第115話 体育祭の説明準備⑤ 眠る心に熱帯びて
窓からは夕日が漏れ、空は夜の時間の準備を始めていた。リンは興奮しすぎて肩で息をしていたが、深呼吸をして再び話を始めた。
「さて、最後の競技決めに入ります! 選抜リレー! これはクラスごとに代表者を選抜して競うリレーですね! うんうん、これは絶対に盛り上がること間違いなしですね! これも魔法による補助も許可されてるので、足が遅いとか関係ないよ!!」
「ねえねえ、それは何人選抜するの!?」
「はい、エルヴィラさん! 4人です! 一人1000mを走り抜けます! なので、魔法を使うことが前提ですね!」
エルヴィラの声に続けてクラスメイトたちは盛り上がる。クラスの代表を決めるのだ。そのクラスに所属しているのなら盛り上がるはず。
「私はひとまずリンはメンバーに入った方が良いと思うな! 元々の脚が早いし、炎属性だから応用菊でしょ!」
「え、ええ、そう、ですかね~、みんな、私が走っても大丈夫??」
クラスメイトは肯定的な声を上げ、一人はリンに決まる。
「話を聞いていれば、まさに俺の出る幕って感じだなおい!」
その時、初めてエルヴィラとアーネスト以外の純潔が喋った。
「エルヴァル様! 確かにエルヴァル様も身体能力がお高いですよね!」
「ふん! 俺の水属性の扱い方を庶民どもに見せつけてやるよ!」
2人目はよく知らないうるさい純潔に決まる。
「エルヴィラ! 貴様も参加しろ! 中途半端な評価の一族同士、ここで評価爆上げと行こう!」
「うわ、目つけられた~でも、まあ今のところ立候補する人もいないなら、やっちゃおうかな!」
3人目はエルヴィラ。このまま静かにしていれば、このメンバー決めも終わる。静かに体育祭を通り越すことが出来る。そう、考えていた。しかし、私の心の中に滾る微かな熱が、私の腕を上げた。
「アルマリアさん?」
「その、もし他に立候補する人いないなら、最後のメンバーは私が、やりたい、かな」
静かになるクラス。しかし、その静寂は長く続かなかった。
「やろう! マリア!」
エルヴィラの声を合図に、クラスメイト達は盛り上がりの声を上げる。今まで話したこともない子たちも、笑顔で私の立候補を肯定してくれる。こうして、4人目のメンバーは私に決まった。
こうしてメンバー決めは終わりを告げ、体育祭のその日まで、クラス全体の種目の練習、個別種目の練習や打ち合わせが定期的に始まるのだった。
窓から照らす空は、熱い心を照らしているようだった。