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俺の姉は先を往く。  作者: 夜叉神緋那
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片瀬聡美という存在。

「ごめんねー急に呼び出したりして」

「それは別にいいんですけど……何の用ですか」

 日曜日の昼下がり、俺は片瀬さんと市内の喫茶店にいた。

 当たり前だがデートではない。

 今朝突然片瀬さんに呼び出された。話があるとかで。

「話の前にとりあえず何か頼む?」

 俺としては話を進めたいんだが。

「……じゃあアイスコーヒーで」

 まだまだこの国は暑い。

「はーい了解!」

 30歳を超えて可愛い子の素振そぶりはやめた方がいいですよ、とは言えなかった。


 さて目の前でコーヒーを飲んでいる人こそ俺の担当編集者の片瀬聡美さん(31歳)なんだが様子がおかしい。浮かない顔でマドラーを見つめている。元々幸の薄そうな顔をしているのは間違いないのだが。

つかさ君」

「……何ですか」

 嫌な予感がする。


「加賀美咲と加賀司が実の姉弟であることを公表し、その上で二人でコラボ小説を書く、という案が出ているんだけどどう思う?」


「は?」

 突然何を言い出すんだこの人は。

「俺と姉さんでコラボ小説?」

 姉弟でラノベ作家だという事実が公になる。話題なら十分だな。

「そうコラボ小説。二人の作風はよく似ているから可能じゃないかって」

 間違いなく可能だろ。俺も姉もよくある学園ものを書いているからな。俺としてもコラボ小説()()は賛成だ。だが、

「姉さんはこの件についてどう思ってるんですか?」

 俺が姉の成功に乗っかるような形に見えなくもない。

 決して堂々と断りづらいから遠回しに断ろうとしている訳ではない。そう決してな。

「今よしこちゃんが加賀美先生と話し合ってるから、それ待ちかな」

 片瀬さんの言うよしこちゃんとは姉の担当編集者―佐倉井(さくらい)よしこさん(30歳)のことだ。片瀬さんとは同期らしい。

「絶対断られるでしょ」

 考えてみれば姉にメリットが少なすぎる。

 まだ加賀美咲が女性であると公表されていない。姉は自分の小説を女性が書いている、という先入観を酷く嫌うからだ。

 まぁ、加賀美咲という作者名で女性説が絶えないんだが。

「分からないよ?加賀美先生が司くんとコラボ小説を書きたいかも知れないじゃない。」

 不確定にも程がある。

 一体どこからそんな自信が湧いてくるんだ。

「姉さんに限ってそんなことないです。」

「へぇ()()()()()ねぇ」

 発したのは片瀬さんじゃない。その声は後から聞こえた。

「姉さん…?」

 恐る恐る振り向くと、黒くて綺麗な長い髪を靡かせる姉が立っていた。

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