第40話 答え合わせ 1
アーネストは岩の玉座に肘をつき、話し始める。
「答え合わせ。具体的にはいつの何を答え合わせするんだ?」
「ひとまずは、エルヴィラの事かな。知ってる? 今ね、エルヴィラは行方不明ってことで内密に捜索されてるんだ。でも、多分私の感覚を信じるのなら、エルヴィラはここに来てる。この屋敷にあるこの氷の残骸は、彼女のものでしょ? 昨日の夜、エルヴィラは君に会いに来たんだ」
「なんでそう言えるんだ?」
「昨日の放課後、私は彼女と話したから分かるよ。そして、その前に君とも話してたから、お互いが何を想っていたか、想像が出来るんだ」
私は一呼吸おいて、自分の考えを話す。
「アーネスト。君は、お姉さんを守るために、ストヤノフ一族の活動、特に自由恋愛を謳うオリヴィンの活動を止めたかったんだよね。諦めさせたかったんだ。詳しくはまだ知らないけど、二人は永遠に結ばれてはいけない一族同士だから。そして、偉大なる規則を破った人に訪れる死を、回避したかった」
アーネストは黙ったまま私を見る。私は、続ける。
「でも逆に、エルヴィラは兄オリヴィンのことを応援したかった。一族として革命を掲げているけれど、それだけじゃなくて、一人の妹として、兄の幸せを、社会に認められた形で成し遂げたいと思っていた」
「ふん、そうかよ。大層な想いだな。それで、それが何を意味するんだ?」
「魔物の群れが襲来したあの日、エルヴィラは君と一緒に行動した時間があったでしょ? これは本当に直感というか、予測なんだけど、その時にエルヴィラはあなたが自身の姉に対する強い気持ちを持っていることに気づいた。それこそ、どんな手を使ってでも、自由恋愛を防ごうとするっていう確信を持てるほどの想いを知った。エルヴィラの事だから、そういう時は、直接話を聞きに行くだろうなって思った。あの子は、そういう子だからさ。それで、君は会いに来た彼女を、私にしたように、この場所に連れてきて、話したんでしょう? なんか察して欲しそうな言葉を使ってさ」
私の言葉に、アーネストは反応を示す。私は、ある一つの確認事項を、彼に突きつけた。
「私もあなたと話して、そしてそのローブを見て色々と察したよ。一番最初、エルヴィラの誘拐未遂事件を仕掛けた黒幕は、アーネスト、君だよね」
アーネストは、ほんの一瞬だけ口角を上げたように見えたが、彼はすぐに真顔になって、私のことを睨みつけたのだった。