第100話 空駆ける自由の翼は支配の炎に燃ゆる
「大丈夫? マリア! もう安心してよ! ジークとアーネストが前に居ればこっちまで来れないからさ!」
「う、うん。大丈夫だよエルヴィラ。だから、ちょっと強く抱きしめないで……」
エルヴィラは私を強く抱きしめ、彼女の体温が私を包み込む。私は彼女を安心させるように腕を撫で、彼女の腕から離れた。
「おいジーク・オールディントン。僕の脚を引っ張るなよ」
「それはこっちのセリフだが? 純潔だからって実力も見下せると思ったら大間違いだぞ」
「ふん。言ってろ。それで、グラノルス。お前、やらかしたな。焦りすぎてこんな凶行に走るなんてな。いくら純潔で何しても許されるからって、こんなことして付いてくる人たちは離れてくぞ」
「うるせえ格下一族のアーネスト。俺みたいなランクが真ん中の一族はな。色々と大変なんだよ。この苦労も経験してねえ雑魚が偉そうに口出しすんじゃねえ。おい教師。離せよ。てめえも社会で生きられないようにしてやろうか」
「……いくらシルウェリウス一族様と言えど、これは看過できません。それに、私が防御魔法を発動していなければ、シュプリンガー一族様の槍が突き刺さっていましたよ」
「……はあ」
グラノルスは大きなため息を吐く。そして誰かに話しかけるように言葉を出す。
「やっぱりあんたの力を貸してもらおうか」
その言葉が終わった瞬間、グラノルスの隣に瞬時に魔方陣が一瞬出現し、そこから男性が出て来た。その人はすぐにグラノルスを抑えていたエルディン先生の肩を掴み、再び一瞬にして魔方陣に包まれ、その場から一緒に消える。
「そんじゃ、暴れてやるか。おいアーネスト。格の違い、見せてやる。その他大勢の雑魚もまとめて焼き尽くしてやる。そんで、アルマリア。お前を屈服させてやる。圧倒的な力でな」
グラノルスは力強い言葉を吐き、炎属性に包まれ、背中から大きな炎の羽が一対出現した。燃える羽根が舞い、辺りは一気に熱くなった。
「アルマリア」
私はアーネストから呼ばれる。彼の声は、今まで以上に深刻そうな声色だった。
「自由の空を愛するなら、今は足掻くしかないぞ」
私は三角帽子をかぶり直し、相手に集中を始めた。