第47話 頑強な心の中
私の自然の風を用いて発動した大魔法の槍、アーネストが発動した地属性の大槍、その2つの切っ先が衝突し、激しい衝撃波が周囲に広がる。しかし、その衝突はすぐに決着がついた。私の大魔法の槍が、彼の地属性の大槍を切っ先から破壊し、爆風と共に彼に突っ込んだ。
「……」
「……」
煙が立ち込める中、私は真っすぐと、馬乗りになっている彼を見下ろする。私の大魔法の槍は、彼の体を避け、顔の真横に突き立てたのだ。風の刃で頬や肩に切り傷はあるが、なんとか制御して浅い傷にとどまっている。
「なんで、体に突き立てなかった?」
「そりゃ、君を殺すために戦ったわけじゃないからね」
私はそう言い、彼の首にかかっているカギを取った。私は続ける。
「それに、多分だけど、君は、こうなってほしかったって、願ってたんじゃない?」
「……」
「屋敷で話していた内容も、どことなく止めてほしそうに感じたし、何より、今回私をここに導いた手紙。あれは君が止めてほしいがために書いたものだと思ってるんだ」
「……僕は、姉さんの幸せを、願いたかった。でも、自分の一族としての誇りと伝統も、守らないとだめだった。どっちを取るかなんて、自分には決められなかったんだ」
「そっか。確かに考えてみると、君の立場だとどっちの選択を取るか、悩んじゃうよね。でも、君がオリヴィンに対して色々と思うところがあるのは、それだけじゃないと思うんだ。君は、嫉妬してたんじゃない?大好きな姉さんを取られてしまうことにね」
彼はこの問いには何も答えない。ただ、視線をそらし、彼の目は少し涙が溜まり始めていた。恐らく、それが彼なりの回答なのだろう。私は立ち上がり、鍵を手に持つ。周囲を見渡しながら歩くと、中央の床から地属性の牢獄が、音を立てて上がってきた。その中には、人一人が入れる程度の卵型の氷が入っていた。私はカギを使って地属性の檻を開け、その氷の卵に声をかける。
「エルヴィラ、もう安心して良いよ。助けに来た」
声に反応して氷は解け、中からエルヴィラが飛び出してきた。私に抱きついてきて、勢いで私は尻餅をつく。強く、強く抱きしめるその腕は、強く震えていた。私はただ静かに、彼女を抱き返したのだった。