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第139話 無情な放映

 治療を終えたミオを椅子に座らせ、周囲の状況を確認する。怪我をした人たちと対応に追われる人たちの声がこだまする。見る限りは知り合いに人は他に居なさそうだったが、どこからか私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「アルマリア……?」


 声の主を探して周囲を探すと、そこにはフィオレがこちらを見て歩いてきていた。不安そうな表情を抱え、今にも泣きだしそうだ。


「フィオレ、大丈夫? 怪我してない?」

「うん、私は大丈夫だったよ。アルマリアは大丈夫? 傍にいる子たちも……」

「あ、えっと、うん、わたしは、大丈夫」

「休憩すれば私も大丈夫かな、ありがとう、親切な同級生さん」

「そっか、良かった……その、ジークとかは、大丈夫かな? まだ会えてなくて、もし大変なら行かないと。いつも無茶して怪我するし、自分の体は二の次だし……」

「大丈夫だよ。さっきまで一緒にいたから。怪我もしてない。今はクラスメイト達と人手が必要なところに行ってるかも。でも、フィオレも個々で休もう。その手、今まで色々と頑張ってたって分かるよ」


 フィオレは照れくさそうに手をさすり、椅子に座る。誰にでも優しいフィオレは万人を救おうとする。まさに騎士にふさわしい人だと、私は思っている。


「でも、こんなことになっちゃって、もう体育祭は無理だよね……」

「こんなことになっててやるなんて、普通は考えられないって。ね、ミオ」

「……いや、もしかしたら、ありえないことがあり得る国だし、まさかの展開はあり得るよ。ほら」


 ミオが視線を送った先には、水属性魔法で投影されたソルベルクの姿があった。彼の声も水面を通して聞こえる。


「みなさん、まさかの事態に驚き、傷ついたかと思います。僕も、この事態に心を痛めています。しかし、だからこそ、人の心を燃やし、癒すスポーツの祭典が必要だと思っています。これは祖父であり、街政の教育部部長、クラウス氏の強い希望でもあります。なので、約2時間後、体育祭を再開しようと思います。怪我をした人の出場はもちろん判断に任せますが、ぜひとも参加し、楽しみましょう。僕も参加して盛り上げます。ではみなさん、後ほど再び、お会いしましょう」


 一方的な決定を吐き出し、ソルベルクは姿を消した。ミオとイヴリンは小さく頷くしか出来ず、私とフィオレは、大きく深呼吸をしたのだった。

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