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第125話 鳥手紙 2

「元気だよ、おじいちゃん。頑張って中学生やってるよ。おじちゃんは元気?」

『元気で先生やっているよ。中学生になったアルマリアの顔を今度見に行くよ。息子……君の父さんにも会いたいからね。中学生活はもうなれたかな?』

「うん、まあ、なんとなく慣れたよ。入学式から本当にもう色々とありすぎてびっくりしてるけどね。中学からの友達も何人か出来たんだ。今度紹介するよ。エルヴィラとジーク達と一緒にね」

『それは良かった。おじいちゃんは中学の時は全然友達出来なかったから、少なくともそこは似なくて良かった。そうか、エルヴィラ様とジーク君も一緒だったね。ぜひとも友達を紹介しておくれ。勉強の方は大丈夫かな? 一夜漬けのコツとかも教えられるから、遠慮なく鳥手紙を送って来ていいからね』

「一応、勉強は大丈夫かな。赤点とか取らないようにほどほどにやってる。あんまり興味ない科目が多いんだよね。今は試験の前にある体育祭に向けて頑張ってるよ」

『体育祭、そうか。オステンドルフ騎士養成学校は確かその時期だったな。どうかな、楽しいかい?』

「うん、まあ、そうだね。――あの、おじいちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだ。実は私、選抜リレーに出ることになったんだ。それで、ちょっと事情があって、私はトップでバトンを渡す必要が出てるんだよね。だから、絶対に負けられないんだ。魔法を使っていい競技なんだけど、早く走るのにどう魔法を使えばいいかな。ほら、一応、私の属性はあまり口外しないようにって、言われてて、まあ、ちょくちょく使っちゃってるんだけど、だから、ちゃんとした知識とか、分かってくれてる人からアドバイス、もらいたいなって」

『ふむ、なるほど。確かに相談できる相手は同級生にはいないだろうな。手紙と言えどあまり直接的な表現も避けて助言をしよう。アルマリアの天性属性を使って早く走るのにはいくつか活用方法は考えられる。ただまあ、このまま説明しても多分実践ではまだ難しい部分もあるだろうから、簡単なイメージで話をすると、”自然になれ” という表現になるだろう』

「自然になれ……」

『アルマリアは物心ついた時から空が好きだったんだろう? 確かに君がまだ赤ちゃんだった時も、ずっと空を眺めていて、手を伸ばしてたな。風が吹くと声を出し、雨が降ると濡れに行っていた。雷にも怖がらずに外を見ていた。本当に君は空なんだ』

「私は、空そのもの……」

『そう。ほら、空を眺めてイメージしてみて。空に関わるものは、基本的に早いんだよ。雷や振り落ちる雨、風に流れる雲。自分もその一部なんだと、イメージしてみるんだ。というのも、実は、今研究している文献にもいくつかそういう言葉が出てくるんだ。魔法の可能性については過去の人たちも研究していた。その中で、いかに魔法を自分のものとして制御すること、その方法について、ある人物はこう語ってた。”己が持つ天性属性はその人自身が属性の一部であることの証明である。魔法の究極的な姿としては、制御するのではなく、ありのままに、自然になる、ということではないだろうか”。

あくまで一つの過去の研究者の一意見だが、今のアルマリアが一番理解しやすい言葉だと思う。どうだろう、何か見つかったかな』

「……うん、なんとなく、分かったよ。ありがとう、おじいちゃん。私、頑張るよ」

『それは良かった。よし、それじゃあ、体育祭を頑張ったらおじいちゃんからご褒美をあげよう。だから、体育祭が終わったら近いうちに行くよ』

「うん、分かった」

『それじゃあ、そろそろ鳥手紙を終わろうか。じゃあね』


 おじいちゃんが別れの言葉を言い、同時に手紙は鳥の形になって私の肩に止まった。私は立ち上がり、少し回復した体を動かして帰路に着いたのだった。とても心地よい風に心を浮かせながら。

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