第150話 環境と相性と勢い
次の障害は避けるタイプのものだ。通路の中心に設置された回転する木の棒をジャンプしたりしゃがんで避けるものだ。地面だったり少し高さを出して設置されているものがいくつかあり、すでに何人かは中間あたりまで進んでいる。そんな走者にも外部からの魔法攻撃は容赦なく襲っていた。そのうちに一人はまさに今、足を狙われてバランスを崩し、木の棒に打たれて気絶してしまった。すぐさま専属の委員の学生と教師が回収に向かい、まだ生き残っている走者に魔法攻撃という障害が降り注ぐ。
「メーヴィス。魔法攻撃の方は私が全部なんとかするから、目の前の障害に集中して大丈夫だよ」
「分かった! 多分ここはあたしの重力魔法が光るね!」
そう言うと、メーヴィスは重力属性魔法を準備しつつ駆け出した。最初は下方の回転棒だが、彼女は自身の体に重力属性魔法を発動させ、ジャンプの飛距離を大きく伸ばし、軽々と飛び越えた。
「あたしだって、ちゃんと鍛えてるんだから! 自分の体くらいだったらこれくらい余裕じゃん!」
メーヴィスはノリに乗っている。そのまま前に進む。次は膝あたりの高さの回転棒だ。ここもメーヴィスはジャンプ力を高めて軽く飛び越える。彼女を狙う炎の球はすべて私の水属性で弾き、邪魔をさせないように集中する。
彼女はどんどんと進んでいく。次はお腹辺りの高さのものだ。また飛び越えるのかと思ったが、今度はスライディングを始めた。彼女の体は地面には接地せず、ギリギリのところを浮遊し、スルっと下から通り抜ける。魔法の相性が悪く苦戦している走者たちは彼女のパフォーマンスに驚き、悔しさをにじませていた。
次で最後の回転棒となる。最後は胸辺りと足首あたりの2か所の回転棒が設置されていた。そこで止まっている走者も何人かいる。ここを抜ければ一気に順位は上位になるだろう。
彼女に向かって撃ち出される何発もの炎属性の球を大き目な水属性の盾で防ぎ、私は声を出す。
「そのまま行って。縛りのない自由な属性で」
メーヴィスはどんどんとスピードを上げて勢いを増し、そして頭からダイブする。まさに2か所の回転棒のちょうど中間あたりの位置を維持し、飛び込んだ勢いのまま直線を浮遊し、一気に抜けた。
1回転して地面に着地し、そのまま次の走者であるオズマンドの方へと勢いを止めずに走る。
「オズ! あたしを受け止めて!」
「いや、受け止めるのはバトンである腕輪だけで良いんですよ!」
メーヴィスはオズマンドの腕に飛び込み、バトン代わりの腕輪を手にがっちりと握らせ、背中を押し出した。オズマンドはやれやれと呆れ顔のまま、一位を狙って走り出した。