第18話 再会
午後の時間は退屈な授業が続く。ジークやオズマンドは集中して授業を聞いているが、メーヴィスは集中できないのか、教科書を見ているふりをしてその目は健やかに閉じている。私は目を閉じることはないが、窓から見える空を眺めていた。そうして午後の授業は過ぎ去り、気付けば放課後になっていた。
「アルマリア~今日は放課後どうする?」
授業が終わり、メーヴィスが私の机にすぐに集まる。遅れてオズマンドも集まり、最後にジークがやってきた。3人とも、表情は冴えないのは、恐らく同じことを考えているからだろう。
「今日は、一応エルヴィラの家に寄ろうと思ってるんだけど、みんなもどうかな」
「……そうだよね。やっぱりエルヴィラのこと気になるよね。ぶっちゃけあたしもめっちゃ気になって授業集中出来なかったし」
「メーヴィスはただ興味ないだけでしょう。そんな言い訳してもわたしにはわかりますよ」
「うげ、流石オズ! あたしのことよく理解してくれてるじゃん! それは嬉しいけどさ!」
オズマンドとメーヴィスはお互いの顔を見やりながら笑顔でそんなやり取りをしている。傍から見たら二人は良い感じに見える。二人は確か純潔ではないので、純潔のあのルールは適用されないのだろう。その自由さについて、この国とは無関係の国の両親から生まれた私としては、当たり前と思ってしまうが、この国の文化に浸っている人たちからしたら、この自由さは恐らく珍しいんだろう。そんな二人の邪魔をしないように、ジークが端から私に話しかける。
「あんなことあったんだ。流石に俺たちもあるか分からないぞ」
「うん。でも、ほら、意外に会えるんじゃない? 小学部からの友人なんだし」
「アルマリア、たまに直感で物事推し進めようとするな。嫌いじゃないが」
「フィーリングは大事にするんだよ、私はね。これを機に覚えておいて」
私は自分の荷物を整理し、スクールバックを肩にかける。
「それじゃ、行こう」
私は皆に声をかけ、教室を出る。そして、1階の下駄箱まで行った時、ちょうど職員室から出てくる人影が目に入り、私は少し驚いた。そこに居たのは、これから会いに行こうとした、エルヴィラだった。彼女に続き、兄のオリヴィンも出てくる。エルヴィラは私の姿を見るや否や、急にダッシュし、私の胸に頭から突っ込んできた。
「会いたかったよマリア!」
「うん、私も会いたかったよ。今日会いに行こうしてたんだ」
「……ありがとう、マリア」
「もし、良かったらさ、校庭の端にあるベンチで話し、聞かせてほしいな」
「うん、うん!」
エルヴィラが顔を上げる。彼女は心底嬉しそうに私の顔を眺めていた。そうして、遅れてきたジーク達も一緒に、校庭にあるベンチへと向かった。
兄オリヴィンは同行せずに校門で待っていると言い、その兄の姿を、少し複雑そうな悲しい目をしてエルヴィラは見送った。