第107話 一定の不自由
自然発生した強風は巨大な鳥へと形を変え、私たちを包み込む。そしてこちらに飛んでくるグラノルスの大魔法を両翼で弾き消した。衝撃で舞い上がる風は私たちを優しくなでて、そしてまた自然へと還って行く。
「やっぱり、君は……」
アーネストの呟きを私は無視し、グラノルスを見据える。彼はつまらなそうな顔で私を見ていた。しかし、その瞳には涙が輝いていた。なぜそのような表情をしているのか、私には全く理解できない。そうこうしているうちに、グラノルスの隣から時空間属性魔法の魔方陣が出現し、誰かが出現した。その人はエルディン先生と時空間属性魔法で牽制合戦をしていた人物だった。
「おい、お前、いや、アルマリア」
グラノルスは私の名を呼ぶ。
「自由はこの国じゃ最も曖昧な存在だ。誰もが誰かの下について、一定の不自由と引き換えに生きてる。お前がそれに抗い、純潔協会のもとに来ないのなら、それ相応の生活が待ってるぞ」
「そうなのかな? それなら私は学校卒業してこの国をを出ようかな。元々旅人になるつもりだったし」
「っ! マジで反論してくんなようぜってえな!」
「グラノルス。もう諦めなよ。いくら純潔一族で協会からの指示だったとしても、これはやりすぎだぞ」
「格下のシュプリンガー一族に助言される筋合いはねえよ。今回はお前たちの防衛勝ちってことにしてやる。次はマジで殺すつもりでやるからな」
そんな捨て台詞を吐き捨て、グラノルスは時空間属性魔法と共に消えていった。その場に久しぶりの静寂が訪れたのだった。