第99話 発表会③ 刹那の攻防
世界がゆっくり動いているように見えた。クラスの人たちは立ち上がって炎属性の大鳥から距離を取ろうとパニックになっている。エルヴィラ達は私に何かを叫びながら、私の方に駆けだそうとしていた。
私は多分、無意識に防衛反応としての魔法を発動してしまう。世界に強風が吹き、人々の髪の毛や草花を巻き上げる。炎属性の大鳥もその強風に炎が揺らめき、体が削られている。私は次の瞬間には、その強風を利用して風の砲弾を2つ作り出し、気付いたときには撃ち出していた。撃ち出した反動で私は後方に姿勢を崩す。
人の頭を余裕で包んでしまえるほどの風の砲弾2発は凄まじいうねりをあげ、炎属性の大鳥へと向かい、そして頭と胴体を捉えた。捉えた瞬間、炸裂して炎属性の大鳥を完全に消し飛ばした。炸裂した余波は周囲の人たちを襲い、その風で転ぶ人も見えた。
「アルマリア! 来るぞ!」
アーネストの叫び声が示す意味はすぐに理解した。炎属性の大鳥が出現した方から、すぐに純潔のグラノルスが炎の翼でこちらに飛び、炎属性の鳥を掲げながら飛んできていた。その表情は、どこか焦っているような、戦闘を仕掛けてくるにしては不安そうな顔をしている。
私はバランスを崩しながらも水属性で身を守ろうとシンプルな水属性防御魔法を展開しようとした。しかし、明らかに間に合いそうにない。私は覚悟を決めて目を閉じる。
私の体は炎に包まれることはなかった。人肌の温かさと、氷の傍にいるような冷気を感じた。見ると、私はエルヴィラに強く抱かれ、彼女の氷属性の防御魔法の透明度の非常に高い氷の壁で守られていた。その向こうには、地属性の槍を押し出しているアーネストと、炎属性の獅子の拳を突きつけたジークがいた。彼らの向ける視線には、誰かに後方から抑えられたグラノルスがいたのだった。