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【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと  作者: 淡麗 マナ
第二章 死ぬまでにしたい【3】のこと

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90話 ほんとうの過去

「運命という理不尽で残酷なものに、反旗をひるがえしたくはないかぃ? フェイト」


「はじめまして、ですね。エヴァおばあさま。イタムにまさかこのような仕掛けがほどこしてあるとはついぞ知りませんでした。答えは、もちろん、です。いつしかわたくしの敵は運命そのものになっていますから」

「いままでどおり、私のことはイタムと呼んでくれてかまわないよ。フェイトの意思はわかった。実はそこまで万能なものでもないし、現状を聞いてから、やるかどうか決めてくれてかまわないよ」



 聞きたいことは山ほどあったが、イタムが話すのを待った。




「私はもともと、アルトメイアの穢れの魔女の血を引く魔女候補だったのさ。マデリンと名乗っているのは私の姉だ。100歳を超えているのに、あんなに若いのは、歳をとれない穢れをまとっているからだ。おとなになれない呪い、ともいうねぇ。姉はいったいいくつの穢れをその身にやどしているのだろう。それでねぇ、私はアルトメイアの戦争の道具になりたくなかったけれど、だれよりも魔法の才能があった。私が穢れの魔女にならなくてはならない。いったいどうしたものかねぇと考えていたら、姉が力を隠せっていうんだよ。無能をよそおえ、自分が穢れの魔女を継承すると言った。どうせ、戦争の道具になるのなら、魔力が低いほうがなったほうがいい。私には魔女が戦争の道具にならない為の方法を考えろといった。要は、新しい魔法を構築しろってこったね。姉はああ見えて、優しいからねぇ。さて、運良くマルクール王国に引き渡された私は、まったく新しい魔法をつくることに着手する。さて,新しい魔法を構築するうえでもっとも大切なものってなんだと思う」


 これが、アシュフォード家の歴史なんだ、と感慨ぶかく聞いた。



「方向性? 魔法の目的を決めることでしょうか」



「いいねぇ。さすが、私の孫。とても、いい線だよ。私はまず、やらないことを決めたんだ。魔力というリソースをすべてに投入はできない。攻撃魔法ではない。理不尽に負けない。死なない。古くさい魔法の組み合わせでない(魔法の性質がばれると、効果があばかれ、無効化されるから)これらを省いて、フェイトのいうとおり、魔法の目的を考えはじめたってわけだ。圧倒的な力となって、だれかを救える魔法を」

 イタムが舌をちろちろと出す。


「わたくしはその力をつかって、運命と戦うことができるということですね」



 イタムの赤い目が光った。

「そういうこと。説明するより、見てもらったほうがわかるだろう。アニエスもそれをのぞんでいた。フェイトの右目に記憶をうつした。フェイトのアニエスを誤解している部分が解消されるかもしれない。辛いかもしれないが、見てみるかい?」


 わたくしとお母さまの関係はそれほどよくはなかった。お母さまは死ぬ間際まで、アルトメイアとマルクールの戦争勃発を止めようと動きまわっていた。わたくしはそのあたりの記憶が抜けおちている。



「お願いします」

 ぎこちなく、うなずく。




 右の赤い目が熱くなった。そこに意識を集中すると――。

 急に、わたくしの意識は飛んだ。






◇◇◇




 気がつくと、わたくしの目の前にお母さまがいた。

 わたくしと同じ、白い髪、右目が赤く、左目は蒼いオッド・アイ。わたくしがおおきくなっただけのような、まったく変わらない容姿。考えこむような、難しい表情をしていた。


「ああ、お母さま。おひさしぶりでございます」

 わたくしはそう言ったつもりだったが、声が出ない。



 わたくしのからだは揺れていた。ここは、馬車だ。わたくしは毛布をかけられ、うとうとしている。

 とてもねむくて、でもねむってはいけないと本能が叫ぶ。

 雨が降っているのだろうか。たんたん、と叩くような音がする。



 ――ここは。この場面は。



 エマも同席していた。いまとほとんど容姿がかわらない。メイド服を着て、長い髪を束ねてお母さまの隣に座っている。




 ――いけない。ここは。6年前の、お母さまが殺されてしまう馬車のなか。



「お母さま、逃げてください!!!!」

 わたくしの声はやはり、届かない。



 馬車が急にとまる。お母さまはわたくしのからだを支えてくれる。

 揉めているような声が外からした。

 雨が強くなり、地と馬車の天井を叩く音につつまれ、ある種の静寂につつまれた。





 急に馬車の扉がひらかれる。




 黒ずくめのひとが入ってきて、赤い絨毯が雨に濡れて色が濃くなった。


 悲鳴があがる。

 わたくしの眠気は吹きとんだ。

 エマがわたくしとお母さまの前に立ち、黒ずくめの行く手をふさいだ。




「お母さま、殺されてしまいます。逃げてください!!!!!!」

 からだは起こせたが、やはり声は出ない。

 わたくしの背はだいぶ低く、黒ずくめの人を見あげた。




 えっ!!!!!




 するどい痛みにわたくしは顔をゆがめる。




 なんで??????




 わたくしにナイフが突き刺さっていた。




「フェイト!!!!!!!!!」

「フェイト様!!!!!!!」



 お母さまとエマの絶叫が聞こえるも、それがちいさくなり、わたくしは、意識をうしなった。

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