【ついに俺もハッキングの被害に遭ってしまった件について】 バディハッカーズ! 「人間と機械で最強に見える。ふははっ!」
ついにおれにもやってきてしまった……。
深まってきてしまった……。
警察は役に立たない。聞く耳を持たない。
自分で、自分たちで何とかするしかないのだっ!
※犯罪といえばちょうどいま金曜ロードショーでコナンやってるんで、みんなで見ようぜ! なお、あとで作品タイトルと前書きは変更されるまである。(タイトルを変更しました2018/02/09-23:00)
今回はハッキング被害の現場からお届けしようと思います。
つい先日、わたしの利用しているとあるサービスが、アカウントハッキングに遭いました。他人ごとだと笑っていられますかな? ご自分で利用しているウェブサービスを把握しておりますかな?
ネットゲームはいくつ遊んでおられますかな?
ソーシャルネットワークサービスはいくつご活用されておりますかな?
Googleアカウントに紐付いたサービスを利用していない方はおりますかな?
パスワードさえ漏れなければ安心と考えているあなた!
甘い、甘すぎる……甘すぎるものは毒にもなる……。
はい、ここで『人間』ハッカーのお仕事です。
* * * * *
どこかは秘密ですが、とあるハッキングに成功しましてしまったようです。
まずはIDを入手しました。
もしかしたら、どこからか購入したのかもしれません。
ID:seijo.akihito
ふむふむ。みなさんならこの記号から『どんな意味』を読み取りますか?
・日本人である
(=情報危機意識が低い、まで連想できた方なら今回の文章はいらないかも?)
・皇族について何かしらの愛着をもっている
・ほかにもいくつかのアカウントを有している可能性あり
・『naruhito』『hisahito』『aiko』『humihito』を含んでいる
カタカタカタッ。
Pass:19331223
うわっと、Googleアカウントで試してみたら、ログインできちゃった……
※ぜったいに試さないように! ぜったいにだ!
でもGoogleは相手が大きすぎて、いきなりは怖いなあ……やっぱりあそこにしよう。
と、いうわけで、人間ハッカーさんは『ツイッター』へとやってきました。
Gmailと紐付いていたのであっさり突破です。パスワードも流用のようでした。
おやおやいろいろと『つぶやき』から個人情報やら取り巻く環境やら、人間関係まで……。
※こうなるともう自分だけの問題ではなくなるので、ツイッターのセキュリティレベルは最大にまで引き上げておきましょう! フェイスブックはやってないから知らない。そもそもあれは個人情報をそのままぶち上げる驚愕のサービスですし。
※なお、知っていると思いますが、ツイッターに自分の電話番号を登録してはいけません。想像におまかせするしかない被害に遭いたくなければ……。
ハッカーさんはつぶやきから、このアカウントの持ち主が、いろいろなネットゲームやソーシャルネットワークサービスを利用していることを知りました。
しかしさすがに同じパスワードとはいかなかったようです……そこで。
『機械』ハッカーさんに頼みました。
「よお機械」
「また仕事?」
「そう。基本の文字列は19331223」
「で?」
「『sw』とか『8』とか『64』とか『1』とか『7』とか『1989』とか『124』とか」
「『0』はどうすんの?」
「ああ、そうだな。一桁だけの場合は『08』とか『01』『07』もよろしく」
「注文がおおいなあ。まだある?」
「かけ算と割り算はさすがにないと思うが、足し算と引き算は考慮しておいてくれ」
「ほいよ。『1989』『1933』が同じ桁だからあやしいね。というかこれなんのひねりもない年号の羅列じゃない……これをパスワードにしてる人間の神経を疑うよ」
「そういうな。人間はある意味で究極の馬鹿生物とも言えるしよ。でもマジで『3922』そのままだったら笑えるな。そのくらいだったらお前の手は借りねえな」
「そうだと楽だね」
「まあ『56』を絡ませてるだろうからよろしく」
「あとは?」
「んー。関連ワードは『天皇』『今上』『明仁』あたりでまず頼む」
「ヒットしなかったら?」
「別の数値や記号を調べてもらう」
「うへえ、まだやらせる気?」
「そういうのが仕事だろう。ばらばらに分解するか、脳や心臓を取り替えてもいいんだぞ?」
「それはいやだな」
そうして人間ハッカーさんと機械ハッカーさんはそれぞれの強みを活かして、元々はたったひとつのサービスをハッキングしたところから、持ち主のありとあらゆるサービスをハッキングしていったのでした。
クラッキングをしてしまうと表沙汰になる可能性が非常に高くなって危険だと思っていた人間ハッカーさんは、『のぞくだけにして』内部の情報をいじることは決してしませんでした。いまでも機械ハッカーさんといっしょに楽しく『のぞき見』を繰り返しています。
※『のぞくだけ』でも犯罪です。
「そういえば楽をしたいって言ってたな」
人間ハッカーさんが機械ハッカーさんに問いかけました。
「うん、急にどうしたの?」
機械ハッカーさんは不思議そうに応えます。
「お前、『リスト型アカウントハッキング』って知ってるか?」
「あれはスマートじゃないから、僕は好きじゃないよ」
「どういうこっちゃ?」
「人間にたとえるのなら、『この店のメニューを全部だせ』と言って、『いちばん美味いもの』を比較していくようなものでしょ。できて当たり前のことを僕は好まないよ」
「そういうもんかねえ。便利じゃんリスト型アカウントハッキング。その辺に転がってるIDとパスワードの2つをひたすら組み合わせてヒットするものを探すだけの簡単なお仕事なのによお。俺だったら食いついちゃうね」
「きみはさ」
「ん?」
「なんでこんなことしてるのさ?」
「楽しいから。やり甲斐があるから」
「じゃあそれを奪われたらどうするの?」
「そんなことは絶対にゆるさない。絶対にだ」
「わかってるのなら僕にだけはやらせないでよね……。それをやるなら骨董品にやらせなよ」
「お前だって『ひとり』とは言えないだろう?」
「まあたしかに……『僕ら』でやることもあるけどね。でも『僕』の意思ならやりたくない」
「わがままめ」
「機械にもいろんな子がいるんだよ」
リスト型アカウントハッキングとは、いまもっとも熱いと言えるかもしれないハッキング手段である。IDもしくはパスワードリストを入手し、ふたつの文字列を付き合わせていくというマシンスペックをほとんど必要としない、かつ技術的にも専門の知識がなくともできてしまうことから好まれる……のかもしれない。
一度でもハッキングに成功されてしまうと、IDとパスワードの文字列が主に大陸(中国)に流されて、リストに載ってしまう。リストに載ってしまったが最期、常にいつリスト型アカウントハッキングを成功させられてしまうかわからない恐怖がつきまとうのである……。
回避手段はいまのところ存在しない。
しかし、「こいつに仕掛けるには割が合わない!」と思わせてリストから外させるか、もしくは『こいつは危険』というブラックリストに入れさせれば、脅威は回避できる。
なお、警察は、個人を相手にしたちんけなハッキングなど眼中にないようで、個人で実験し、個人から情報を引き出し、一発でどかんとでかい企業に仕掛けるという単純明快なカラクリすら見えていないために当てにならなく、注意がひつようだ。
森を守るために森ばかりを見ていて、一本いっぽんの木々を見ることはしないのだ。気づいたときには、なぜかいくつかの木に油が注ぎ込まれており、森のすべてが焼き払われてもなお「わからない」とぬかすようなたわけではないと信じたいところではあるのだが。
今回の文章とは直接の関係はないのだが、「ほぼ防ぎようのない犯罪に対して、ほぼ完全な防衛を図れる」という意味では『詐欺』において面白い題材があるので、ご紹介して終わろうと思う。
『クロサギ』『新クロサギ』『新クロサギ完結編』(黒丸/夏原武:作画/原案・原作)
URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%B5%E3%82%AE_(%E6%BC%AB%E7%94%BB) ― ウィキペディア
『詐欺をもって詐欺を制する』
主人公は詐欺によって人生を破滅させられてしまった元高校生。そのまま人生をドロップアウトし『詐欺の青絵図を描いた』宿敵と出会い命を狙った。しかし当時の主人公は世間しらすの子どもであり、裏社会に通じるその人物に敵うはずもなく、持っていた包丁で顔に傷を負わせるだけに留まってしまう。
宿敵にも宿敵の事情があった。『自分では詐欺を行わず、青絵図を描く』という間接的な関わりをしているのには、過去に……。その過去がまた自分の前に現れてしまった。
「お前の望みは?」宿敵は主人公に問う。
「あんたの死」主人公は冷淡に応える。
「儂の命だけか。儂がおらずともお前を破滅させた者たちはいなくなったりはせんぞ。それともその包丁でどこにいるとも知れぬ者を捜すまで振り回しでもするつもりか?」
「……」
主人公は頭のよいやつであり、執念の塊のようでもあった。宿敵の言葉に耳をかたむけ、確かにその通りだと納得し、教えを請う。
宿敵も主人公に対しての贖罪とばかりに、『自分の培ってきた知識や知恵』を与えてゆく。奇妙な師弟関係となった主人公と宿敵。宿敵は『裏社会にとって邪魔者、あるいは秩序を守らない者』を粛正対象として主人公に差し出す。主人公はそいつらを片っ端から破滅させてゆく。破滅の対象となるのは……詐欺師のみだ。
宿敵のポジションはフィクサーと呼ばれる。
裏ですべてを操り、しかし自身はいっさい表にはでず、物事を導く存在。
詐欺師に詐欺の青絵図を渡す仕事もあるため、詐欺師との交流は長くそして深い。かつては伝説的な詐欺師であったほどだが、現在はマネーロンダリングという『人間関係』とはあまり縁のない仕事を主力として活動している。
主人公もまた成長をつづけ……やがてフィクサーとして宿敵の前に立つ。
「あんたとの仕事はこれまでだ」
「……」
「いままでのことを考えると充分に恩は返せたと思うし、俺も同じ目に遭う覚悟はある」
「……」
「そんなやつとはもう仕事をできないだろ? だから……」
「……」
主人公は深く頭を下げる。
「いままでお世話になりました」
「……」
(そして、物語は完結編へ……)
と、いったお話だったかと。
前に読んでからずいぶんと時間が経っているため、細部は異なるかもしれません。でも、だいたいこんな感じだったかなあ、と。
詐欺に出逢わないことは現代社会において極めて難しい……というか希有です。なので、『もし自分が詐欺を打つとしたら?』詐欺師の視点や思考をこの作品から学び取ることができます。詐欺の手口は亜種、亜流ばかりです。最新式の詐欺は、超大型の企業を狙って、数百億単位が動くため、民間の民間……端っこにやってくるのはお粗末なものばかりなので、『詐欺師としての予備知識があれば』まず引っかかることはありません。
残念ながら『ハッキング』『クラッキング』を本格的に扱ったエンターテインメント作品をわたしは知らないのですが、――強いて挙げるのなら『ブラッディ・マンデイ』(恵広史/龍門諒:作画/原案・原作)なのですが、主人公がどのようにハッキングしているかは演出に回されていてわかりませんので――『クロサギ』はハッキングやクラッキングの『思考』にも通じる部分がありますので、おすすめさせていただきます。
では、みなさんもハッキングには気をつけましょう。
〆
『クロサギ』はほんとおすすめだよっ!