第123話 小さな声と大きな笑顔
次の日は天気が崩れ、雨だった。ぼつりぼつりと雨粒が地面や窓、水たまりにあたる音がする。退屈な教科書とのにらめっこを切り抜け、放課後になると、乗り気じゃない純潔以外のクラスメイト達は屋内練習のためにウェアを持って体育館や屋内のいたあるところへと散っていく。
「や、アルマリア」
ゆっくりと机の上にスクールバックを置いて荷物を整理していると、ミオが話しかけて来た。
「ミオ。お疲れ。授業は楽しかった?」
「うん。私にとっては病院以外なら何でも楽しいからね。アルマリアは退屈そう」
「そりゃ、まあ今日の科目はあんまり興味あるものじゃないからね。普通の理科の授業で空についてやるんだったら全然モチベは違うと思うけど。文章の登場人物の心情なんて、読む人によって感じ方違うのに当たりはずれのある問題にするのが間違ってるよ」
「自由で良いね。ま、学校なんてそんなもんじゃない? 正解できる無難なものを考える練習だと私は思ってるよ」
「ミオって、本当に中学生? 何歳か年齢間違ってない?」
「病院で本とか読んでると、なんかこんな感じになっちゃったんだ。自分は全然良いと思ってるから変えるつもりはないんだ」
「いや、変えてほしいわけじゃなくて、むしろ良いなって思う。なんか、すごく良いって、思うんだよね」
「ありがとう、アルマリア。さて、私はイヴリンたちの方を見に行くことにするよ。多分退屈してると思う」
「障害物競争に練習ってあるの?」
「どんな魔法を使えば効率良く動けるかの研究って感じかな。結局、魔法使える競技は魔法の使い方次第だからね。特に、イヴリンの運命属性は、使い方次第では最強になれると思うから、一緒に考えたいんだ」
ミオは小さな声に大きな笑顔を重ねる。薄いピンクの髪を揺らしていう。
「じゃあね、アルマリア。選抜リレー、頑張って」
「うん、じゃあね」
私たちは小さく手を振り、スキップ気味に彼女は教室を出る。そうして、その場は別れたのだった。