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【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと  作者: 淡麗 マナ
最終章 最期にわたくしがしたいこと

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102話 答えあわせ②

「答えよ! まだ(はかりごと)はあるか?」

 マデリンが言った。


「イタム、逃げて! わたくしが時間をかせぎます」

 イタムを地面に逃がした。

 しかし、すぐには逃げない。心配そうにわたくしを見つめる。

「行って!!!! はやく!!!!!」

 わたくしは鬼の形相で、イタムを逃がした。


「ないのだな? では終わりにしてよいかの?」

 マデリンがしつこく聞いてきた。


「わたくしはマデリンの用心深さまでは見抜けませんでした。ですが、この1回しかチャンスがなかったとしても、生き残る為に全力で戦います! さあ、来なさい!!!!!!!」


 ナイフをかまえ、マデリンにむかっていった。


 マデリンは腕をのばす。


 手にはげしい衝撃が来て、ナイフを落としてしまった。ナイフはマデリンの手元に吸いよせられていった。

「こわやこわや。ほんとうにフェイトはなにをするかわからぬ。しまっておけ」

 召使いがナイフを受け取った。


「これで武器はないな。まだあと一本ぐらいは隠し持っておるか?」


 わたくしは息を吐いて、首をふった。

「残念ながら。あとはご令嬢にはあるまじきですが、師匠に教わった格闘術をお披露目するぐらいでしょうか。まったく格闘術など、どこで使う機会があろうかと鼻で笑って、師匠に死ぬほど走らされたのはよい思い出。ほんとうにあの方にはあたまがあがりませんね」



「ほんとうにおもしろい奴よの。この後におよんでまだあきらめぬとは。まったく不屈の英雄じゃな」

「わたくしはずっと理不尽な運命とやらに戦いを挑んでまいりました。可能性がたとえゼロであっても、あきらめはしません!!」


 わたくしはかまえ、マデリンにすこしずつ近づいていった。



「もう、よい。やめよ。妾の話を聞け」

 マデリンが腕をふった。

「謹んで、お断り申しあげます。そうやって、話している最中に殺されてしまうのが、わたくしですよ」


「しかたがない。捕らえよ」

 召使いは岩にマデリンを寝かせ、わたくしと対峙した。


 やはり、目の前に立たれると背と肩幅のおおきさに圧倒される。わたくしの顔に影ができた。


 わたくしと交換した長剣を持っている。



 素手ではさすがに無理だ。いや、剣をもっていても、この方のほうが圧倒的に上手だ。さらにわたくしがどんな人間か知られているので、油断などしないだろう。



「おとなしくしてください。貴方にお怪我をさせたくはありません」

 渋い声で召使いがわたくしに言った。


 わたくしははっとした。

 話をするのは、これがはじめてではなかったか。



 拳を下ろし、その場に立ち尽くした。

 いやにまぶしい太陽を、にらみつけた。




 わたくしは厳重に縄で縛られ、足と手がまったく動かせない状態になった。芋虫のような体勢だ。

「無力な小娘ひとりに大げさすぎではありませんか? ああ……痛いですね。これは……痛いぞ……。もうすこし、ゆるくしてもらってもよろしいでしょうか。か弱いご令嬢ですよ! わたくしは!! イタムは遠くまで逃げたでしょうね。野に放った蛇を見つけるのは困難ですよ」

「戯れ言を。こんなにか弱いから遠く離れてしまったご令嬢がどこにおるか! 全世界のか弱きご令嬢に謝罪せぬか!! まあ、イタムが見つからなければ、また過去にもどればよいだけだ。それと正直に言おう。それだけきつく縛ったのは、フェイトが恐ろしいからだ。何度ももどれるとはいえ、痛い思いをせねばならぬのは改良の余地があるな」

「それならば、なぜわたくしを殺さないのですか? まだなにか、マデリンには考えがあるということでしょうか」

 縄がほどけないか、抵抗をこころみたが、びくともしなかった。




 マデリンは、岩で寝転んでいる。おおきく息を吐いた。

「ほんとうに疲れたの~。骨のある女じゃな。フェイト。ここまでの戦い、見事であったぞ。よくぞ、ここまで策をめぐらし、逆転の機会を狙い、戦い抜いた。特に妾が死ぬ痛みに躊躇していることを見抜き、代わりに殺す提案をするくだりは実によい作戦であった。妾は感動しておる。誇ってよいぞ」

「どうしたのですか。急に」

 わたくしはそういいつつ、なにか逆転の手だてがないか、考えつづけていた。



「妾ではフェイトのような戦い方はできぬ。最初から強大な力があったわけではないが、そこまで無力でもなかった。それでも知恵を絞り、あきらめずに戦った。その戦いのさなかでわかったことがある。妾は知らぬうちに油断をしていた。最初は過去にもどる魔法を手に入れたからだと思った。だが、違う。妾はフェイトに対して、油断をしていたのだ。すでに魔力が切れていて、攻撃魔法ひとつ使うことができない。それなのに、妾をここまで追い詰めた。それは才能だ。魔女は強い。汚い手を使い、油断なく魔法を連発すればまず一般の兵には負けぬ。だが、魔女はこれまでも殺されてきた。それは油断によって、だ。断言しよう。フェイトはたしかに弱い、が、もはやそれすらも武器だ。だれもがフェイトに対峙したときに油断をする。フェイトはそれをねじ曲げる力がある。素晴らしいな。こんな魔女はみたことがない」


 マデリンを凝視した。いったいなにを考えているのだろう。彼女はおおきく伸びをして、やる気なさそうにあくびして、あたまをこくり、こくりとした。


「褒めたって、なにも出ませんよ。まあ、生かしてくれるのなら、紅茶とワインぐらいはごちそうしますけれど。ちょうどとれたてのものをご用意できます。いかがですか」


 マデリンが笑う、それは、心から、楽しげだった。むかしのマデリンがもどってきたようで、心がざわつき、泣きそうになる。わたくしは、マデリンと戦いたいわけではなかった。剣などむけたくはなかった。ただ、マルクールを、わたくしの大事な人たちを、守りたかっただけなのだ。



「それもよいな。ごちそうになろうか。妾は疲れたぞ。こんなに寝ないで頑張ったのはひさしぶりだ」

「えっ?」

 話がどこにむかうのかわからない。



「まったく。世話が焼ける。茨の魔女には毒まで盛られたのにそのことを隠そうとして、連れ去られるわ。妾が茨の魔女を始末しようとしたら、それはやめろ、わたくしが話をつけると言いはじめて、けっきょく連れ去られるし。フェイトはわがままばっかりじゃったよ。妾は振りまわされ、疲れてしまった。1年ぐらい肩をもみつづけてもらいたいものだな」


「なにを????」

 縄が食い込んで、痛む。それ以上に、あたまが痛い。なんだ。この違和感は。


「さあ、察しがついたか。最後の答えあわせといこう」


「マデリン、この過去を何回、繰りかえしているのですか?」

 マデリンは答えず、くちびるをすこしだけ、上げた。

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