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第163話 心の道しるべ
教室に戻ると、クラスメイト達が勝利で沸いていた。私の姿を見るや、英雄を讃えるかのように詰め寄ってきた。
すべてが雑音に聞こえ、誰が何を言っているのか耳に入らない。とにかく皆喜んでいるということだけが分かる。私が乗り気じゃないのが分かったのか、あの子の声がみんなを制する。
「はいはい、英雄は疲れてるんだから、ほどほどにしてね!」
エルヴィラの声でクラスメイト達は私から離れ、再び喜びに浸り始めた。
「マリア、大丈夫? 何かあった?」
「……この世界の理不尽さを思い知ったよ。不平等で、不自由。私は、その全てを乗り越える強さが欲しいって、思ったんだ」
「マリア……」
エルヴィラは静かに私を抱きしめる。私も何も言わずに抱き返す。少し離れたところでジーク達がいたが、何かを察してくれていたのか、静かに私のことを見守ってくれていた。
蒼き熱空の歓声はこれで幕を閉じた。そして期末試験を超えれば、ついに始まる夏休み。私たちは、黒き天に燦然と輝く命の光を、知るのだった。
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