第42話 力の差
私の放った風の弾とアーネストの放った地魔法の弾が正面から衝突し、お互いを相殺して弾ける。弾けた風が私の髪を撫で、砕けた小石は四方八方に散る。
少しの沈黙の後、アーネストは地魔法を連続的に放ってきた。地を這う岩の蛇にシンプルな岩の弾。彼は移動しながら小魔法による攻撃を始めた。私は走りながら回避をしつつ、風の小魔法で単純な弾を作り、それを連続的に撃ち出した。しかし、その風の弾は、彼の地魔法による防御で無残にもかき消された。
(やっぱり、まだ遠距離は力が弱い……。となれば……)
私は左手で風の小魔法による飛来攻撃を制御し、右手で風の小魔法で槍を作り出す。その風の槍を構えながら、彼に接近するために駆けだした。地面から襲い掛かる岩で出来た蛇の牙が襲い掛かるが、それをなんとか強引に風魔法を使って体を押して回避した。何度かの猛攻を避け、こちらの攻撃が届く範囲まで近づき、私は右手にある風の槍を彼めがけ突き刺そうとした。
その攻撃は、全く効果を見せることなく消えていく。岩を纏った彼の両腕に阻まれ、その岩を破壊することもなく、私の風魔法だけが消えていく。私はすぐに離れようとしたが、すぐに彼の後方から放たれた岩の拳が私の腹部めがけ飛び、私は即座に水魔法で小さい盾を作り、衝撃を軽減しながらも直撃して後方へと後ずさる。すぐに地魔法の攻撃が来たため、私は水魔法の小さい盾で防ぐことに集中し、真正面から彼の攻撃を防ぎ始めた。
「もどかしいよな」
「……何が?」
「魔法の扱いが、小学生の時よりも難しいだろ。小学生の時は近接魔法だったら何となくでやれただろうが、今はもう中学生だ。体の成長と一緒に溢れる魔力を、制御しきれなくて、むしろ魔法の扱いが下手になる時期さ。遠距離、中距離、近距離全て、訓練しないかぎり、その変化に戸惑う。声変わりと似てるのさ」
「何が、言いたいのかな??」
「僕は小学生から姉さまと一緒に訓練してきた。だから、制御の技術は少なくともお前よりは上だし、得意な魔法距離も理解している。そんな相手に、お前は挑んでるってことだよ」
アーネストは小魔法の攻撃の合間に、中魔法規模の地魔法を発動し、小魔法の一回りも二回りも大きい岩の拳を撃ち出し、私は小魔法の往来で身動きが出来ず、水魔法の盾でその攻撃を受けた。水の盾はいとも簡単に弾け、私は両腕で咄嗟に防御し、後方へと弾かれて地面に転がった。腕をはじめとした全身に痛みが走り、痛みで歯を食いしばる。
「これが純潔と凡人の差だ。純潔一族は強くなくてはならない。強い血筋を未来永劫続けるため、選ばれた一族同士で血を続けていく。それが、今に続く伝統なんだよ」
彼の強い言葉と共に、地属性の中魔法で発動された狼が、私の方へと牙を向けながら走ってきたのだった。