第45話 伝統だけが強さじゃない
私の体を覆ってしまうほどの大きな岩が彼の発動した大魔法の魔方陣からいくつか出現し、それは私の方に飛来する。私は風魔法を使って走り出し、飛来する岩を回避する。しかし、着弾による衝撃波と飛び散る岩片の弾丸が四方八方に散らばり、その細かな弾の雨に私は巻き込まれる。まだ同時に他の属性魔法を発動できるほどの制御が得意ではなく、風魔法で防ぐしかなかったが、そのあまりにも早く、細かな攻撃に、すべてを弾くことが出来ず、私は両腕を交差させて顔を守り、破片の餌食となった。強い衝撃を全身に受け、私は溜まらず吹き飛ばされ、地面を転がる。余りある地属性の弾丸は壁や窓を襲い、窓に穴をあける。
「ま、しょせんはこの程度だろうな。これが古代文明から続く血の力なんだよ。ストヤノフ一族は、この伝統を壊そうとしてるんだ。分かったかよ」
アーネストは倒れている私に向け、言葉を放つ。痛みに耐えながら彼の顔を見ると、言葉とは裏腹に、悲しそうな顔をしていた。
私は痛みを耐えながらゆっくりと立ち上がり、息を吐く。
「正直さ。私ってそういう伝統とか、規則とか、全く興味ないんだよね。だから、君の言う偉大なる規則って言うのも、正直どうでも良い。私はとにかく、エルヴィラを助け出すってことに、重きを置いてるから。それに……」
「なんだ、何か隠し玉でも持っているのかよ」
「受け継がれる血だけが、強さじゃない。想いの強さが、魔法を強くするんだよ」
私は水属性の小魔法を準備し、同時に大いなる力に言葉を与える。私のしようとしていることに気づいた彼はすぐに魔法を発動して止めようとするが、私の準備した水属性小魔法で牽制する。
ここから、彼を撃退するための戦術を、開始した。
「『宙へ舞う勇気の翼、信じる道を空へ示さん。デアリングライズ・グリフォン』」