第131話 熱を帯びた歓声に押されて
午前の部は主に魔法を使わないクラス競技がメインとなる。普通の徒競走に玉入れ、大縄飛び、クラス全員リレーなど、魔法のない見栄えのしない競技が集まっている。クラス競技なので基本的に私も出ないといけないのが辛い所だ。
その中でも盛り上がったのは借り物競争だった。走る人をクラスごとにランダムで体育祭委員がくじで決め、お題にあったクラスメイトと一緒に走るというもの。1年にとっては親睦を深められると言うことで人気なのだとか。
「それでね! そのお題には……」
「どうせ、好きな人だとか、恋愛系のお題もあって盛り上がるってことでしょ」
「むー、なんで先に言っちゃうの!」
「ま、毎年男女が走ると、歓声が響くみたい、だね」
「ふーん。病室だと見れない楽しい光景が見れそうで良かった。でもイヴリンが走るとなっても、私は走れないからね。でも男とも入ってほしくないんだけど」
私たちも例のごとく、その話題で盛り上がる。誰でも恋愛系の話しは興味があるのだ。私もないと言ったら嘘になる。あまり熱を持てないだけだ。
そんな話をしている中、気になる人物の名前が次の走者として呼ばれる。
「ジーク、頑張ってくださいね」
「ああ、オズマンド。それなりにやってくる」
ジークは軽い足取りでスタート位置に着く。競技開始の合図とともに走り出し、おかれたお題を見る。一目見た瞬間、私の方に走ってきた。
「アルマリア、行くぞ」
「え、私? ちょ、ちょっと」
ジークは素早く、丁寧に私の手を握り、強めに引く。私もその力に抗うことなく流れに乗り、一緒に走った。周囲は黄色い歓声に包まれ、私たちの背中を押す。なんと、私たちが一位でゴールした。
「一位になったぞ。ありがとな」
「うん、大丈夫。でも、お題ってなんだったの? ジークが私を選ぶなんて」
「……お題は安易に見せちゃダメだって、言われてるんだ。ほら、席に戻るぞ」
彼は少し速足で席に戻る。魔法を使っていないのに、彼はなにやら熱気を発し、頬も仄かに赤みを帯びていたのだった。