03~04:ただ逃げ続けて、それで何を得るのだろうか。
03
咲いたと思った桜は、気がつけば枯れていた。
枯れていないのだろうけど、枯れていたのだろう。
毎日通う通学路。
俺は、自分はそんなどことなく寂しい道を通っていた。
時刻、8時5分。
ここから45分程度かかる学校なのだから、普通なら大遅刻。しかし今のご時世、この時刻は遅刻ではないのである。
そう――時差登校である。
すっかり慣れたこの時間帯の登校。今となってはもう前に戻りたくない。
なぜか、それはまあさっせるだろう。察せない? 察せ。とにかく説明が面倒だ。
まあ流行ってる某ウイルスのため、と言っておこうか。
「ふぅ……」
さて、なんであんな夢を見たのだろうか。御蔭で目覚めが悪い。
恋というものはこれ程に邪魔だ。他のことを考えていたはずなのに、いつの間にか彼女のことを考えている。
「6番線、ドアが閉まります。ご注意下さい」
しかし残念なことに、とても残念なことにそうしていると心地が良いのだ。だから何回も考えてしまう。そして気がついたら、駅。もうすっかり見慣れてしまった駅。
ああ、一年生の時。どれ程の希望を抱いてここに来たのだろうか。この駅が、どこまで素晴らしく見えたか。
今となっては映像のように、それは形容することしか出来ない。
それにしては、空いている。
気持ちがいいくらいに空いている。
――取り敢えず、1号車に移動しよう。
そこは学校の最寄り駅の、西口に近い。
4
「おお、よ。霜鳥」
1号車にいたのは、自分の友人のみゅくだった。
「あ、おはよう。みゅく」
座ろうと思っていたが、彼は立っている。ここは立つのが礼儀というものだろう。
俺はそう思い、手すりにつかまる。
何を話そうか……色々なことを考えるが、そこでまた昨日の……今日の夢が頭を過ぎる。
あーもう、何でだよ。
確かに地味に初めて彼女が夢に出た。
確かに幸せだった。
だから何だ?
答えは何も返ってこないまま、時は過ぎる。
「そういえばさ~」
流石に顔には出なかったらしい。みゅくが話し始める。
その事に集中しようとすると、自然と今日の夢を忘れることが出来た。
なぜ忘れようとしたか、それは自分でも分からない。
多分、終わらせたいこのもどかしさから、退避したかったのでは無いかと思う。