第154話 過熱する歓声
「逆にイヴリンはめっちゃ頑張ったし、それで十分だって!」
「そうですよ。だから、まあ気にしないでください」
イヴリンが2位判定だったことが判明してからは、イヴリンがうつむいたままで席に戻る。彼女にとっては1位を取れる絶好のチャンスだったために、ショックが大きかったようだ。オズマンドとメーヴィスがイヴリンを励まし、ミオが手を握っているが、彼女の表情は悲しく落ちている。
「まああれは明らかに奴の裁量で決められた順位だな。もし明確な順位になっていても、何かしらの理由を付けて順位を落としに来ていただろ」
「ソルベルクがそれをやる目的はいまいち分からないがな。ただの楽しみか、他に目的があるのか、同じ純潔でも全く分からない」
ジークとアーネストはそんな話をしている。しかし、私には何となく分かる。彼は演出したいのだろう。私が最終競技の選抜リレーで、全力を出さないといけない状況を。
クラスの総合得点はイヴリンが2位だったために拮抗している。残されてる数少ない競技も、恐らくは点数調整のために順位を調整されるだろう。それで、体育祭の順位としても、奴から言われた試練も勝たないといけない状況に持ち込みたいのだろう。先ほど私に向けて来たあの冷酷な笑顔はそれを意味していると、私は感じている。私は顔には出さないが、心臓の鼓動が嫌に響く心境だった。
「アルマリア……」
ふと私を呼ぶ声が聞こえる。見ると、フィオレがいた。私は彼女の傍に移動する。
「お疲れ、フィオレ。さっきはアドバイスありがとね」
「ううん、お礼を言われることじゃないよ。その、気付いたかもしれないけど、ソルベルク様は、点数を意図的に操作し始めてるんだ。多分、選抜リレーを盛り上げるために」
「やっぱそうだよね。ほんと、悪趣味な奴だと思う。まあでも、私は負ける気はないよ、フィオレ」
彼女のためにも、負けるわけにはいかない。
「それは、私も同じだよ、アルマリア」
彼女も同じ想いだ。
盛り上がりを見せる熱の歓声は、フィナーレに向けてボルテージを上げていく。着実に最終競技へとプログラムは進行していった。