第41話 答え合わせ 2
「誘拐未遂が起きた時に、そのローブを見かけた。その時は何も考えてなかったけど、この屋敷で君と話した時、同じローブがあるのに気づいた。まあ、これだけならただの偶然なんじゃないかって思ったけど、君の話している内容からしたら、エルヴィラを誘拐してストヤノフ一族の活動を辞めさせようとすることも、あり得るなって思った。それで今回の一件を見ると、君が何か動いているんじゃないかって、勘付いたんだ」
私は自分の考えを言う。私は続ける。
「エルヴィラが会いに来て、誘拐のチャンスだと思った君は、この屋敷に連れてきて彼女と話した。どんな内容かは分からないけど、最終的に戦闘に発展して、君が勝った。そして負けた彼女を、この屋敷のどこかに閉じ込めた。少なくとも私はこの状況をそう見てる。どうかな。間違ってるかな」
アーネストは大きくため息をつき、そして話し始める。
「まあ、そんなところだな。そこまで思慮深くないと思っていたが、意外に物事を考える頭はあるんだな」
「直感で生きてるだけだよ」
「そうかよ。なるほどな。それで答え合わせってことか。――教えてやる」
アーネストはローブのポケットに手を入れ、何かを取り出し、それを首にかける。見ると、岩で出来た鍵がそこにあった。
「僕は昨日、エルヴィラと戦った。あいつもやっぱり生まれは純潔だ。相当強かった。だが、僕が勝った。今は地魔法で作った牢屋に入っているさ。そのカギがこれだ」
「大人しく渡して、とはならないよね」
「当然だろ。僕はこのまま、ストヤノフ一族に対して脅迫を続けて、活動辞めさせる。それで、オリヴィンと姉さまを別れさせるのさ」
「ふうん。まあ何をしようとするかなんて君の自由だけどさ。お姉さんは、その結末で幸せになれると思う? 愛する人と結ばれず、脅迫されて会えなくなることが、幸せなのかな?」
「……そうだとも。少なくとも、偉大なる規則は絶対的な伝統だ。それに従っていけば、純潔一族としての誇りと幸せは保証されるんだ。あんな男よりも、姉さまを幸せに出来る人はもっといるんだ!」
声を荒げるアーネスト。彼の感情に呼応してか、地面は大きく揺れる。私は、気持ちを整えて、彼に話しかける。
「君の気持ちはよく分かったよ。君なりの強い目的があっての行動だってこともね。それなら私も純粋に自分の気持ちに従う」
「……ああ、そうだな」
「ほら、前に私が言ったこと、覚えてるかな。私はエルヴィラの友達だけど、でもだからと言って、まだ何もしてないのにアーネストと敵対することはないからさって」
「良く覚えてるさ」
「それなら、私はエルヴィラを助けるために、そのカギを奪うよ。たとえ君に抵抗されてもね」
「……」
アーネストは玉座から立ち上がる。歪な岩の玉座は崩壊し、砂になる。私は風の小魔法を準備する。そして、私とアーネスト、お互いが風と地の魔法弾を相手に撃ち出して、戦闘の合図となった。
お互いが抱える想いをぶつけ合う、子供の喧嘩を始めたのだった。