第35話 想いと強さと
広く晴れ渡る朝。私はいつものように目を覚まし、伸びをする。窓を開けて朝の風を取り入れ、その風の中、朝の支度を淡々と進める。部屋の様子を見るに、恐らく両親は深夜に帰ってきて、私が起きる前に出ていったのだろう。掃除しきれていないパンくずが床に落ちており、洗濯籠に入っている制服も、明らかに増えていた。
私はテーブルに置かれた朝食を見つける。これもいつもの光景、だが、今日は一緒に本が置かれており、あるページにしおりが挟まっていた。私はパンを嚙みちぎりながら、そのページを見る。すると、そこのは母の筆跡の手紙も挟まっていた。
『おはよう、アルマリア。とても遅くなったけれど、この本はあなたの中学入学祝いです。他にもたくさんのお祝いを用意しているけれど、今の状況的に一番先にあげたいのがこれだったの。この本は、お父さんのお父さん、あなたから見たら、父方の祖父が持っていたもので、あなたが今後必須となることが書いてるの。お父さんの気持ちとしては、しおりを挟んだページを先に読んでほしいみたいだから、このページを読んであげてね。私たちもあなたが起きている時間に帰れるように頑張るから。それじゃあ、学校、楽しんでね」
窓から流れるそよ風が少し暖かく感じ、私は手紙を閉じる。そして本を見る。そのページは、私の知らない大魔法が書いてる本で、その大魔法を表す魔方陣と、畏敬の言葉である詠唱文が書いてあった。
(今の状況で一番必要なもの、ね。確かに必要になるかも)
私はパンを食べ進め、ほんのり優しい風に頭を撫でられながら、そのページに乗っている大魔法を読み進めた。