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第15話 購買戦争

 午前中の最後の授業が終わる時間。本鈴がなり、お昼の時間となる。私は教科書をしまい、伸びをする。空腹が支配された心を満たすため、私は購買へと向かうことにした。


「アルマリアは購買か?」


 ジークの声掛けが聞こえ、答える。


「うん。今日はね。ジークはまた自分で作ってきたの?」

「まあな。そんな凝ったものじゃないが」

「ほんと、ジークって意外に家庭的だよね。顔に似合わない」

「見た目とかは関係ないだろ。――今日は一人になりたい気分だろ。俺はオズマンドたち2人と勝手に食べてるぞ」

「――ありがと」


 私の表情を見て察したのか、ジークが気を使ってそんなことを言う。確かに、今の私は一人になる時間が欲しいと思っていたところだ。私は彼にぼそりとお礼を言い、購買へと向かった。

 騎士養成学校の購買はそれなりに混雑する。今日も今日とて、弁当を持ってきていない学生たちの賑やかな声が響き渡り、店員のおばさんの気前の良い声が響く。私はいつものサンドイッチを買おうと受付まで行こうとしたとき、見覚えのある人が、人込みに押し出されて私の前に現れた。


「あれ、確か君は、アーネスト?」

「お、お前っ!」


 今日の朝に絡んできた純潔一族、アーネスト・シュプリンガーが、いかにも庶民的なごはんの購買にいるとは、全く予想外な出来事に私は驚いた。


「純潔一族の人でも、庶民的な購買に脚を運ぶなんて、意外だったな」

「う、うるさい! た、ただの観察さ! 庶民どもが買い漁る店だどんなもんか、見てただけさ!」


 そう喚く彼のお腹の方から、長い空腹音が鳴り響くのが聞こえる。その音に気づいた彼は、少し俯き、ぼそりと呟く。


「……弁当の余裕もないから、仕方ないんだ」


 私はそんな彼を見て、普通に買いに来たのだと理解した。そして私は彼の腕を取り、一緒に人混みの中に入る。


「おい、引っ張るな外部から来た人間の癖に!」

「肩書にこだわっててもご飯は買えないよ。買いたいなら積極的に前に行かないと、売り切れちゃうんだからさここは」


 私はどんどんと前に押し入る。そして、なんとか受付の方までたどり着き、私はいつものサンドイッチを手に取る。


「君は何食べる予定?」

「……そこのサンドイッチだ」

「分かった」


 次に私はアーネストが買いたかったサンドイッチを手に取り、一緒に会計を済ませ、ささっとy子にズレて人混みから抜け出した。


「ここの購買でほしいものを買うコツは、決めたらどんどん前に行くこと、だよ。他人の反応待ってるだけじゃ、いくら純潔一族だからって道を開けてくれるわけじゃないからね」

「ふん、嫌な勉強になった。……でも、助かった」


 アーネストはそんな悪態をつきながらも、ぼそりとお礼を言う。私は少し笑顔になり、そして彼が欲しがったサンドイッチを手渡した。

 そして、


「ついでだし、一緒に食べようか」


 そうして、アーネストをお昼に誘ったのだった。

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