第155話 闘志の声
青空は晴れ渡り、熱を持った歓声は空をも熱する。午前の騒動の悲しみを感じさせないほどの熱気は最高潮に達する。プログラムは円滑に進み、それぞれの得点はほぼ横並びになっていた。
「大丈夫か、アルマリア」
ジークが私に話しかける。
「大丈夫だよ。流石に少し緊張はするけど、走るだけだから」
「……この得点状況は、明らかに奴が意図して準備されたものに見えるが」
「分かってる。全部、状況も理解してる。彼は私を試してるんだ。だから、真正面から挑んで打ち勝ってくるよ」
「そこまで分かってるなら、俺は見守っておくことにする。そろそろ準備が必要だろ。行ってこい」
私は頷き、エルヴィラを呼び、一緒に準備場所へと向かう。
「絶対に勝とうね! 私たちならやれる!」
「うん、勝とう。エルヴィラがいてくれると心強いよ」
「嬉しいこと言ってくれるね! 超がんばっちゃうよ!」
準備場所に行くとすでに走者のリンとエルヴァルも集まっていた。しかし、リンは浮かない顔をしていた。
「あ、アルマリアさん、エルヴィラ様……」
「どうしたの、何かトラブル?」
「ううん、トラブルってほどじゃないんだけど、実は……」
彼女は手紙を渡してくる。そこには、彼の名前と、一つの指示が書いてあった。
「なるほどね。まさに彼が見たい展開がこれってことか」
そこには、私をアンカーにすることが書かれていた。純潔からの指示のため、恐らく逆らうことは出来ないのだろう。
「良いよ。頑張るから」
「よろしい! ではアンカー以外の走者も考えるか! もちろん1走は俺で行く!」
「分かりました。エルヴィラ様はどうなさいますか?」
「もう! 私にはそんな畏まらなくて良いって! それなら私は3走にしようかな~。エルヴァルで落とした順位はリンと私で挽回して、アンカーに渡すって感じ!」
「分かりました。では、その順番で行きましょう。各々準備運動をお願いしますね」
そういって、リンは少し離れたところでウォーミングアップを始めた。エルヴァルも私たちの事など気にすることなく、準備運動を始める。エルヴィラと私も準備運動を始めようとした時、フィオレが前に現れた。
「フィオレ……」
「アルマリアもアンカーになったんだよね」
「その反応だと、やっぱりフィオレも……」
「うん、そうだよ。でも、アルマリアと走ることになっても、私は全力で勝たないといけないんだ。だから、負けない」
「私もだよ。お互い、負けられない何かがある。負けないよ」
フィオレは普段の穏やかな表情は一切なく、燃える闘志を秘めた顔で、私を見ていた。私はエルヴィラと一緒にその場を離れ、準備運動に集中する。
決戦の火蓋は、まもなく切られる。