第122話 本気の想い
世界が夕焼けに染まっていく。学生たちは自分の家に帰り、一部の大人たちは夜の仕事の時間に赴く。私は自分の家の道から外れ、ある人の家の近くに来ていた。
「ん、なんだ、アルマリアか。一体どうした? 家に来るのは久しぶりだな」
「あ、アルマリア……」
ジークとフィオレは手に買い物袋を持ち、二人で帰ってきていた。
「お疲れ様、二人とも。今日は二人で夜ご飯でも作るの?」
「ああ、そうだ。なにやらフィオレの両親が遅くなるみたいでな。だったら一緒にご飯でもどうだって、俺の親が言ったんだ。な、フィオレ?」
「う、うん、そうだね。いつもごめんね。ジークの家に迷惑をかけて……」
「迷惑じゃないさ。隣の家同士の仲だろ。それで、アルマリアはどうしてここに?」
「ああ、うん。ちょっと、フィオレに伝えたいこと、あってね」
「わ、私? う、うん、なんだろう? なんか、変に緊張しちゃうな」
フィオレはあからさまに焦り、髪の毛をいじる。
「ほら、選抜リレーのことだよ。私もね、負けられない理由が出来たんだ。チームとしてじゃなくて、個人的な順位で、だけどさ。私も、勝ちを狙って全力を出すよ。だからもし、私と走る順番が一緒だったら、その時は、負けないよ」
一瞬の風が吹く。フィオレの前髪が揺れ、その先にある藍っぽい目は、きりっと強い緊張化を持つ。
「私も、負けない。アルマリアには悪いけどね。私の植属性の力を存分に発揮して、勝ちに行くよ」
フィオレの顔に笑みはない。本気の想いを私に話している。私は別れの言葉を伝えてその場を離れたのだった。