第159話 最後のバトンリレー
第3走者はエルヴィラ。彼女は進行方向を凍らせ、足裏に氷のブレードを作り、スケートで滑るようにして前に進む。全力で腕を振り、スピードを上げて前に進む。現在の順位は僅差で3位ぐらい。流石に純潔一族には妨害する人はいないようだ。それぞれの天性属性で最も早く走れる方法を模索し、全力で今にぶつかっている。隣を走る女子は炎属性の翼を広げ、飛ぶようにして駆ける。雷属性を纏う男子はステップをしながら雷と共に駆ける。攻撃をしていないが、目に見えないせめぎ合いがそこには存在している。エルヴィラは隣の炎の翼を持つ女子の方に視線を送り、何かを話している。話しを続くほど二人の魔法の規模が苛烈になり、エルヴィラは氷属性のマントを作り、エネルギーの貯蔵先を増やして冷気がより強くなり、炎の翼の女子は翼の数が増える。順位は明らかに炎の翼の女子とエルヴィラの1位争いに変貌し、ついに均衡が崩れた。
「アルマリア」
私を呼び声が隣から聞こえる。1位争いをしているチームは、私と、彼女のチーム。ここまで仕組まれていたものなのかは分からないが、今の状況は決戦の舞台としてはこれ以上ないほどの展開となった。
「私は負けないよ、負けられない理由があるんだ」
「私も同じ気持ちだよ。悪いけど、勝たせてもらうから」
走者たちはいつの間にかバトンリレーの範囲に迫っている。私は練習通りに構え、風属性を纏い、特に足に重点的に纏わせる。バトンリレーの範囲にエルヴィラが入った瞬間、私は駆けだし、助走を付けながらエルヴィラからバトンを受け、一気に加速した。
体育祭の最後の競技、最終ラップが始まった。