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【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと  作者: 淡麗 マナ
第二章 死ぬまでにしたい【3】のこと

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73話【バルクシュタインside】初めてのアシュフォード家①

 あたしは、アシュフォード様の部屋に入った瞬間に、息をおもいっきり吸い込んだ。



 ここは、アシュフォード様のにおいが濃い。

 目を閉じ、鼻を動かしていると、アシュフォード様が首をかしげ、あたしにせまった。



「わたくしって……もしかしてクサいですか? メイドにもにおいを嗅がれるのです!!」

「あ……。違いますよ! アシュフォード様の優しいにおいを嗅ぐと安心するんです」

「ほんとうですか?」

「ほ、ほんとうです!」

 アシュフォード様はわたくしを見つめると、ふっと、笑う。


「いま、紅茶を入れますね」

 アシュフォード様の声が聞こえたのか、美人のメイドがすぐに入ってきて、紅茶を置いて、扉を閉めた。




 今日は学校の休みを利用して、アシュフォード様の自宅へお邪魔し、イタムと1日過ごすという日だ。




 アシュフォード様の部屋は白い壁に金縁があり、上品だった。かわいらしい天蓋付きのベッドは、いかにもお嬢様がオーダーメイドで作らせたといったところか。金貨100~150枚はするかな。



 あたしがベッドを何気なく見ていると、人の気配がする。




 嫌な予感がして、


 3、


 2、


 1、と心で数える。






 ばっ、とベッドの下を覗くと、闇のなかで光る目があった。





「アシュフォード様! くせ者です!! 下がって!!!」

「な、なんですって!! まさか、茨の魔女!!」



 

 2人であたふたしていると、ベッドから這いだしてきた。




 あたしはあわてて、拳をかまえた。




 這いでた人は、不気味に立ち上がった。前髪によって顔が見えない。





「エマ、なにをやっているのですか……」

「さっきのメイドさんか。って、あれ? 紅茶を持ってきてくれた後、部屋を出ましたよね? いつの間にベッド下に潜りこんだんですか」

 

 エマは神妙な面持ちであたしに近づいてくる。

「すみません。フェイト様が初めてお友達を連れてきたものですから、屋敷中が大騒ぎでして。メイド長である私が偵察の任を仰せつかりました。まあ、あと、どんなガールズトークを繰り広げられるのか、ちょいと盗み聞――」


「いいからっ。出て行きなさい! エマ!!」

 アシュフォード様がエマの肩を押す。

「そ……そんなぁ。私は皆様よりちょっとだけ年上ですが、まだまだガールズトーク、ご一緒できると確信していますよ。ああ、かわいい少女達と語らいたいー」

 部屋から追い出された。





「き、強烈な人でしたね」

「ごめんなさいね。エマには振りまわされてばかりで大変です」

 アシュフォード様は微笑んだ。


「では、こちらで紅茶を飲みながら、イタムの育て方について話しましょう」


 可愛らしい白い机に、アシュフォード様は紙を広げる。

 そこにイタムもいて、あたしを見ると、瞬きして、すり寄ってきた。なんてかわいいの。イタムをなで回した。



「バルクシュタインには不思議と懐きますね。めずらしいですよ。一応、イタムについて覚えておいてほしいことを紙にまとめておきました」

「光栄です。あたしの他に、イタムを預けられる方はいますか」

「うーん。マデリンも考えたのですが、イタムは良くても、彼女がイタムを好きかどうかはわからなくて」

「なるほど。相性って難しいですよね」

 イタムをなでると、あたしの指に巻き付いてきた。


 

 アシュフォード様が書いたメモをざっと見る。どんなものを食べさせたらいいか、脱皮の時期、調子が悪いときの対処法など。愛情持って育ててきた歴史が、記載されていた。このメモは金貨では到底買えない価値があるものだ。



「なにか質問などはありますか」

「いえ。特にないですね。まあ、正直、こんな紙切れには興味ないので」

 あたしはぞんざいに紙を机にほおって、アシュフォード様を見つめた。



 アシュフォード様は()けていた紅茶に砂糖を放り込む。それは……紅茶の中身が砂糖に浸食されるほどの量だった。

「あの……。わたくしから頼んでおいて申し訳ありませんが、大事なイタムのことです。もうすこし真剣に考えていただけませんか」

「ちょっと飲ませてください――。あっま~ぁぁぁ。甘すぎますよ。これは紅茶と言うより、砂糖茶です! 紅茶の渋みも、コクも、全部台無し! これ、めちゃくちゃいい茶葉でしょう? もったいない」

「いまは砂糖のことは置いておいてください! イタムの話です!」

 さらに砂糖を追加しようとしたアシュフォード様の腕をつかむ。おや。前よりも若干筋肉質になっているような。

「これ以上、あたしの前で砂糖を入れさせませんよ!」



「いい加減にしてください! 砂糖のことはいいのです! イタムのこと、ちゃんと考えてくれないのなら、この話はなかったことにしてください」

 アシュフォード様はあたしの手をはねのけて、不機嫌そうに髪をかき上げた。

「なにを勘違いなさっているのですか。あたしがかわいいイタムのことを考えていないわけがないじゃない」

 アシュフォード様に近づき、赤と青の宝石のようなオッド・アイを見つめた。


「では、どうして?」

「あたしは、アシュフォード様にとって都合のいい女じゃないんですよ」



 あたしは立ち上がって、アシュフォード様の肩にふれた。



「ちゃーんと、人にお願いするのなら、それ相応の態度というものがありますよね」

 あたしはアシュフォード様の綺麗な白い髪をすくって、耳元でささやいた。髪を指先でもてあそんだ。



 ベッドを指さす。



 アシュフォード様がとまどっている。



「部屋の鍵とカーテンを閉めて」

 あたしはアシュフォード様の鼻先に当たるほど近づいて、言った。

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