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第49話 青い空に流されて

 私は目を覚ます。いつものように朝ご飯を用意し、制服に着替え、身なりを整える。途中で窓を開けて自然の風に体を晒す。そしていつもの時間に家を出て、学校へと向かう。

 今日は快晴。ちょうど1週間前にあった激動の一日を乗り越えた私を労わってくれているようにも見える空は、見ているだけで私の心を満たしてくれる。


 エルヴィラの誘拐事件、アーネストとの決闘の日は、救出成功という結末で幕を閉じた。その後は学校へと戻ると、解放されていたジークたちとエルヴィラの捜索に出ていた先生、オリヴィンとレティシアが待っていた。私は皆に事情を報告した。少しだけ曖昧な表現をして。そう、誘拐の黒幕は私が撃退し、すでに逃亡。自分の他に捜索に来ていたアーネストと一緒に戻った、ということにした。なぜアーネストを黒幕だと言わなかったかは、正直自分でも分からない。でもそのおかげで、アーネストの生活には全く影響なく、いつもの日常に合流していた。


 この事件は世間で大きく取り上げられた。エルヴィラの両親は「保守派の過激的行動を非難する」という趣旨の演説をして、世間の評価を一定数上昇させたらしい。多分その行動にはいろいろな意味合いを含めているだろうが、少なくとも、親として、子供を想っての意味合いも含めているのなら、私は得に何も思わなかった。

 その事件後、ちょうど1週間は安全のためとエルヴィラを完全個別学習という形で学校には来ないことになった。それも今日、解除となって登校する日になる。

 

 学校へとたどり着き、教室へと歩みを進める。時間ギリギリとなった廊下はすでに静寂に近づいており、生徒たちはほとんど廊下に出ていない。私は自分のクラスのドアまで行き、開けて中に入る。

 私が中に入ると、クラスの全員が一瞬私の方に目を向ける。そのほとんどはすぐに目を各々の興味がある方へと戻すが、今日は友人以外にも、いくつかの視線が長く届いていた。私はその視線を気にせず、自分の机に行く。


「おはよ! アルマリア!」

「おはようございます。今日はギリギリですね」

「昨日夜更かしでもしたのか? 夜空でも堪能していたんだろ」

「マリアは星空も好きだからね!」

「おはよう、みんな。うん、まあたまたまだよ。ほら、もうチャイムなるよ」


 私が席についたちょうどその時、チャイムが鳴る。同時に担任のエルディン先生が時空間魔法によって出現し、いつものように朝のお知らせをする。ただ今日は一つだけ、いつもとは少し違うお知らせをしていた。


「さて、部活動についてですが、体験入部の終わりが近づいてきました。以前説明した通り、騎士養成学校では皆さん何かしらの部活動に参加し、心技体を勉学以外でも鍛えていくという方針となっているので、必ず部活動には入ってください。入部希望もなにもない生徒がいたら、こちらが提案する部活に入ってもらうことになります。先生としては、それは避けたいので、ぜひとも皆さんの意志で部活動を選んでください」


 そういえば、部活をどうするか全く考えていなかったと気付く。その言葉を終えて先生は時空間魔法で一瞬にして消えていき、その途端に教室は賑やかになってくる。私は腕を組み、部活動について考えようとした時、エルヴィラが私に話しかけて来た。それが、私の今後を左右する、大いなる言葉になったのだった。


「ねね、マリア! もし部活動なにも決めてなかったらさ。あたしたちみんなで、天文学部、復活させない?」


 その提案は、空を愛する私にとっての、最高の言葉となった。

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