第120話 騎馬戦の作戦会議
翌日、いつものように授業を終え、放課後の体育祭練習の時間となる。私は何故かエルヴィラに連れられ、二人の騎馬戦の練習場所へと来ていた。そこには当然アーネストもいる。
「騎馬戦では魔法をどんどん使ってくるから、それを防ぎつつ、こっちも攻撃して相手の紙ボールを落とすか、潰すかをするのがオーソドックスな戦法だね!」
「そうだ。エルヴィラは氷属性が天性なら、相手の脚を動かなくして死角に回り込んで奪うでも良いだろう。どう動くかは騎馬役のやつらに聞かないとな」
「地面凍らせて移動に使うってのはどうかな?? 絶対に素早く移動できるよ!」
「それは絶対に転ぶからやめとけ。怪我するのは上に載ってるお前だからな」
「わたしは別に良いけど、でも騎馬の人たちに怪我させるのはダメだね! それはやめるよ! アーネストはどんな戦術考えてるの?」
「僕は、シンプルに考えてる。地属性で攻撃と防御を両立させるんだ。守りつつ、石の槍を上から降らせて破壊する。後は状況によって臨機応変に考えるさ」
「なんだかんだ言って、そんなに戦術考えてないんだね!」 本当に臨機応変に出来る~?? 不安だな!」
「言ってろ。そっちこそ、自滅だけはするなよ。こっちだって支援にも限度があるからな」
二人は騎馬戦の戦術について話していた。アーネストも意外に競技に対してちゃんと勝つための戦術を考えており、楽しそうに話している。
「楽しそうだね」
「……そう見えるのか。まあ、必死にやらないと行けなくなったからな……おい、エルヴィラ、まだ話してないのか?」
「え、ここで話すんじゃなかった?」
「ここで話すでも良い。てっきりもう話したのかと思っただけだ」
「二人して、どうしたの?」
「アルマリア。君は純潔協会に目を付けられてるのは知ってるだろ。協会はこの体育祭でも、お前を監視しているはずだ。何を仕掛けてくるか分からない。気を付けるんだ」
「う、うん。分かったよ。でも、アーネストも協会側の人間でしょ? そんなこと言っても大丈夫なの?」
「僕の一族は序列的に下になってるからな。良くも悪くも、協会の意志は影響しない。まあそれで一族の方は社会的に不利な状況を強いられてるんだがな。今に始まったことじゃないし、姉のような、相手に優しくする気持ちは、出来る時に実践したいと考えてるんだ。そうしてまた一族の序列が上がるのなら、必要だと思うから」
「アーネストもいろいろと考えていて大変だよね。ありがとう、忠告はちゃんと覚えておくよ」
アーネストは少しだけ口角を上げ、そしてその場から離れ、騎馬戦のチームの方へと向かった。