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後編 第1部

「何と…」

国王マルセルは、魅せられたようにその絵画を見つめた。

専任画家、モガートが献上した絵画3枚のうちの1枚で、乙女の姿を描いた肖像画だ。

「…絵画は多く観てきたが、これほどまでに惹きつけられるものは初めてぞ…」

日ごろは辛口で皮肉ばかり言うマルセルだが、この時ばかりは率直な感想を漏らした。滅多に観られない光景だ。

「恐れ入ります。」

モガート・アノックは跪きつつ、静かに言った。

「名はセオノアと言ったか…これほどの才能…稀有であるな。」

マルセルは視線を絵に留めたまま顎を手で摩った。

「セオノアを宮廷に呼ぶがいい。この乙女について話を聞きたい。」

モガートは顔を上げ、僅かに口角を上げた。それこそが待ち望んだ言葉だった。

「御意に。早速 使いの者を差し向けましょう。」


マティーユから戻って以来、セオノアは塞ぎ込んだままだった。

食欲もなく、自室に引きこもりがちで、日課である森への散策へも出ない。

飲酒量も増えていて、体調も悪そうに見える…

リオーネは心配だったが、あまり干渉してはいけないと思い、なるべく自然に接するよう心掛けた。

自室に食事を運んで行くと、セオノアはありがとうと言って微笑むことはしてくれた。用意した食事を少しだけ食べ、ごめんね…と悲しそうに誤る日々が続いている…

「春だったら花冠が作れるのになぁ…」

リオーネは自室で独り呟いた。

セオノアを慰めたいと思うが、シセルに習った花冠も、花の咲かない季節では無理だ。

思案した末、何かを描こうと決めた。描き方の基本はセオノアが教えてくれている。道具や紙もセオノアが与えてくれた物がある。

「うーん…」

難しい…リオーネは自分の才能の無さを呪った。なぜ上手く描けない…

奮闘すること2時間、ようやく輪郭が出来上がった。あまり納得がいくものではなかったが、一応、形になったような気がする…

「ちょっと休憩…」

ペンを置き、背伸びをしたところで、玄関で扉を叩く音が聞こえた。

エントランスを覗くと、マシュが応対すべく歩いていくところだった。

マシュは、ほんの短いあいだ扉を開けた後、再び施錠をしてから引き返して来た。そして、リオーネを見つけると言った。

「王都よりの使者が参られた…この手紙をセオノア様に渡しておくれ。」

リオーネは手紙を受け取り、すぐに2階へと向かった。王都からの手紙と言うからには、大切なものに違いない。

「セオ様、お手紙が届きました。」

リオーネは扉を叩き、声を掛けた。

「入って。」

セオノアの返事が帰ってきたので、リオーネは扉を開けて中に入った。

「王都より使者が来られたとのことです。」

暖炉の前の椅子に座り、盃を手にしているセオノアが、リオーネに向かって手を伸ばした。

「王都から…?」

セオノアは手紙を受け取ると、その場で読み、目を見開いた。

「王宮へ来いと言うの…私に…」

それはモガートからの手紙だった。乙女の絵画について、国王よりお召しの要望があった旨が書かれていた。

セオノアの身体が震えた。恐怖が全身を支配して行く…過去の闇が走馬灯の様に蘇る…

「駄目…父上のもとへも、王都へも行きたくない…」

セオノアは顔を手で覆った。父への怒りはあっても抗議する勇気がない…踏みにじられ否定され続けた記憶が、今もセオノアの心を苛み、蝕んでいる…

セオノアが狼狽している。とても辛そうだ…

リオーネはどうすれば良いかを考えた。

こんな時、お母様はどうしていたんだっけ…

「セオ様…」

とりあえず、リオーネはセオノアを両腕で抱きしめた。かつてシャリナがそうしてくれた様に、優しく背を撫でてみた。

「大丈夫。私がお側にいます。セオ様は私が必ずお守りしますから…」

その温もりと優しい言葉に、セオノアは我に帰り、顔を上げた。

菫色の大きな瞳が心配そうに見つめている。その眼差しはまるで母の様だ…

「リオン…」

セオノアはリオンを抱き締め返した。この温もり無しに、自分はこれから生きられるだろうか?

…でも、リオンが私を守ると言うのはお門違い…今は私こそが君を守らねばならないのに…

そう思うと、震えが少し治まった。リオンがいれば過去の恐怖も乗り越えられる気がする…

「君への愛ゆえ、私は禁忌を犯してしまった。…だから勇気を持って王宮へ行くわ。リオンも一緒に来てくれる?」

リオーネは安堵した。セオノアの瞳に光が戻っている…

「勿論です。どこまでもお供いたします。」


東の砦とも呼ばれる城塞グスターニュ城の城門に騎乗の一団が訪れると、門番は規則通りに名を名乗れと命じた。

「こちらに在わすは、西ルポワド領主フォルト・ド・パルティアー ノ公である。直ちに開門せよ!」

伴の騎士が名乗ると、すぐに門が開かれた。一団は門を駆け抜けて城内に入り、城主であるユーリと近衛隊の騎士による出迎えを受ける。

ユーリは、上質な絹のチュニックと紋章柄のマントに身を包んだパルティアーノ公爵を見遣った。

「相変わらず派手な出で立ちだ…」

ユーリはすぐ後ろに控えているシセルに向かって囁いた。

ユーリがフォルトを毛嫌いしているのを熟知しているシセルは、僅かに口角を上げて頷いて見せる。

フォルトが馬を下りると、ユーリは自ら歩み寄り、その手を握った。

「ようこそグスターニュへ。歓迎しますぞ。パルティアーノ卿」

「そなたも息災の様子。何よりだ。」

二人は軽く挨拶を交わした後、すぐに城内へ歩を進めた。今にも雪が舞いそうな灰色の空が広がり、空気がかなり冷たい。

暖炉の炊かれている応接の間に案内されたフォルトは、そこで待っていた懐かしい顔を見て目を眇めた。ユーリの妻、シャリナだ。

「お久しゅうございます。パルティアーノ卿」

シャリナは膝を折り、恭しく会釈をした。

フォルトは歩み寄ってシャリナの手を取り、指先にキスをした。

「我が君、会えて嬉しい。ますますお美しくなられたようだ。」

「まあ…お上手ね。」

フォルトの美辞麗句に、シャリナは頬を染めて笑った。

フォルトも笑みを浮かべ、じっとシャリナを見つめている…

ユーリは思わず眉根を寄せた。

この男はまだシャリナに未練たっぷりじゃないか…そのうえそれを隠そうともしない…全く忌々しい。

あの決闘から10年以上が過ぎ、互いに既婚し子持ちになった。今さら妻に不埒な眼差しを送るなど、本来許し難いことだ。

しかし、そんなユーリの憤慨をよそに、まだ二人は楽しそうに会話を楽しんでいた。公爵であるフォルトは身分差を盾にし、ユーリを寄せ付けない傍若無人ぶりだ。

シセルは扉の脇に立ち、黙ってその様子を観ていた。

パルティアーノ公とシャリナ様の関係は明らかに親密だが、見ている男爵の反応が何とも微妙だな…

万が一にもシャリナがフォルトに懸想することはないにしろ、ユーリとフォルトの間にはどうやら根深い確執があるらしい。

お二人はかつては互角と言われた馬上槍試合の覇者…生涯の天敵というところか…

「ちょうど良い。奥方にもご同席願おう。」

やがて席に着いたフォルトが言った。

挨拶後にはシャリナを下がらせようとしていたユーリはフォルトを瞠目した。

「妻も?」

「話が他でも無い娘御の件なれば、その方が良かろう?」

「娘の件…?」

ユーリの反問に、シャリナも、そしてシセルも目を見開いた。

「リオーネ…」

シャリナが声をあげた。

「あの子に…何かあったのでしょうか⁉︎」

シャリナが動揺して青ざめる前に、ユーリは妻の背に手を回した。

「その様子では、 まだ何も知らぬようだな…」

「…何をだ?」

ユーリも尋ねた。

召使いが用意した果実酒を先ずは一口飲み、「ほう…」とその味に感心した後、フォルトは続けた。

「王宮で一枚の絵画が話題になっている。王族の専任画家、モガートが国王に献上したものだ。」

モガート?

シセルは危うく声を上げそうになった。

「陛下は珍しくその絵画に感銘を受け、謁見の間に飾るよう命じた。程なく多くの貴族達が目にする事になるだろう。」

「それは確かに珍しいな……」

ユーリも頷いた。あの戦好きのマルセルが、芸術に関心を示すとは…

「その絵画を観た宮廷歌人が詠んだ歌がある。」

フォルトは詩を詠み始めた。


"薄衣を纏いし絹の肌と艶やかに流れる漆黒の髪…魅惑色の瞳は、観る者の心を捉えて離さない。"


「私も絵画を観た。確かにあれは魅惑的だ…漆黒の髪と珍しい菫色の瞳…肌を躊躇いなく露出した美しくも艶かしい乙女の肖像だ。」

フォルトはシャリナを見つめた。ブランピエールの血族にのみ遺伝する「菫色の瞳」…今ではもう、シャリナとその娘、リオーネの二人だけになった。

「作者はモガートの息子、セオノア・アノック。…事情は知らぬが、そなたの娘はセオノアの従者になっていると聞いたぞ…これは単なる偶然か?」

愕然とするユーリとシャリナ以上に、傍に立つシセルは衝撃を受けていた。

黒髪と菫色の瞳…それは明らかにリオーネだ。どんな絵画かは判らないが、公爵の表現からすると、リオーネの尊厳を貶めかねないものに違いない。

シセルは拳を握りしめた。許されるものなら今すぐこの場を離れ、リオーネのもとに飛んで行きたい。セオノアを問い詰め、事情を説明させねばならない

「確かに、リオーネをセオノア・アノックに仕えさせているのは事実だ…しかし報告によれば主従関係は良好で、子爵の態度に問題はない。」

ユーリは苦しい言い訳をした。何も判らない今はそれしか言いようがない。

「だが、実際あれはその子爵によって描かれた。なぜであろうな…?」

フォルトは更に投げかける。ユーリも押し黙り、沈黙が流れた。

「ユーリ…」シャリナは言った。

「あの子を連れ戻して…今すぐ…リオーネが傷つく前に…」

その声は震えていた。座ってはいるものの、今にも倒れそうだ。

「シャリナ…」

おもむろにフォルトが立ち上がり、シャリナの背後に回った。ユーリの存在を無視して両腕で支え、耳元に唇を寄せる。

「その必要はない。そなたの娘が傷つかぬよう私が配慮しよう。そのためにここへ来たのだ…」

「パルティアーノ卿?」

シャリナは彼を見上げた。フォルトは意味ありげな笑みを浮かべている。

「…問おう、漆黒の狼。男爵の姫である娘をなぜ子爵などに預けた…危険とは思わなかったのか?」

ユーリは唸った。相手が公爵とはいえ、この食えない男に全てを話す必要があるのか?

「私からお話しますわ…パルティアーノ卿」

シャリナが言った。相変わらず声が震えていたが、意を決したようにフォルトを見つめる。

「リオーネは…騎士になる夢を抱いているのです。夫はその意思を尊重してあの子に機会を与え、アノック卿の従者として仕えさせました。それに、アノック卿は誠実な方です。それは間違いありませんわ。」

「騎士に ?」フォルトは反問した。

「はい。リオーネは幼い頃から男の子のようで…自分もカインと同じ騎士になるものと信じていました。成長するにつれてその意思がますます強くなって…ですから、私達はリオーネの気持ちを受け入れることにしました。それがリオーネのためと信じたのです。」

言いながらシャリナは泣いていた。

フォルトは頷きながら、自分のハンカチをシャリナに手渡した。

「なるほど…事情は理解できた。大丈夫だ、解決策はある。心配は要らぬぞ。」

何かおかしい…

ユーリはフォルトを凝視した。泣いているシャリナの肩に置かれた手も忌々しいが、それ以上に、納得するのが早過ぎる。もしや この男は初めから何か目論みがあって来たのではないのか?

「王は子爵を宮廷に呼ぶようモガートに命じた。当然だが、謁見の折に絵画の人物が誰であるかを尋ねるだろう。そこに控える従者の瞳の色に、必ず関心を示すはずだ…」

フォルトのその言葉に、シセルの忍耐が限界に達した。

リオーネが国王の目に止まる…望んでいた騎士としてではなく、ただの女として…

シセルは踵を返し、外に飛び出した。職務放棄が厳罰なのは分かっている。厳しい処分が下されるだろう。だがそんな事に構っている場合ではない。

リオーネ様を王都に行かせてはならない!

シセルは持ち場を副隊長に任せると、すぐさま騎乗して駆け出した。

「どうか間に合ってくれ…」

ユーリはシセルが任務を放棄し、どこへと向かったのか判っていた。

誰よりも責任感が強く、自分に厳しい人間であることは熟知している。

俺が責めるまでもなく、あいつ自身が己を責めているだろう…

ユーリはほぞを噛んだ。隊長自ら誤ちを犯せば厳しい処断は免れない。その命を下すのは他でもない自分なのだ。

「もはや、絵画を王から取り上げる事は不可能だが、娘を匿うことは可能だ。多くの者の好奇な視線に晒される前に隔離してしまえばいい。」

ユーリの葛藤をよそに、フォルトは話を続けた。

「隔離…どこに…?」

シャリナが不安を隠さず問い返すと、フォルトは僅かに目を細めた。

「私に預けるがいい。まこと騎士になりたいと望むなら、私が娘を鍛えてやっても良い。相応しい能力者であれば、騎士となるのも夢ではないぞ。」

「リオーネを…公爵様のお側に…?」

フォルトは沈黙したままのユーリに視線を移した。決断力に長けた屈強な男も、こと愛娘に関わる件では判断が鈍るらしい。眉根を寄せ、苦悶の表情を浮かべている。

…追い込まれているな、漆黒の狼。かつてシャリナは奪われたが、此度は決して譲らぬぞ。そなたは私に従わねばならぬ。あの日の私のように、虚しい敗北を味わうが良い…

ユーリはフォルトの来訪がそのための画策であったと解釈した。考えるのも不快だが、恐らくはシャリナに恩を売り、その後も関わりを保ち続けるつもりに違いない。

…だが、王族であるこの男の権力は絶対だ。例え動機は不純でも 、リオーネにとってこれ以上の機会があろうか?

リオーネとの約束はあくまで不確定なものだった。騎士の称号を授けるのは国王であり、それには多くの手順を踏む必要がある。それを全て克服するのは至難の技だが、フォルトの様な王族の推挙があれば、特例として認められる可能性があるのだ。

俺はますますシャリナに恨まれるな…

溜息をつくとユーリは席を立ち、フォルトに向き直った。

「ご好意感謝する。我が娘リオーネを、貴方のお力で是非とも騎士にして頂きたい。」

頭を下げたユーリをフォルトは満足げに見つめて微笑んだ。それは国王マルセルに似ていると酷評の「残忍な微笑み」だった。


シセルは早駆けの末にアノック城へと到着し、馬から飛び降りるなり激しく扉を叩いた。

「シセル・バージニアスだ!リオンに会いたい、開けてくれ!」

やがて、マシュが扉を開いた。彼はシセルを見ると困惑顔になり、一歩下がって頭を下げた。

「リオンは居りません。セオノア様とともに王都ルポワドへ向かいました。一昨日の事です。」

シセルは茫然となった。二日前では追っても間に合わない。

リオンは行ってしまった…私はもう、貴女に会えないかも知れない。

「リオーネ様…」

シセルは絶望した。リオーネの笑顔が脳裏に浮かぶ…姫君を護れなかった自分の愚かさを心の底から蔑んだ…


その夜、帰還したシセルを出迎えたユーリは、彼を執務室へ呼び、報告と決定、そしてシセルへの処分を言い渡した。

「リオーネはパルティアーノのもとへ行くことになった。貴族の娘として正当に扱い、いずれ準騎士となるべく、フォルト自らが教育するとのことだ。」

ユーリからの報告に、シセルは唇を噛んだ。

「申し訳ありません。姫君の護衛として力及ばないばかりか、姫君を窮地に追い込んでしまった…全て私の責任です。」

頭を下げるシセルの憔悴は著しかった。肩を落とし、苦悶の表情を浮かべている。こんな姿を見るのは初めてだ。

「窮地と決まったわけではないさ。絵画の件はお前のせいではないし、あの食えない男が背後に立てば誰も逆らわない。リオーネはかえって安全だ。」

「ですが…リオンは自由を失いました。パルティアーノ卿は王族です。宮廷に…国王陛下に近いお方だ。姫君は常に監視され、窮屈な生活を強いられるでしょう。 牢のようなあの場所で、リオンの個性は潰されてしまう。誰よりも自由で活発だと言うのに…」

言いながら、シセルはリオーネの姿を思い浮かべていた。屈託のない笑顔のリオーネ…懸命に働くリオーネ…自分を慕って泣くリオーネ…

「シセル…」ユーリは眉をひそめた。

…いかに鈍感な俺でも判るぞ。お前が何を失い、何故それほどまでに打ちひしがれているのか…

「とにかく全ては決まったことだ。お前は暫く謹慎処分とする。今夜はもう休め。下がって良いぞ。」

ユーリは命じた。これ以上落胆するシセルを観ているのは辛い。

シセルが一礼して下がると、ユーリは深く溜息を吐いた。

「牢のような…か」

確かに、リオーネにとって宮廷は窮屈な場所かも知れない。

「…だが、俺には判る。それも騎士になる修練と思えば、あれはきっと耐え抜くぞ。何せ『漆黒の狼』の娘なんだからな…」

この際フォルトの思惑などどうでもいい。リオーネが並みの姫ではないことは

直ぐに判ることだ…

「俺ですら手に負えない「子狼」をどう鍛える?…楽しみだ。」

ユーリは席を立ち、寝室へ向かうことにした。

いつもながらシャリナをなだめるのは骨が折れる…まして、今夜はこの城にパルティアーノが滞在しているのだ。シャリナの心が揺れないとは限らない…


「うわぁ…」

生まれて初めて訪れた王宮は壮絶だった。

そこにいる人間の多さもさることながら、城の構造がとにかく広く複雑で、いったいどこを歩いているのか見当すらつかない。

混乱するばかりのリオーネの手を固く握り、セオノアはしっかりとした足取りで回廊を歩いていた。どうやら彼のほうは宮廷をよく把握しているらしい。

まるで小動物のように目を丸くしているリオーネを横目に、セオノアは唇を固く結んでいた。

今から父モガートに会う。何年ぶりだろう。

セオノアにとって王宮は辛い所でしかなかった。おぞましい思い出ばかりが詰まった最低の場所だ。

それでも今はこの温もりに救われている…リオンが傍に居てくれれば、何も怖いものはない…

一枚の扉の前に立つと、セオノアはリオンの手を離し、大きく息を吸った。

「ここが父の部屋よ。例えどんな事態になっても、君は決して口を開かないで。私は大丈夫だから…」

「解りました、セオ様。」

リオーネが不安そうに頷くと、セオノアは微笑んで扉を叩いた。

「父上、セオノアです。」

声をかけると、中から入れと言う短い返事が返って来る。セオノアはノブに手を掛け扉を開いた。リオーネが一瞬で垣間見たモガートの部屋は、足の踏み場もない程の絵画に溢れていた。 その数はセオノアのアトリエの比ではなく、驚くべき量だった。

セオノアが中へと入って行き、リオーネは扉の前に一人残された。ここにも大勢の人々がいる。皆、見たこともない服装をしていて、本当に観ていて飽きなかった。

そう言えば、教官は王宮に来た事があるのかな…

お父様の近衛である以上、きっと何度も訪れているんだろうなとリオーネは思った。そんな話はしたこともなかったけれど…

「綺麗な貴婦人がいっぱい…教官、ここでもモテそうだなぁ…」

リオーネはマーロウ伯の城でのシセルを思い出し、思わず笑顔になった。


セオノアは作業の手を休めないモガートに自ら歩み寄った。

長居をするつもりはない。父もそれを望んではいないだろう。

「父上、あの絵を返して下さい。あれは私個人のもの…勝手に持ち出すなど許されないことです。」

セオノアは前置きなしに訴えた。すでに緊張で全身が汗ばんでいる。動悸も酷い…

「他の作品なら幾らでも差し上げます。でも、あの絵は…世に出すものではなかった。父上も画家なら、その理由がお解りになるはずです!」

モガートはようやく手を止め、セオノアを瞠目した。

「もはや手遅れだ…あの絵は国王の目に止まった。近く宮廷の壁に飾られるだろう。」

「…あの絵が…壁に?」

「名誉なことではないか。何が不満だ?」

モガートは冷たく言い放った。

「お前は爵位を陛下から賜っている。優れた絵画の献上は専任画家の義務だ。陛下の決定に異論など許されぬ。…それに、お前を呼んだのは、あの絵について陛下が直々に話を聞きたいと申されたためだ。議論の余地などない。」

「…ならば、謁見の際、私が陛下に直訴いたします。父上が私に無断で持ち出し、盗んだものと知れば、きっとご理解下さるわ!」

セオノアが声高に訴える声が、扉の外にいるリオーネにも聞こえた。

大丈夫かな…セオ様。

リオーネは気になり、さりげなく耳を傾けた。

「この…愚か者め!」

モガートは怒り、立ち上がった。

「人として不完全なお前を、私がどれほど苦労して今の地位まで伸し上げたと思っておるのだ! …私を告発するだと? 思い上がりも甚だしい。それほどまでにあの絵が大切か⁉︎」

「ええ、大切よ!あれは私にとって命より大切なもの…例え国王であろうと自由にはさせないわ!」

セオノアの思わぬ反発に、モガートの怒りが頂点に達した。彼は目の前のキャンパスを激しく払いのけ、セオノアに迫った。

「生意気な口を叩きおって…この異端者めが!」

セオノアは殴られるのを覚悟した。幼い頃からそうだった。父は暴力で自分を説き伏せ、恐怖で全てを支配してきた。

…でも、今は引くわけには行かない…リオンのために!

「セオ様!」

その時、リオンが扉を開け飛び込んできた。モガートの前に立ちはだかり、セオノアを護る姿勢をとる。

モガートはたじろぎ、リオーネを反目した。

「誰だ…お前は。」

モガートの問いに、リオーネは答えた。

「私はセオ様の従者です。主を守るのが私の務め…それ以上セオ様を侮辱するなら父君とて許しません。」

「従者…?」

モガートはリオーネを凝視したあと、目を見開いた。

「菫色の瞳…」

自分を見つめるモガートを、リオーネは怯まず睨み返した。この人はセオ様の敵だ。父親でありながらセオ様を蔑む事しかしない。酷い人だ!

「ああ、リオン…」

セオノアはリオーネの背中を見つめた。涙が溢れる…何と強く、頼もしいのだろう…

セオノアの様子を観てモガートは悟った。あの絵の乙女はこの従者に間違いない。その思い入れの強さが、あの絵をセオノアに描かせたのだ。

「愚かな…」モガートは呆れて言った。

「…陛下がお前をご覧になれば一目瞭然。さぞかし落胆なさることだろう…」

モガートは怒りを鎮めて呟いた。セオノアが何を訴えようと、近日中には王との謁見が行われる。決定が覆ることはない。

「もう良い、二人とも出て行け。二度とここに足を踏み入れるな。」

モガートはセオノアとリオーネを部屋から追い出し、固く扉を閉ざした。

「まったく煩わしい…それにしても、あの従者は何者だ?」

麗しい顔つきの従者に、モガートは著しい違和感を覚えた。


「セオ様…行きましょう。」

茫然と立ち尽くすセオノアに向かって、リオーネは言った。

「…そうね。」セオノアも応えた。

父への説得はすでに無意味だと解った以上、ここに留まっていても仕方がない。

「苦しいのではありませんか?」

リオーネは歩きながらセオノアを見上げて訊ねた。

「お顔の色が悪いです。早くお部屋に行って休みましょう。」

セオノアは微笑んだ。リオーネの優しさが嬉しい…

「大丈夫…顔色が悪いのはいつものことよ。それに…この胸の苦しさは病気じゃないの…だから安心して。」

「そうなのですか?」

不思議そうな顔のリオーネに、セオノアは笑って頷いた。

…そう。君がそこに居る限りこの胸の苦しみは消えない…でも、真実を伝えて君を失うくらいなら、ずっとこのままでいい…

リオーネの手を再び握り、セオノアは先を歩いた。もう父など怖くない。この身に代えても国王に直訴し、絵の公開だけでも取り止めていただだこう。

決意したその胸に去来するのは、愛する者を護りたいという強い意志だった。

リオンが私に教えてくれた…強さとは何なのかを。


その頃、謹慎処分を受けたシセルは自室で独り悔いる毎日を過ごしていた。

セオノアを信頼しきっていた自分の愚かさを呪い、リオーネへの贖罪ばかりを感じている。できることなら時間を遡ってリオーネを取り戻したい…宮廷という牢獄に閉じ込めるくらいなら、無理にでもペリエ城の姫君のままでいさせた方が良かったかも知れない。

「全て私が元凶だ…すまない、リオン。」

シセルは深く落ち込んだ。もうリオーネを護れない。遠く手の届かない場所に行ってしまった…

私にもう少し力があったら、あなたの手を引き寄せられたのだろうか…

無力な自分が不甲斐ない…爵位さえ持たない自分が高貴な姫君に想いを寄せたとて叶うものではないが、せめてセオノアほどの肩書きがあれば、リオーネの隣に立つことくらいはできただろう…

「リオーネ…」

シセルはその名を呼び、想いを馳せた。

「無邪気な私の姫君…許されるものなら、今すぐ貴女のもとに…」


国王との謁見の日、セオノアはいつも着ている丈の長いチュニックではなく、短めの服を身につけていた。髪も一本に束ねて背中に下ろしている。

朝から服装や髪型について、リオーネと二人で相談ながら決めたのだった。

「なんだかいつもと雰囲気が違いますね。」

リオーネはセオノアを見上げ、感心しながら言った。

「とても素敵です。」

リオーネが率直に褒めるので、セオノアは嬉しくて仕方がなかった。

髪を束ねると軟弱な自分から少しだけ脱却した様な気持ちになる。

「ありがとう。こんな自分を久しぶりに見たわ。」

大きな鏡に映る自分とリオーネを見て、セオノアは目を細めた。リオーネはいつもの服装だが、並ぶ姿はまるで恋人同士の様だ。

従者として飾りひとつ身につけないリオーネだが、顔立ちは美しく、やはりその姿は少女そのものだった。

リオンを抱きしめたい…

強い衝動に駆られる自分に、セオノアは戸惑いを感じた。日増しに募るこの想いは、明らかに「もう一人の自分」のものだからだ。

封をしなければ…

セオノアは自分を戒めた。永久にリオンを失わないために。

その後間も無く使者が現れ、セオノアは一人部屋を後にした。


「お初にお目にかかります国王陛下。モガートの子、セオノア・アノックと申します。」

玉座に座るマルセルを前にして跪き、セオノアが首を垂れる。

「よう来た、アノック卿。」

マルセルは静かに言った。

「此度の仕事、大いに感銘を受けた。褒めてつかわすぞ。」

セオノアは顔を上げ、マルセルを見つめた。冷徹な紺碧の瞳が差し向けられている。

「お気に召していただき、光栄にございます。」

うむ…と頷いたマルセルは、足を組んで「実はの…」と切り出した。

「あの絵画が素晴らしいのは事実だが、ちと気になる点があっての…それでそなたを呼んだのだ。」

「気になる点…でございますか?」

セオノアの緊張が高まった。鼓動が速まる…

「かつて余が世話になった一族に、珍しい瞳の色の者達がいた。その菫色の目

は子々孫々に受け継がれていたが、現在は唯二人だけになったと聞く…」

マルセルは僅かに身を乗り出し、セオノアを凝視した。

「あの絵の乙女は、余の記憶にある者によく似ている…気高くも美しかったアンテローゼ・ブランピエールに…」

「ブランピエール…」

セオノアは呟いた。

「答えよ…あの乙女は誰ぞ。余の知る限り、該当する者はペリエ男爵の妻とその娘だけ…その二人のいずれかが、そなたにあの絵を描かせたのか?」

意外な話だった。マルセルは単にあの絵に興味を惹かれたのではなかった。

「…申し上げます。」セオノアは言った。

「件の者は私が想像で描いたもの…実在の人物ではありません。」

「そなたの偶像だと…そう申すのか?」

「はい。」

マルセルは唸り、沈黙した。幼き日に慕っていたアンテローゼ…あの絵を見た時、忘れかけていた彼女との思い出が蘇った。気高く美しく、そして誰よりも優しい貴婦人だった。

「偽りを言うものではないぞ、アノック卿。」

セオノアの背後から声が聞こえた。マルセルが視線を移し、セオノアも振り返る。

「リオン⁉︎」

セオノアは声をあげた。そこにはリオーネが立っていた。隣には立派な身なりの人物が並んでおり、ゆっくりと歩み寄って来る。

「フォルト…何用だ」

マルセルは不審な表情を浮かべた。

「言うに及ばず…陛下のご懸念を払拭しに参りました。」

フォルトは不敵な笑みを浮かべて言った。

「どう言う意味だ…」

マルセルは言いながら後方にいるリオーネを凝視した。そして、その瞳を覗き込むと「ほう…」と声を漏らした。

「名はなんという?」マルセルは問うた。

リオーネは我に返り、すぐにその場で跪いた。

「リオーネ・ド・アンペリエールと申します。」

「やはりな…そなた、漆黒の狼の娘であろう?」

「はい、陛下。」

マルセルは口角を上げた。ユーリ・ド・バスティオン似の黒髪…ブランピエール特有の瞳…アンテローゼを思わせる面差し…この娘はその全てを受け継いでいる…

「アノック卿の言うとおり、そなたが絵画の素材になった事実は無いか?」

フォルトがリオーネに問いただした。

「ありません。セオ様…いえ、アノック卿の従者としてしばらく仕えてはおりましたが、その様なことは一度も。」

「従者?」マルセルは 眉根を寄せた。

「そなたが従者として仕えていたと言うのか?」

「はい。父に我儘を言い 、修練に出させて頂きました。」

「どうも…合点がいかぬぞ…」

不可思議な顔のマルセルに、フォルトが含み笑いをした。

「陛下、その訳は後にて私からご説明致します。それよりも…」

フォルトはセオノアに視線を移した。

「アノック子爵、リオーネは今日より私の保護下となった。これより先は男爵家の姫として私の城で暮らすことになる。今日までご苦労であった。」

セオノアは衝撃を受けてフォルトを見上げた。横にいるリオーネは複雑な表情で俯いている。

「私がリオーネを預かる理由は、そなたが描いた絵がリオーネに酷似しているからだ。優れた絵画ゆえ没することはせぬが、観る者によっては邪な感情を抱くやも知れぬ。それは自覚しておろうな?」

「…はい。」

セオノアは力なく答えた。認めざる得ない…私の中にある欲望が、あの絵を描かせたのだから…

「来たる日までリオーネが公に出ることはない。実像がないと知れば、観衆の興味も薄れ、いずれは噂も消えよう…」

フォルトはリオーネの背に軽く手を添えると、促した。

「別れを言うが良い…リオーネ。」

リオーネは立ち上がり、セオノアに向かって言った。

「セオ様…どうかお身体を大切に…お酒は…あまり飲まないで下さいね。」

「リオン…」

「約束です。」

リオーネは寂しそうに言った。今にも泣きそうだ。

あまりのことに、セオノアは何も答えることができなかった。 言葉が見つからない…ありえない…こんなかたちでリオンを失うなんて…

「アノック子爵。」

リオーネは狼狽しているセオノアに近づき、その頬に口づけをした。

「私を受け入れてくれたこと、感謝しています。ありがとう。」

姫君に戻ったリオーネは、毅然としてセオノアに別れを告げた。

「…リオーネ様」

セオノアは涙を流しながらも頷き、「お約束します。」と答えた。

「もう下がって良い、アノック卿。褒美を受け取るが良いぞ。」

二人に構わず、マルセルは容赦なく命じた。

寂しげなセオノアの背中をリオーネは泣きながら見送った。できれば成人を迎えるまで仕え支えたかった。同じく背負った宿命を、もっと一緒に乗り越えたかった…

「ごめんなさい…セオ様。」

リオーネは心から謝った。

「…さて、フォルト。」マルセルが言った。

「事情を説明せよ。」


やがて王宮で披露された絵画が話題となり、宮廷内に波紋が広がった。

噂の焦点は肖像画の乙女が誰かという部分だったが、ブランピエール唯一の子孫であるシャリナが公に姿を見せたことがないため、「菫色の瞳」の存在に気づく者は誰一人はいなかった。


「ユーリ、今日はアノック卿がおいでになるのでしょう?」

シャリナは編み物をしながらユーリに言った。

「いろいろあったけれど、あの方のお陰でリオーネはとても成長したのだから、私からもお礼を言いたいわ。」

ユーリは微笑みながら目を眇めた。シャリナの優しさが愛おしい。

「子爵は謝罪に来るつもりらしいぞ。シセルの報告では、精神がかなり参っているということだ。」

「まあ...」シャリナは手を止めた。

「それはお気の毒だわ。無理を言ってお願いしたのは私たちの方なのに…」

「うむ、絵を国王に売ったのは父親で、セオノアは被害者だとリオーネも必死に訴えて来たしな…」

二人は見つめ合って笑った。リオーネから届いた手紙は長文で、今までの経緯が全て書かれていた。自分の気持ちより、シセルやセオノアには罪がないとばかりの内容だったのだ。

「あの子ったら、少しは自分の心配をしたら良いのに…」

シャリナのぼやきに、ユーリはほくそ笑んだ。

「それだけ余裕があるということだ。」

「そうだと良いけれど…」

シャリナはため息をつき、また編み物を再開した。

馬に乗ったセオノアが門を潜り現れた時、シセルはその姿に違和感を感じた。

セオノアが騎乗しているのを見たのも初めてだったが、なにより長かった髪が短く切られていたせいだ。

「ようこそアノック卿。少し見ないうちに随分と変わられた様だ。」

シセルの言葉に、セオノアは渋面を見せた。

「リオーネを真似たのよ…中身は何も変わってないわ。」

二人はユーリの待っている執務室に入り、セオノアは初めてリオーネの父との対面を果たした。男爵は大柄な体格で威厳ある人物だったが、どことなくリオーネの面影があると思った。

「この度のこと…大変申し訳ありませんでした。」

セオノアはいきなり跪き、謝罪した。

「どのような罰も覚悟しております…男爵様。」

ユーリは項垂れるセオノアを見て唸った。痩せ細った体が痛々しい…

リオーネが過剰に心配する訳だ…まったくシセルといいこの子爵といい、どれほど落胆しているんだ…

「跪かんで良い…アノック子爵。」ユーリは言った。

「すべてリオーネから聞き及んでいる…罪の事よりそなたの健康について気遣えと娘に念を押されているのだ。無理をするな。」

「リオーネ様に?」

「ああ。案じておったぞ…それはもう細かく指示が書かれた手紙をよこしてな。」

「リオン…」

セオノアは胸がいっぱいになった。涙が溢れて止まらない…

「そこで、そなたに対する処分だが…」

ユーリは言った。

「妻の手伝いを命じる。シャリ ナがそなたをこき使いたいと言って聞かないのだ。週に一度はこの城に通い、任務に従事するがいい。」

「...まあ、ユーリ、聞き捨てならないわ。」

扉が開き、現れたシャリナが文句を言った。

「私がいつこき使いたいだなんて言った…?失礼な人ね。」

シャリナは跪いたままのセオノアに向き直り、右手を差し出した。

「リオーネの母です。アノック卿…娘がお世話になったわね。とても感謝しています。」

セオノアはシャリナの美しさに恍惚とした後、すぐにその手を取った。

「光栄です。奥方様…」

「貴方がきっと寂しがっているから、週に一度は食事に誘えと…もう、ユーリも私もあの子の従者の様よ。」

シャリナは笑った。ユーリも釣られて笑っている。

ああ、なんて素敵な二人なんだろう…

セオノアは感動した。羨ましい…こんな光景は見たこともない。父も母もいつも冷たく不機嫌で、笑顔を見せたことなど一度も無かった…

涙を流しているセオノアを見て、シャリナは優しく微笑みかけた。

「リオーネの言うとおりね。貴方には家族が必要だわ…」

リオーネの優しさが伝わって来る…本当に成長したのね。

「それで…受諾して下さるかしら、アノック卿?」

「勿論です。喜んでお受け致します、奥方様」

セオノアは頷いた。

「良かった…さあ、お菓子の用意をしているの。大広間に来て下さいね。…あ、シセルもよ。」

そう言い残して、シャリナはそそくさと部屋を出て言った。

「ああ言ってる…すぐに行くと良い。」

ユーリも言い、セオノアを促した。

「ありがとうございます。」

セオノアが部屋を出て行った後、シセルも一礼して後を追おうとしたが、ユーリによって呼び止められた。

「近いうちにシュベール城へ行く。供はお前と数名いれば良い。準備を整えておけ。」

「シュベール城…」

シセルは目を見開いた。パルティアーノ公爵の居城、リオーネの居る場所だ。

「娘に会いに行くぞ。今のうちにな…」

「早速準備します。」

シセルは笑顔で頷いた。


第2部に続く

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