第138話 癒しの笑顔
輩が気絶したことにより、魔具の効力が切れ、魔物の群れは消え、私は皆と合流して、イヴリンと一緒にミオを学校の医務室へと連れていく。他のみんなは人手が必要なところを探しに行った。
医務室は魔物の攻撃により負傷した人たちが多くいた。すでに街の医療機関の医療従事者たちも応援に駆け付け、対処に当たっている。私とミオは空いてる椅子に腰かけた。
「ミオ……大丈夫? かなり辛そうだけど……」
「ちょっと、頑張りすぎたかな。頭がぼうっとするよ。でも、死ぬほどじゃないから大丈夫、イヴ、心配ありがと」
「ごめん、私が無理させたよね……」
「ううん、わたしが勝手に頑張っただけ。アルマリアは関係ないよ。まあ、また近々入院することになると思うけどね」
ミオは儚く笑顔を見せる。私はその笑顔に心が締め付けられた。
「その魔眼の力って、相当負担がかかるものだったんだね」
「うーん、負担は人に寄るんだよね。私は元々体が弱くて耐えきれないだけだしさ。……あ」
ミオは何かに反応する。見ると、同じ1年の別クラスの子が地面に座り、足を撫でていた。ミオはゆっくりとその子に近づく。私も一緒に傍に着く。
「足、痛めたの?」
「え、う、うん。逃げてるときに転んで……今もすごく痛むんだ……」
「ちょっと見せて」
ミオはその子の脚を見る。明らかに腫れている部分があったが、彼女は再び魔眼を発動した。悪魔の紋章が瞳に浮かび上がり、不気味に光る。同じ光がその子の脚の腫れた部分にも伝播し、腫れがぐんぐんと引いていった。
「あ、ありがとう!」
「多分、大丈夫だよ」
その子は立ち上がり、怪我などしていなかったかのように軽い足取りで出ていった。
「悪魔の能力って言ってもね。色んなものがあるんだ。私の魔眼はね、相手を病的に中から苦しめる力と、癒す力が両立してるんだよ」
彼女は笑顔を咲かせて、そう言ったのだった。