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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

柘榴の木の下に

作者: どんC

「アパートから電車に乗る駅の途中に古い洋館があってね。そこに柘榴ざくろの木があって、美味しそうな実がなってるんだ」


 弁当をつつきながら鹿子(かのこ)は話を続ける。


「あんまり美味しそうだから、その家の人に柘榴を売って下さいって言ったの」


「ほんで断られたのか?」


 (かえで)が尋ねる。

 鹿子はこくんと頷いた。


「五十代ぐらいのおじさんが出てきて。親戚にあげるから駄目だって」


「それは残念だな」


 楓も残念そうに言う。


「絶対~楓ちゃんも咲希(さき)ちゃんも好きだと思う」


「二十歳過ぎてちゃん付けは止めてよ~」


 私は鹿子の頭を撫でながら、盗むんじゃないよと念をおす。


「うん。泥棒はしないよ」


 でもとっても美味しそうなの。

 とブツブツ言ってる。

 私達三人は小さな設計事務所に勤めている。

 鹿子と楓と私は仲良しで休みの日には、私のアパートに集まって食事会やDVDを見たりして、休みの日を過ごしている。


 その日もお気に入りのDVDを見るために私のアパートに集まった。


「えへへへ♥」


 その日 鹿子が差し出したのは何時ものお菓子ではなく大きな柘榴だった。


「どうしたの?これ前に言ってた柘榴?買ったの?」


「落ちてたの。あのままだったら車に引かれて潰れちゃう。だから拾ってきたの」


 私は鹿子を睨む。


「あっ!! ちゃんと家の人に言ったよ。でも留守だったから封筒にお金千円入れてポストに入れておいたよ。お金払ったんだから泥棒じゃないよ」


 私が何か言いかけると楓が、まあまあとなだめる。


「美味しそうな柘榴じゃないか」


「ねっねっそう思うでしょう」


「食べよう♥食べよう♥」


「お皿だして~」


 二人はそうそうにスタンばっている。

 私は諦めて柘榴を切り皿にスプーンと柘榴を置いて二人に差し出した。


「うわ~本当に美味しい‼ 」


「ねっねっ美味しいでしょ」


「美味しい。たぶんこれ日本産柘榴じゃなくてアメリカのカリホルニア産じゃないかな?」


「アメリカ産?」


「日本の柘榴はもっと小さいし酸味がある。こんなに大きくて甘くない」


「そうなんだ。咲希ちゃんは物知りだね~」


「それより美味しい柘榴も食べたし、今日は何を見るの?」


「ふっふっふっ今日はお気に入りの酩探偵シリーズ第13巻『酩探偵は二度死ぬ』だ~怪盗と崖から落ち死んだはずの酩探偵復活だ~」


「詐欺じゃない?」


「あるある詐欺探偵だ~‼ 」


「五月蝿い‼ 読者の愛で探偵は何度でも甦るんだよ」    


「咲希ちゃんて頭良いけど、DVDの趣味がいまいちだよね」


「諦めろ鹿子。昔から男とDVDの趣味は悪かった」


「五月蝿い‼ 見るの?見ないの?」


「ジャイアンのコンサート的状況だな」


「笑えるから良いよ~」


 こうして何時もの様に私達三人の夜がふけていく。



 ****     *******     ******




「あれ?三人とも綺麗になった?」


 異変に気が付いたのは事務所に出入りしている山田さんだ。


「三人とも肌艶が良いけど。化粧変えた?」


「えっ?化粧は変えてないよ?」


「あれ?そう言えばこの頃、化粧ののり良いな~」


「そう言えば鹿子のニキビ消えてるし、楓のソバカスも消えてる、ついでに私の肌も艶々だ‼ 」



「うーん。化粧は変わらないし?柘榴食べたせい?」


「ああ。それだよ。柘榴はとっても女性に良いって言うよ」


「「「 柘榴 ‼ 凄い !!」」」


「詳しいんですね」


「田舎の神社に鬼子母神を奉っててね」


「鬼子母神?」


「若い子は知らないか。元は人食いの化け物だったけど。仏様に諭されて改心して子供の守り神になったんだよ。」


「あの…柘榴は何処に出て来るんですか?」


「ああ…柘榴は人肉の代わりに捧げられる様になったんだよね」


「うげ‼ 人肉ですか‼ 」


「何でも柘榴は人肉に味が似てるって俗説だ。柘榴の成分が女性の体に良いからじゃないか?」


 山田さんは笑って私が、出したお茶をすすった。




 その日の休日も何時もの様に私が料理して、鹿子がお菓子を楓がワインを持ってきた。

 DVDを見た後で鹿子が差し出した柘榴を。

 また落ちてたのかよ~と暗黙の了解で食べた。

 ワインを飲み過ぎたのか途中から記憶か無い。


 ふと 目が覚めると。

 ヤバイ‼ ワインの瓶が5本転がっている。


「あれ? 手が泥だらけ? 」


 鹿子も楓も起きたのかゴソゴソしてる。


「あ……私もだ」


「なんじゃこれ!! うわ~服も泥まみれ?酔っぱらって泥遊びでもしたか?」


「取り敢えず二人とも風呂に入りな。大きいから私のジャージ貸すよ」


「うん。ありがとう。服借りるね」


 私は二人を風呂場に追いやる。


 ガチャガチャと瓶やお菓子のゴミを片付ける。


「あ~テレビも附けっぱなし……」


 私がテレビを消そうとするとニュースが流れる。



『本日未明×××町三町目の須賀原薫すがわらかおるさん宅で殺人事件が……』



「ちょっと‼ 鹿子‼」


「なに?咲希ちゃん?大きな声出して」


「ここあんたが柘榴拾って来た家じゃない?」


「えっ‼ 本当だ‼ あのおじさん殺されたの?」


「「「……」」」


 私達は泥まみれの手を見ると、サクサク風呂に入った。



 テレビや新聞によると殺されたの甲野達也(こうのたつや)五十四歳。

 複数の人物に殴る蹴るなどの暴行によるショック死。

 おまけに庭の柘榴の木の根本が掘り返され、中から白骨死体が出てきた。

 その白骨死体は、須賀原薫さん27歳。

 あの洋館の持ち主で甲野に殺され家も財産も乗っ取られていた。

 須賀原薫さんは体が弱く引きこもりだったから近所の人も気が付かなかったらしい。

 甲野はタクシードライバーだった、生前から須賀原さんを病院に送迎していた。

 誰も不振に思わなかったのだ。



「あの事故物件買ったんだって?」


 二人にお弁当を届けに事務所にいた、私に山田さんは尋ねた。


「そうだよ~私達三人が、お金出しあって買ったんだ」


 数年して売られたあの洋館を私達が買った。

 古いが部屋数もあり、リホームして『 B&B 柘榴 』として開業した。

 主に私が切り盛りしている。

 鹿子と楓は設計事務所に勤めながら手伝ってくれている。

 三人で洋館の蔵を改装して住んでいる。

 これが結構お洒落なんだ。

 交通の便も良いから好評だ。

 私の料理も評判が良い。



「しかし三人とも綺麗になったな~なんか三つ子見たいに似てきたか?」


「化粧を同じにしたからかな(笑)」


「ああ…そうか?化粧のせいか」


 山田さんはウンウンと頷いている。



 今年も柘榴は豊作だ。

 暫く空き家になっていた時に私達は忍び込み、柘榴の世話をした。

 埋められた死体を掘り起こしたから、根っ子が傷んで枯れてしまうかと心配だったが。

 私達が世話おしたので、大丈夫だった。


 私達に何が起きたのか?


 分からない。


 噂によると指紋が見つかったが、何故か殺された須加原薫さんのものだったらしい。

 須加原さんが、化けて出たとネットで騒がれた。


 柘榴館は割と大きな庭で、雑草を刈っていた時に気が付いたが、小さな祠があった。

 どうやら鬼子母神のようだ。

 山田さんに頼んで直してもらった。

 私は祠に柘榴をお供えした。


 彼女の魂が安らかでありますように。




                        完





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 2018/4/15 『小説家になろう』 どんC

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

近藤咲希こんどうさき24歳

主人公。設計事務所に務める。休日に鹿子と楓と一緒にDVD見たり酒飲んだり楽しく過ごしている。

ちなみに彼女のお気に入り『酩探偵シリーズ』は、飲めば飲むほど名推理を披露する泥宵慎吾が、主人公である。ぶっちゃけホームズと酔拳のパロディ。

ちなみに彼女はジャージ愛好家。


廣川鹿子ひろかわかのこ23歳

設計事務所に務める咲希の同僚。

食いしん坊。この事件は彼女が柘榴を拾った事により起こる。


四条楓しじょうかえで24歳

設計事務に務める。咲希と鹿子の同僚。

男ぽい。なあなあ主義。


★山田さん

大工さん。サボってよく三人の事務所にいる。


須加原薫すがわらかおる享年27歳

病弱で虐めにあって引きこもり。甲野に殺される。

可哀想な人。


甲野達也こうのたつや54歳

薫を殺して財産を奪う。薫の祟りなのか?鬼子母神の祟りなのか?柘榴の祟りなのかよく分からんが殺された。



★B&B

ベット&ブレックファーストの略。宿泊と朝食を提供する安い宿。

洋館を改装してB&Bを始める。

注文があれば晩御飯も作る。日本の家庭料理に憧れる外人さんに好評。


★柘榴の木

もしかしてこいつがラスボスかもしれない。









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