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【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと  作者: 淡麗 マナ
第二章 死ぬまでにしたい【3】のこと

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58話 そうだ、魔女に会いに行こう!⑥具体的な手がかり

 使用人が入ってきて、丸いテーブルにふかふかのソファーが運び入れられた。


 紅茶は透きとおった茶色で、新鮮なレモンが添えられていた。酸っぱいにおいが鼻腔をくすぐる。食器も金細工が施してあり、上品だ。角砂糖を6個入れて、ティースプーンで混ぜると、よい香りがひろがる。


「いつも、そんなに砂糖を?」

「ええ、甘いことはすべてを解決できます」

「そ、そうなのね」


 ロレーヌ様の膝にはアンが丸まっていた。

 イタムはわたくしの肩にのって、アンを見つめている。アンは興味なさそうに、あくびをした。


 一呼吸おいて、切り出した。

「わたくしが死んだあとも、生きているように偽装できる魔法はございますか」


 ロレーヌ様は頬に手をあて、考えていた。最初に時より、目元の鋭さがなくなっていた。

「それはいくつかの闇魔法を組み合わせることでできるかもしれない。昼間外を歩けないとか、明るすぎるところではボロが出そう」

「その程度の問題で済むのなら、なんとでも対処のしようがあります。是非お願いします」

 あたまを深く下げた。


 しばらく、沈黙が続く。


「……それが、いちばん良い方法なのかしら。残された者にとって、いつわりのフェイトちゃんが生きているってことは、はたして、幸せなことなの?」

「優しいですね。ロレーヌ様は」

「違うわ! 私は無慈悲な魔女。残虐でとても恐ろしいわ」

 巨大な手のひらと首をぶんぶんと振るロレーヌ様。座っていても、体格の違いがありすぎる。わたくしは子どもにもどり、お母さまと接しているような気になった。


「時間がありません。ベストではなく、ベターであればよい。ロレーヌ様はご自身のことを兵器だといいましたね。ならば、わたくしは人柱。ただ、他国に生きていると偽装させられればよいのです。マルクールを守る為、大切だと思う、人々の平和の為に」


 ロレーヌ様がぽろぽろと泣く。その涙がアンに当たって、なーんと鳴いた。 

「全力を尽くすわ。まかせてね」

 ロレーヌ様は拳をにぎって、宙に打ちつけた。風圧がわたくしの顔をなでる。

「やっぱり、優しい方ですね」

「優しくないわ! 私は無慈悲な闇の女王よ!」

 立ち上がり、怖い顔でわたくしに迫る。


「わたくしのような選りすぐられた悪役令嬢になってしまうと、ちょっとやそっとの悪役レベルではびくともしないのです。ロレーヌ様は魔力はすごいですが、悪役という点では、わたくしに遠く及びません」

 わたくしは顔を決めて、言った。


「フェイトちゃんは、いつも、そういう感じ?」

 ロレーヌ様は心底不思議だという表情。


「ええ。息を吸うように悪役令嬢をしています。24時間寝ている時も悪役令嬢を忘れなければ、いつか、わたくしのようになれます」

 ロレーヌ様は首が折れるほどにかたむけた。


「そうやって、残り時間の短さ、辛さと戦っているのね。健気だわ! なんて強い子!」

「いえ、好きでやっています。むしろ、悪役令嬢のほうからわたくしに会いにきた、と言う方が正しいかもしれません。わたくしは選ばれてしまったのです」

 手をひろげ、わたくしは目を閉じた。アンがなーん、と鳴いた。



 紅茶のおかわりをもらった。もうすこし、甘さがほしい。砂糖を7つ入れて、かき混ぜる。ああ、良い香り。宝石のようなマカロンや、つややかなチョコをほおばり、目を閉じた。この幸せな時間を噛みしめる。


「そろそろ、砂糖はしまうわね」

 ロレーヌ様は砂糖をいれた銀容器を手前に置く。わたくしはそれを中央に置き直した。ロレーヌ様は驚愕した。

「お気遣いは無用です。砂糖はちゃんと、自分がいたい場所を自ら選びます」

「……そう。それで、フェイトちゃんを攻撃した魔女に心当たりは?」

「だいぶ絞り込むことはできました」

「私では、ないってことね」

「疑ってしまい、申し訳ありません」

 立ち上がり、深くお辞儀をした。


「いいの。魔法とはほんとうにいろんなことが出来る。魔法による攻撃ならば、魔女のすべてを疑うところからはじめなくてはならない」

「このような、数ヶ月でだれかを殺すことができる魔女をご存じですか」


 ロレーヌ様は余命の話をすると泣いてしまう。涙をぬぐった。


「これから言う話は私のひとりごとなの。とっても、大きなひとりごとになってしまうわね」

 歌うように言った声は、広い部屋に反響した。

 わたくしはちいさく、うなずいた。



「ゴルゴーンに数ヶ月以内に攻め入る計画がアルトメイアにはある。それに、フェイトちゃんを引き入れる計画も。それらを総合的に考えて、とっても大きなひとりごとを今からいうわ」

 イタムが首をかしげた。




「【茨の魔女】がやったと思う。私は面識がないけど、噂では、人を操ったり、魔法反応が残らない高度な毒魔法を使う、局所攻撃には向かないけど、1人いるだけで大都市を影ながら滅ぼせる、やっかいすぎる魔女ね」



「やっぱり優しさがにじみでてしまいますね。ロレーヌ様は」

「怖い怖い怖い、女なの、私は!!」

 おぞましい顔で迫られる。


「個人に向けられる魔法は、遠距離では使えない。対象を近くで絞り込む必要がある。フェイトちゃんが魔女ということで狙われたのなら、きっと近くにいる。フェイトちゃんは、茨の魔女と面識ないのよね?」

「はい。正直なぜ、攻撃を受けたのかもわかりません」

「魔女なんてものに生まれたら、それだけで攻撃の対象になるものよ。私だっていつ暗殺されるか」

 

 ロレーヌ様は言葉を一度切ってから、告げた。




「茨の魔女は、マルクールに潜んでいると思うわ」




「やはり……そうですか」

 不安で、イタムのあたまをなでた。指をイタムが舐める。


「マルクールにもどって、茨の魔女を探しなさい。茨の魔女の容姿は隠されているけど、女で、30~50歳ぐらいという噂ね。まあ、噂だし、魔女の見た目はあてにはならない。あいつを頼って。ちんちくりんのくせに一人前の大きな車椅子にのった、あいつの魔法探知を使ってね」

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