83.それぞれの歩き方。
コンコンコン...
まだ少し早い時間なのだが
誰かが部屋をノックする音で目を覚ました。
(誰だろう...)
カチャ...ギィ...
「...レオ.....ハグゥ!」
「うわぁ!(なんだこの可愛らしい幼女は!)」
リンツより幼げな金髪の娘に抱きつかれた。
もちろん知り合いではないのだけれど
何故だか親近感が湧く顔だ。
「レオ、どうしたのー?」
「いや、こ、これは違うんだっ!」
「...カレンッ!.....ハグゥ!」
幼女はあっさりとカレンに鞍替えした。
ちょっと寂しい。...じゃなくて、誰!?
「ああ!ダメだよバスティ!」
「...リンツ...ハグゥ!...ハグゥ!」
リンツが隣の部屋から飛び出してきた。
この幼女はバスティなのか?
「そう。朝起きたらこの姿になってたんだよ」
「あら、おはようレオナルド」
クリスも顔を覗かせる。
マジマジとその顔と幼女を見比べる俺。
それにリンツ...カレン...これだな。
「バスティは三人に化けてるんだね」
「...クリス...ハグゥ...ハグゥ......スキィ...」
「中々の観察眼ね。妹みたいで可愛いでしょ?」
「ハグゥは挨拶みたいだよ」
ここにあの危険人物がいたら
吐血しながら尊いとか言い出すのだろうから
いなくて本当に良かった。
「おじさんにもハグゥしてくれよぉ〜」
「・・・・・・・・」
(ここにもヤバい奴がいた...)
そう言って両手を広げるウォルターだったが
バスティは無言でそれをスルーした。
きっと身の危険を感じたのだろう。
「あーおもしれっ!オッサン嫌われてんな」
また気配を消して突然背後から現れたニト。
さすがに気を使って言わなかったことを
サラッと言ってのけた。
おっさんのライフはもう限界に等しい。
「今日でサヨナラなんて...ちょっと寂しいな」
朝食を食べずにもう出発するというクリス達。
アイテムを返還してパーティー登録も解除した。
フレンドはもちろんそのままだ。
ロビーでケモミミ一家が見送りに待っていた。
ニトとイトと父親が何か話しをしている。
また怒られているのだろうか...
「ちゃんとオレから話すよ」
「わかった。お前たち、ニトから大事な話がある」
勇者(元)がパンパンと手を叩き妹弟達を集めた。
「オレはコイツらと冒険の旅に出るから」
「............ニト兄様?」
状況が飲み込めない妹弟達。
俺もさっぱり意味がわからないのだが...
「母様がいない間じゃねーとマズイしな」
「急で悪い。父様と母様の言う事ちゃんと聞けよ」
「以上だ。質問とかあるかー?」
すかさず手を上げるミト。
「はいっ!ダメだと思いますっ!!」
「質問になってねぇーよ。はい却下な」
その目には涙をいっぱい浮かべている。
推しの兄が突然こんな事言い出したら
どの妹だってこうなる。※72話参照。
別れを嫌がって抱き付く妹弟達の頭を
ポンポンと優しく撫でる兄。
それにしても父親的にはこれでいいのだろうかと
少し疑問に思っていたが...
「昨晩あの子に話があると呼び出されてな」
いきなり頭を下げて頼み込んだらしい。
“オレ、やりたい事が見つかりそうなんだっ!”
“いま行かなきゃ絶対に後悔するからっ!”
そんなこと真面目に考えてたんだな...
「あんなに真剣な顔は初めてだった」
「君に影響を受けたそうだ。本当にありがとう」
(聞かれてた時のアレか...なんか恥ずかしい)
「昔から一度言い出したら聞かないので」
「不束な弟ですが皆様どうか宜しくお願いします」
イトがクリス達に深々と頭を下げた。
昨日の深夜、俺達が部屋に戻った後で
パーティー参加の打診をしに部屋へ来たそうだ。
「枠も空いてるって言ってたしな!」
「だからレオナルド、お前も来るだろ?」
「俺は...」
解除したばかりだが新パーティーへのお誘いだ。
この展開は想定していなかった。
みんなの事が大好きだから離れたくない。
離れたくはないけれど...
「俺は街に戻るよ。やる事もまだあるからね」
「あー残念。ちょっと期待したんだけどなぁ〜」
「でもそれでいいの。キミは君の進み方でね」
差し出された手をグッと握り返した。
そのあとハグゥされたのは予想外だったから
なんだかドキドキしてしまったけれど
優しくて本当に頼れるリーダーだ。
「またいつでも連絡してね。待ってる」
「じゃあねレオナルドさん!」
「元気でな。もっと肉食って筋肉つけろよ」
「......ん。(なにかを差し出す)」
ニトは別れの挨拶がわりに
木と竜の牙で出来たネックレスをくれた。
魔力はないけれどお揃いの御守りだ。
「じゃあ元気でな。行ってくるしっ!」
姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
きっとすぐまた会えるさ。
「それでは戻って朝食にしましょう」
「今日は特別メニューをご用意しましたよ」
イトは皆の寂しい気持ちを振り払うように
いつもの明るい笑顔でそう言った。




