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第160話 歓声響く青き熱空

 風が体を支配し、飛びながら駆ける。隣を見ると、フィオレは伸縮性のある木のつるを手から出現させ、地面に向けて打ち出し、地面に出した小さな木に引っ掛け、そこを起点に縮む力を使って前進する。加速が凄まじく、一定距離の差が出来てしまった。追いつくチャンスは、一時的に加速が落ち着く縮み切ったタイミングしかない。私はさらに風属性を体に纏わせ、今できる加速を最大限試す。もはや私とフィオレについてくる他の走者はいない。1位争いは完全に、私とフィオレに一騎打ちとなっていた。


(早すぎる。植物属性でまさかここまでの活かし方を思いつくなんて、流石フィオレ……でも、負けられない……)


 響く歓声、溢れる熱気、激しく鼓動する心臓、息を取り込もうと必死になる肺、さらりと吹き抜ける自然の風。ゴールまで3分の1を切る。このままでは負ける。私が負けた時の条件をフィオレは知らない。彼女のためにも、負けてはいけない。負けられない。


 空を見上げる。快晴に晴れ渡る青き熱空は、私の味方をしてくれるはず。


(大いなる青空、お願い、自分のためじゃない、フィオレのためにも負けられない。だから、力を貸して。私自身が、風になって空を駆けるから)


 リレーも大詰め、フィオレがゴールまで半分を超え、少し遅れて私も半分を超える。その時、突然の突風がフィールドに巻き起こった。その風は巡り巡って私の所へと収束する。私はその自然の強風に抱かれ、そしてその強風は私の背中で翼となる。さらに私の前方にも風が集まり、それは伝説で語られる神獣、グリフォンとなり、風の手綱を私に預けて来た。自身の翼とグリフォンの牽引によって、一気にすさまじい速度へと加速する。フィオレも負けじと足裏に、ばねのようにしなる木の幹を作り出し、さらに加速をしていく。ゴールまで3分の2を超え、私は彼女の背中を捉えた。息も絶え絶え、何も話せない私たちは、無心にゴールを見据えて飛ぶ。

 最後の直線、ほぼ平行線となった私たち。気持ちが強い方が前に出て勝つ。柄にもなく歯を食いしばり、声にならない声を出す。そして、ほぼ同時に私たちはsゴールテープを切った。勢いがありすぎて私たちは自力で止まれず、前方に用意してあった緩衝用の水壁に激突して止まった。それでも激しい最後まで殺せず、倒れ込むようにして地面に転がった。酸欠と水壁に当たった衝撃で、私たちはそのまま少しだけ、意識を空に預けていったのだった。歓声響く青き熱空の下で。

 

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