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美少女を救った謝礼といえば

「カネニシ殿、街が見えましたぞ。」


「おぉ!……って言っても、まだ壁しか見えてないですけど。」


伯爵令嬢であるモニカさんの一行に同道すること約2時間。

フォンテーヌ伯爵の治める街が見えた。

某ジャイアントな漫画に出てくるような巨大な壁がそそり立っている。


「ぬっはっは!なかなか立派な外壁でしょう!」


「我が街は王国西部の流通の要であり、周辺には魔物の生息する森等もある為、大規模な防壁が必要なのです。」


モニカさんが誇らしげに説明してくれた。


「確かに、ここに来るまでにも何度か魔物を見かけましたね。」


「カネニシ様のお陰で無事に街に辿り着く事ができました。厚くお礼申し上げます。」


「いえいえ、お気になさらないで下さい。」




モニカさんは伯爵令嬢であるが、王都の高等学院に通っているらしい。

長期休暇に入った為、実家に帰ろうとしていたところで、運悪くワイバーンに襲撃されたとの事だ。

しかも、あのワイバーンは通常より体が大きく、生体となって長く生きた個体なのだろうと推測される。


当初は15人程の護衛騎士がいたのだが、まともな準備なしに太刀打ちできないと判断し、あの5人で森に逃げ込もうとしていたのだとか。

平地で逃げ惑うよりは、木々の生い茂る森の中の方が隠れやすいと判断したのだろう。


だが囮となった騎士達もやられてしまい、モニカさん達も森に入る前に追いつかれそうになったところで、俺が間に合った。

モニカさんは囮となって自分を流してくれた忠義の騎士達を想い、涙を流していた。


それからワイバーンに襲撃された地点に戻り、殉死した騎士達の遺体と遺品を回収して街に向かったのだ。




「カネニシ様がいらっしゃらなければ私達は間違いなく死んでいました。それに、カネニシ様が護衛として同道して下さったお陰で、彼らの遺体を回収する余裕もできました。」


「その通りです。隊長であるにも関わらず不甲斐ない私のせいで彼らを死なせてしまったが、カネニシ殿のお陰で彼らを弔ってやる事ができる。」


「私の傷も治していただきました。カネニシ様は命の恩人です。」


モニカさん、ローラントさん、ミレアさんが口々に褒めそやす。

ここまで言われると普通に恥ずかしい。

いや、もうやめて下さい。


「お礼はもう結構ですよ。冒険者ギルドに推薦していただけるだけで十分です。」


「それはこの度の護衛役の報酬です。私達の命を救って下さった事のお礼は必ず致します。」


「上級ポーションのお礼は私とミレアからさせていただきます。」


「そうですね、お父様。」


どうやらそういう事になったようだ。

まぁお金とかなら貰っておいて損はないし、良いか。







街に着いてすぐ、門を守っていた騎士達にローラントさんがワイバーン襲撃の件を軽く話し、城に使いを出してもらった。


「さぁ、それでは私達も向かいましょうか。お兄様が待っておられるはずです。」


「お兄さん?」


「私の父である現フォンテーヌ伯は財政大臣でもたりますので、基本的に王都におられるのです。街を直接的に治めていらっしゃるのは、代官のお兄様なのです。」


「へぇ、凄いんですね。」


財政大臣とかよくわかんないけど凄そう(小並感)

というわけでお城へ向かいました。





「君がモニカ達を助けてくれたという旅人か!私はフォンテーヌ伯爵代官、クライン・フォンテーヌだ。」


「アキヒト・カネニシです。よろしくお願いします。」


モニカさんと同じ明るい茶髪と青い瞳。

ハリウッドスターのようなイケメンさんと握手をする。


「カネニシ殿だな。我が妹を救っていただき、感謝する。」


「いえ、そんな大した事はしていませんから。」


「ワイバーンの単独討伐が大した事ではない、と?見かけに依らず豪胆なのだな。」


え、そう捉えるの?


「それだけではありません、お兄様。カネニシ様は、ワイバーンの毒に冒され瀕死となっていたミレアの為に、上級のライフポーションを譲って下さったのです。」


「なんと!?そのような事が!?」


「ポーションのお礼はローラントとミレアが直接するそうです。なので私からは、ワイバーンから助けて下さった事へのお礼をしたいと思っております。」


「うむ、それも道理だな。」


「あの、本当そんな大したものじゃなくて結構ですよ…?」


むしろ何か凄い物とか貰って使い道無かったりしたら申し訳ないし。


「ワイバーンを単独で討伐する力、見知らぬ人間に上級ポーションを譲る寛容さ、そして己の功績を誇らぬ謙虚さ……カネニシ殿は聖人か?」


なんでやねん。


「いや、違いますからね。僕はただのサラリーマンですから。」


「サラリーマンとは何だ?カネニシ殿の国では戦士をそう呼ぶのか?」


まず僕=戦士っていう図式をクリアしようか。

ワイバーンを倒したのはスキルの力だから。

僕はただ殴っただけだから。



「まぁ、企業戦士とかいうのであながち間違いではないですかね…?」


「キギョウ戦士……きっと、カネニシ殿のように勇敢で気高い方々なのでしょうな。」


ローラントさんが唸るように頷いているが、正すのも面倒なので流す事にした。

それに、飛び込み営業をする勇気や残業にも滅私奉公で耐えるタフネスは、確かに戦士といえるかもしれない。






応接室に案内された俺は、クラインさんと向かい合ってソファに座った。

クラインさんの横にはモニカさんが座っており、後ろにはローラントさんが控えている。


ミレアさんは念のために医者に体を見せに行った。

他のメイドさんが持ってきてくれた紅茶を口に含む。

異世界の紅茶がどんなものかとやや緊張したが、どうやら地球のものと大差ないようで安心した。


ちなみに僕は紅茶よりコーヒーが好きだし、コーヒーより緑茶が好きだけど、この世界にコーヒーや緑茶があるかはまだわからない。



「さて、改めて礼を言おう。我が妹達を救ってくれた事、亡くなった騎士達の遺体回収に協力してくれた事、フォンテーヌ伯爵代官として厚く御礼申し上げる。」


「そして私の従者であるミレアを救っていただいた事も含め、この度は本当にありがとうございましたわ。」


クラインさんとモニカさんが揃って頭を下げた。

ローラントさんもそれに倣って黙礼する。


「どういたしまして。モニカさん達が無事で良かったです。」


「うむ。早速だが謝礼の話をさせてもらおう。まずは街までの護衛報酬だが、これはフォンテーヌ伯爵の名において冒険者ギルドへの推薦をさせてもらう。」


「はい、ありがとうございます。」


とりあえずは要求通りだね。



「次に、ワイバーンを討伐しモニカ達を救出してくれた礼として、金貨10枚を差し上げよう。」


1000万円!?


「そ、そんなにいただけるのですか?」


「伯爵令嬢の命を救ったのだ。これくらいは妥当だろう。」


貴族って凄い……いや、フォンテーヌ伯は財政大臣らしいし、普通の貴族より裕福なのかもしれないな。


「更に、我が城へいつでも入城できるよう通達しておこう。何かあれば遠慮なく来てくれたまえ。」


「そんな事言って良いんですか?」


僕はただのサラリーマンですよ。

あ、そろそろ冒険者になるのか。


「構わん。正直に言えば、ワイバーンを単独討伐してしまうような猛者と親密な関係を築く事ができればという下心もある。」


それ正直に言っちゃうんだ。

まぁコソコソご機嫌取りされるより気持ち良いけどね。



「なんなら暫くはこの城で暮らさないか?対外的には食客という事にして。」


「それは良いご提案ですわ、お兄様!!」


クラインさんの提案にモニカさんが瞳をキラキラと輝かせて何度も頷く。


「いえ、流石にそれは……」


「宿泊するアテでもあるのか?」


「適当に宿でも取ろうかと思っていますが。」


「ならばうちでも良いではないか。ついでに我が家の騎士達を鍛えてくれると嬉しいのだがな。報酬は別個用意するぞ?」


「しかし……」


「カネニシ様はお嫌ですか…?」


何でそんなウルウルした目で見るの?

僕が悪いことしてるみたいじゃないか。


「悪い話ではないと思うぞ?カネニシ殿もこの国にはまだ不慣れなのだろう?色々と教えられるものもあると思うが。」


「カネニシ様……」


うぅ……そんな風に言われると……

いや、まぁそもそも断る理由も特にないんだけどね。

ただ現代日本人として、家に泊まっていけよ的に言われると反射的に断るポーズをしちゃうだけで。


「……なら、お言葉に甘えて、お世話になります。」


「おぉ、そうか!」


「やった!ありがとうございます!」


お礼を言うのは僕の方なんだけどな。




「それでは最後に、上級ポーションの謝礼についてだね。ローラント。」


「はい。それでは私から……」


それまで黙っていたローラントさんが口を開く。

そして謝礼について話そうとしたところで、コンコンと扉がノックされた。


「入りたまえ。」


「失礼致します。」


クラインさんの促しに応じて入室したのは、ミレアさんであった。


「ミレア、お医者様は何と?」


モニカさんの問いに、ミレアさんはにっこりと笑った。


「健康体そのものだと仰っておりました。ご心配いただきありがとうございます。」


「それは良かったですわ…」


「ミレア、いまちょうどポーションの謝礼についてカネニシ殿に話そうとしていたところだ。」


「まぁ、左様ですかお父様。それでは…?」


「うむ、お前は本当に良いのだな?」


「はい。カネニシ様さえ宜しければ……」


ミレアさんが頬を赤らめてチラチラと僕を見ている。

え、何の話?

首を傾げる僕に、ローラントさんが向き直った。



「先程の謝礼の話だが……ときにカネニシ殿。貴殿に伴侶やそれに類する者はおられるのかな?」


伴侶……あぁ、お嫁さんか。

嫁か付き合っている人はいるのかって事だよね。


「いえ、生憎そういう相手はいませんが。」


何で急に?


「そうですか。では……」


話の先を悟ったのか、クラインさんがやや驚きつつもニヤニヤと笑い、モニカさんは微妙に不機嫌そうな顔をする。

そしてミレアさんは相変わらず顔を赤くしていた。




「カネニシ殿、もし良ければミレアを娶っていただけませんかな?」


「………え?」

アキヒト

黒髪のショートと黒の瞳


クライン

明るい茶髪のセミロングと青の瞳


モニカ

明るい茶髪のロングと青の瞳


ローラント

深い赤髪のベリーショートと緑の瞳


ミレア

深い赤髪のセミロングと黄緑の瞳

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