第23話 それぞれの事情 2
「おはよ、マリア! オズマンドと2人で何話してたの??」
「おはよう、エルヴィラ。ま、当たり障りのない世間話ってことにしといて」
「ふーん、そっかそっか! そういうことにしとくね!」
「おいおいエルヴィラ。アルマリアはそんな恋に積極的な奴じゃないの知ってるだろ? ……だよな?」
「うーん。どうだろ。一応私も女の子? だからね」
オズマンドとの話しを終え、私たちは教室に戻る。教室にはエルヴィラとジークが、二やニア顔と神妙な顔それぞれ浮かべ、私たちを待っていた。
「大丈夫ですよ。二人が想像しているような話しはないんですから」
「……俺は、特に気にしてないが? 別に、全然気にしてないんだが?」
あからさまに気にしていないアピールをするジークは、予鈴がなった音を聞いてすぐに自分の机に戻って行く。オズマンドも机に戻り、私も自分の机に座った。結局、メーヴィスはその日の授業は一日も参加せず、次の日は学校を休んだ。
そうして、メーヴィスの一件から2日後、午前中の授業が終わってお昼時間となり、私はいつものように購買へとごはんを買いに行く。その道中、私は呼び止められた。
「アルマリア」
「……メーヴィス」
「その、ごはんを買ったらさ、一緒に食べない? 屋上でさ。空でも眺めながら」
「……うん、そうしよう。ちょっと待ってて」
メーヴィスの表情はまだ暗い。声の調子も暗く、弱弱しかった。私はすぐに人混みをすり抜け、売店でごはんを買い、メーヴィスの傍に立つ。メーヴィスは重力魔法を使い、私たちを屋上へと上昇させ、ゆっくりと屋上の床へと降り立った。私たちはベンチに座り、お互いのごはんを口に運ぶ。少しの間は口を開かずにごはんを食べ続け、そして食べ終わったころに、メーヴィスは口を開いた。
「オズから聞いたよ。――でもね、やっぱり、ちゃんとした方が良いって、思うんだ。だから、言わせてほしい。あの時は、本当にごめん!」
メーヴィスは声を震わせながら、謝罪の言葉を私に投げかけた。私はメーヴィスの気持ちを汲み取り、その謝罪を受け入れる。
「うん、大丈夫、私は気にしてないからさ」
「……ごめん」
メーヴィスの声はどんどん消えていく。少しした沈黙の後、ほんの少しだけ彼女は口を開いた。
「本当はね。色々とアルマリアに言いたいんだ。でも、思い出そうとするだけで、誰かに話そうとするだけで、息が詰まるし、苦しくなるんだ。――だから、昨日のあいつらのことは、今はちゃんとは話せない。話したくても、無理なんだ。だから、ちゃんと話せるようになったら、その時に話すよ。祖いう意味も込めて、本当にごめん」
「――分かった。その時になったら、また屋上で聞かせて。別に昨日のことがあってお、私はメーヴィスを仲良くなりたい気持ちは変わらないからさ」
「……ありがと」
メーヴィスは小さくそういった後、大きく伸びをする。
「ああ、暗くなってたらマジで何もかもがつまんなくなるし、もうやめよ! 元気に笑顔で、授業以外のことを楽しもっと!」
メーヴィスは元気な姿に戻り、そんなことを言っていた。今の彼女の笑顔は嘘偽りのない光の笑顔であり、そしてそれを際立たせるのは、彼女の背景にあるくらい過去の影なのだと、私は実感した。
そうして私たちは、屋上を後にして教室へと戻って行ったのだった。