第31話 心赴くままに
魔物の群れの襲来から数日。私たちはやっと何気ない日常を過ごすことが出来た。思えば、入学式の日から何かと誰かに絡まれ、大人の暴力にあい、魔物の凶悪性に触れた。なんとも激動な期間だっただろうと、私は午後の教室の窓から見える流れ雲を眺めながら思案する。今までの出来事についていろいろと考察していると、授業終了のチャイムに気づき、その日の最後の授業が終わり告げたことに気づいた。
放課後になると、今の一年たちは部活の体験入部で駆け回る時期だ。このクラスのお偉い純潔たちとその取り巻きの一家の子たち以外は、授業が終わるや否や荷物をまとめ、それぞれが気になる部活に向かう。それは、私の友人たちも例外ではなかった。
「さて、俺も体験入部してくるか。エルヴィラ達はどうするんだ?」
「うーん、私もちょっと気になってる部活があるから、回ってこようかな~」
「ふっふん! あたしとオズは気になる部活を一緒に回る予定! だからもう行かなきゃね!」
「ええ、そういうことなので、今日からしばらくは放課後遊ぶのは難しいかもですね。部活終わりにタイミングが合えば一緒に帰るってことにしましょうか。アルマリアは体験入部は考えてるんです?」
「うーん、正直興味がある部活はなくてさ。だから、私は体験入部はしない、かな。気にせずに皆行ってきなよ。心の赴くままに回るからさ」
私は気を遣われないように笑顔でそう言う。皆は少し心配そうな顔をしていたが、私の気持ちを理解してくれ、「また明日」と言い合って、それぞれの向かいたい部活へと向かって行った。私は皆の背中を見送り、ゆっくりと帰り支度を済まして、そして風魔法を纏い、窓から外に出て屋上まで飛ぶ。
背の大きな柵の上まで飛び、着地、そこから屋上の床へと降り立った。この屋上に来ることが、みんなと一緒に帰らない日の日課になりつつあることに気づき、少しだけこの屋上が特別な場所に感じ始めた。
「なんだ、お前も体験入部をサボりに来たのか」
しかし、今日は先客がいたようだ。そこには、純潔を誇りに思う少年、アーネストがベンチに座り、私の方を見ていたのだった。