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身体強化さんは凄い

「うぉっ、眩し!」


強烈な白光に目を瞑る。

やがて光が収まったのを感じて目を開いた。


「何だったんだ…って………うゎーお……」


眼前に広がる草原。

見渡せば遠くに山々の見えるところもある。


「ここが異世界か……少なくとも日本でこんな景色は見た事ないな。」


ぱっと見た感じ、人が通るような道らしい道も見えない。

本当にただの草原だ。

ここがどこらへんなのか全くわからないが、ひとまずは神様に頂いたリュックの中身を確認しよう。


「ふむふむ…これは水筒か……こっちはランタンだな。この瓶、何が入ってるんだろ。緑とか紫とか、色んな色の液体が入ってるみたいだけど。」


背中に収まらない大きいリュックを地面に置いて中を確かめると、何となく見慣れた形の物もあれば、よくわからない物まで色々と入っていた。


「うーん、これどうすれば良いんだろう。」


暫く頭を捻った後、ようやく解決策が思い浮かんだ。

というか、折角手に入れた力について思い出したのだ。


「そうだ、鑑定があったじゃないか。」


むしろ何ですぐに思い出さなかったのか。

僕はすぐに鑑定を使ってそれぞれの情報を確かめていった。







『魔道具:水筒』

とても美味しいミネラルウォーターが入っている。

魔力を込めると中身が補充される。

軍人が使ってそうな亀の甲羅のような形をしている。


『魔道具:ランタン』

光を発して周囲を照らす。

消費魔力量に応じて光の強弱の調整が可能。

大きすぎず持ち運びしやすい大きさ。


『ライフポーション』各色5個→計15個

負傷した部位にかけると回復する。

また、飲む事で体力を回復させる事も可能。

色によって等級が変わる。

緑色→下級。切り傷や打撲等を回復する。

青緑色→中級。深い切り傷や骨折等を素早く回復する。

青色→上級。内臓の損傷や複雑な骨折、大きな怪我等を瞬時に回復する。

また、手足が切り離されてもすぐに接着してかければ繋げる事が可能。


『マジックポーション』各色5個→計15個

飲むと魔力が回復する。

色によって等級が変わる。

紫色→下級。一般的な魔法使いの魔力量の半分程を回復する。

赤紫色→中級。熟練の魔法使いの魔力量の七割程を素早く回復する。

赤色→上級。一流の魔法使いの魔力量の十割を瞬時に回復する。


『地図』

この周辺の大まかな地図らしく、有難いことに現在地まで記されている。

おそらく神様の手製。


『本:異世界のススメ』

チュートリアル的なのが色々書いてある。

おそらく神様の手製。


『旅人の服一式』

普通の旅人っぽい服や下着、靴など。

全裸である事を忘れていた。

勿論すぐに着用した。


『お金』各種5枚→計5055500円相当

異世界の通貨。

金貨→1枚で100万円相当。

銀貨→1枚で1万円相当。

大銅貨→1枚で1000相当。

銅貨→1枚で100相当。


『魔道具:ミスリルダガー』

ミスリルという鉱物で作られた短剣。

魔力を込めると切れ味が増す。


『魔道具:ライター』

魔力を込めると火が出る。




これらの物が入っていた。


水筒やライター、そしてお金などは本当に嬉しかった。

それに『異世界のススメ』があれば、今後どういう行動をすれば良いか、ある程度わかるだろう。



『異世界のススメ』をパラパラとめくり、まず目に入った魔力の使い方というページを読む。

結論から言うと、魔力の操作は簡単にできた。

まず最初に書いてあったのは、自分の魔力を感じ取りましょう、というものだった。

これは試してすぐにできた。

身体の中に意識を向けた瞬間、それまで感じた事のない違和感があったからだ。


これが魔力か、と思った数分後。

魔力の操作自体も、特に苦戦する事なくできるようになった。

血流を操作しろなどと言われても不可能だが、魔力は簡単に動かす事ができた。

これが異世界人補正なのか、誰でもこれくらい簡単なのかはわからないが、これで魔道具という不思議道具を使えるようになったのだ。








「さて、まずは街に向かおう。」


『異世界のススメ』に従って街を目指す。

神様にいただいた地図から現在地はわかるが、残念なことに方角がわからない。

風向きやら太陽の向きやらで方角を確かめるスキルは僕にはない。

さてどうしたものか、と考えた末、僕は強引な手段に出ることにした。


「よっ!………お、おぉ…すっご……」


思いきりジャンプして、上空から周辺の地形を把握しようとしたのだ。

頭いかれてんじゃないかと疑われそうな発想だが、今の僕には"できる"という確信があった。

これも身体強化スキルの為せる技なのだろう。

事実、僕の身体はただのジャンプで30mほど浮いていた。


「あっちがこの山で、こっちがこの山の方かな?」


上空で周辺の地形を地図と照らし合わせる。

だがすぐに僕の身体は重力に従って降下していった。

ちなみに僕は高い所や遊園地なんかの絶叫系は苦手なタイプだ。

それなのに30m上空からの紐なしバンジーという状況で冷静でいられるのは、間違いなく泰然自若スキルのお陰であった。


「怖くない訳じゃないけど、何故か冷静でいられるというか……スキルって不思議だなぁ。」


などと言いながら落下していき、地面とぶつかる。

いや、その瞬間に見事な身体操作で衝撃を下に逃した。

地面からすっごい鈍い音がした。

だけど僕の身体にダメージはない。

やっぱりスキルって凄いや。

神様ありがとうございます。



「よし、もう一回だ。それっ!」


2度目のジャンプ。


「あっちが森……って事は西か。んで、こっちの山が東。街は北西だからあっちか。」


なんとか進むべき道がわかったぞ。

太陽の高さ的に今は真っ昼間だ。

夕方には街に着きたい。

地図を見る限り、車で2時間くらいの距離に街があるようだ。

今の僕はそれこそ車以上のスピードで走れるから、何もなければ夕方前には辿り着くだろう。


「よーし、久々の運動だ。走るぞ!」


社会人になってからすっかり運動から離れてしまったが、中高生の頃はバスケ部に所属していたし、大学でもバスケサークルに入っていた。

走るのは嫌いではない。

便利道具等が詰め込まれたリュックサックを担ぎ、まだ見ぬ街に向かって、最初の一歩を踏み込んだ。








走り始めて1時間半ほどが経過した。

たまにジャンプ&地図チェックを挟みつつ、探知スキルを使いながらひたすら走る。

久々の運動で、しかもこれだけ走りながらも汗一つかかないし疲れもない。

探知スキルによって動物や魔物であろう反応をキャッチする事もあったが、ひとまずは街に向かうのを優先し、全て無視していた。


「……ん、何だ?」


だが、今回の反応は無視できそうにないものであった。


「これ、人…だよな。」


おそらくは人間であろう5つの反応が、こちらに向かって近づいてきている。

ここで待つか、逃げるか隠れるか、こちらから向かうか。

選択肢を思い浮かべる。

逃げ隠れとは言っても、隠れられそうなところといえば左手やや先に見える森くらいしかない。

そもそも隠れる必要もない。


という訳で待つか向かうかなのだが…と考えていたところで、その5人の後方に、こちらに向かっているもう1つの反応をキャッチした。

5人と比べるとずっと速い速度で向かってきている。

しかもその反応は、魔物のものであった。


「………なるほど。魔物に追われているのか。」


ややあってそう理解した時には、魔物が5人に追い付きつつあった。

考える間もなく僕は駆け出す。

それも全速力で。




地面を踏む度に軽く陥没していく。

今、僕はまさに風となっていた。

5人+1匹の反応があっという間に近くなる。

そして、その姿をこの目で捉えた。


「あれは…竜?いや、それにしては何か違うような?」


RPGなどのゲームをしていたのなんて中学生までの話だ。

その魔物がなんとなく竜っぽいな、というくらいしか咄嗟には判別できなかった。

あぁ、翼があるから速かったんだ、と思う程度だ。


竜(仮)から逃げているのは、3匹の馬に乗った人達。

それぞれに騎士のような甲冑を着た人達が乗っており、3匹の内2匹には騎士(仮)と一緒に女性が乗っていた。

ちょっと豪奢な服を着たお嬢様的な人と、メイドさんっぽい人だ。


騎士達が僕に気付いて身振り手振りしながら叫んでいる。

どうやら逃げろと言っているらしい。

その後ろから竜(仮)の甲高い鳴き声が聞こえてきた。


「異世界で初戦の魔物が竜(仮)とか……チュートリアルにしては厳しいんじゃないかな。」


そんな事をぼやきながらも、僕は速度を落とす事なく駆ける。

竜(仮)がこの世界ではチュートリアルに最適な雑魚キャラであるという事はないはずだ。

もしそうであればあの騎士(仮)達が逃げているのが不自然だから。


つまり、あの竜(仮)はほぼ間違いなく強敵なのだ。

しかし、僕の足は止まらない。

身体強化スキルのお陰か泰然自若スキルの影響か、はたまた異世界に来てテンションが上がっているのか。


いずれにせよ、負ける気はしなかった。

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