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【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと  作者: 淡麗 マナ
最終章 最期にわたくしがしたいこと

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99話 最終決戦

「ああ、土下座すれば、なんでも許される。悪しき風習よの。妾がその風習と、照覧の魔女を終わらせよう。安心して死ぬがよい」

 悪役そのもののセリフを吐きながら、マデリンは途中で寝た。そして、なつかしの鼻提灯をふくらませた。



「……今日はいつも以上に眠そうではないですか。よかったら、ぐっすり寝て、勝負を100年後に持ち越ししませんか?」

「おお、おおお、すまなんだ。気を抜いて申し訳なかったな。ここまで生き残ったフェイトに敬意を払わなければな。さあ、こい」



 わたくしはドレスの裾を切り裂いて動きやすくした。

 肩をまわし、数回、飛んだ。



「まさか、妾とチャンバラごっこでもやるつもりか? すまぬな。フェイトにはそんな手立てしか残っておらぬのだな。そこまで無力な存在になったことがないので、配慮を欠いてしまった」

「万が一、わたくしが勝つことができても、マデリンは決闘前にもどるのですよね? その……何回ぐらい、もどれるのでしょうか」

「1万回ぐらいは可能、じゃろうな」

「1万回!!!!! ほんとうにマデリンは超一流の魔女なのですね。わたくしは9回が限度みたいです。実力差がうかがえますね」

「ふぅむ。そんなことはないぞ。妾がいなければ、フェイトがいちばんの魔女になってもおかしくはない。そんなことより、なぜ、茨の魔女と共闘しなかった? どうしようもない悪手だな。もしかして、妾の言葉どおりに受け取ったわけか? とても勝ちにいこうとは思えぬな」

「ああ、その手がありましたね。……その場合、ブラッド殿下とマデリンの一騎打ちになってしまいますよね。殿下だけでは勝てないと思いました。たとえ勝ったとしても、1万回近くマデリンに勝つのは不可能に近いのではないでしょうか」


 マデリンは、ふっと、息を漏らした。

「違うな。フェイトは茨の魔女を逃がした。妾に殺されるより、奴を許すことを選んだ。共闘すれば死は見えている。ほんとうに甘いな。だが、嫌いではない。それがおまえの選択か――」



 マデリンがなにかに気がついたようで驚愕した。わたくしはすました顔をつづける。

エヴァ(イタム)はどうした?」

「マデリン。今回ばかりはズルすぎますって。わたくしは魔法で瞬殺されるうえに1万回以上も勝利をもぎ取らなくてはならない。そんなの無理だと思いませんか?」

「まさか……」

「どちらの、まさか様……でしょうか?」

 わたくしは笑った。


「茨の魔女にエヴァを預けたのか?」

「それでしたら、マデリンをこまらせることができますか?」

 わたくしは足の屈伸をする。


「わたくしは魔力が切れているただの少女。では、次のだれかに照覧の魔女の力を引き継げばいい。そのやりかたは、イタムと()()が一緒ならよいと聞きました。とすれば?」


 マデリンが歯ぎしりした。


「そうであった。妾は移動が遅いという弱点を抱えていた。いまから、茨の魔女を追うのは骨が折れよう。まあ、それはすでに解決されておるのだがな。フェイトと茨の魔女が会う前にもどる。ナイフで妾の喉を切り裂け!」

 召使いがナイフを出した。



「やはり。わたくしは殺すとしても、この魔法を開発した大天才のイタムは生かすおつもりだったのですね。わたくしに茨の魔女の対処をさせたそのあとで、イタムを手に入れるつもりだった、と」


「だったらどうだ。結局妾の勝利は揺るがないと思うが」

 マデリンは召使いを制した。



 わたくしは長剣をかざした。朝日のまばゆい光が反射する。

「痛く、なかったですか?」

 わたくしはさわやかに笑ったつもり。

「なに?」

 マデリンのまゆげがおおきく動いた。



「死んで、この世界にもどってくるとき、わたくしは痛くて、痛くてたまらなかったのです。いまでも、思い出して、じわりと嫌な汗が出るぐらいです。喉を掻き切る。簡単にいいますが、とても、痛いですよね。へたに浅いと呼吸もできず、苦しい。わたくしはかわいいマデリンも、憎たらしくも、最後はけっきょくかわいいで締めるマデリンを見てきたから、そんな姿、みたくないのですよね」

 こまった顔でマデリンを見た。



「わたくしが、ジョージ護身術に通っていたのは話しましたね。そこでは、秘伝の奥義、無痛殺という技を習いました。痛みなく楽に死ねます。さすがのマデリンもそのような魔法はないのではないでしょうか」


「まさか、いま、妾を殺してくれようという話をしているのか?」

「ええ。わたくしだって気は進みません。つい最近まで、正体を存じあげなかったとはいえ、マデリンは尊敬できてかわいい妹のような存在でした。そんなマデリンがもだえ苦しむ姿など、わたくしは見たくはありません。それならば、いっそのことわたくしが、と思いまして」

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