潮になっている。それこそ、親密になるなんて言語道断ってことさ。仕事上とか、クラスメイトとしてある程度関りを持って話すとかは良くても、一緒に部活をするなんて、この国の文化的常識からしたら考えられないってこと。そんで、俺たち天文学部には、その準貴族の一族である俺と、オズマンドとメーヴィスがいる。そんなところに、純潔一族はもちろん、準貴族じゃない普通の住民たちや、今の国王進めた移住政策で入ってきた、この国の文化を知っている人たちは怖くて入れないってことだよ。純潔から目を付けられたらこの国じゃ生きていけないからな。アルマリアの両親みたいな仕事とかしてない限りな」
「うちの親の仕事? ああ、なんか大きい協会のこと?」
「そう。純潔協会の幹部職員まで上り詰めたアルマリアの両親は、純潔からしたら失えない貴重な人材だってことだ。しかも、エルヴィラの両親とも繋がりが強い。逆を言えば、そのレベルの社会的地位がないと、純潔の影響力を以て社会的に生きていけなくなるんだ」
「なんだか、行きにくい国だね。なんでみんなこの国で生きてるんだろう。世界はこの青空の下で広く存在しているのに」
「そのリスクを承知していれば、余りある魅力があるんだろうな。なんせ、この国は魔導先進国だからな。魔法や魔術、魔具とか、魔力が関わることについてはこの国においてあのレダラム帝国を差し置いて右に出る国はない。つまりは惚れてるんだろ」
「それ、いわゆる”恋は盲目”ってやつ?」
「微妙に違う気がするが、まあ間違ってる感じでもないな。この国の悪い生き方に慣れて、魅力にふれてるんだろ」
これでこの部活に人が集まらない理由がよく分かった。つまりは文化レベルで根付いた差別的、区別的意識がそうさせてる。違和感を感じても、それを直すよりも受け入れるメリットを選択する人たちが非情に多いってことなのだと。それを感じて、私は改めて心に深く、こう思ったのだった。
この大空のように自由に生きた方が絶対に良い。