76.攻撃は計画的に。
竜に勘付かれた俺達は二手に分かれた。
寝起きのせいか動きが遅いからよかったけれど
殺気だけはビシビシと伝わってくる。
グルグルグル.....
低い声で唸るドラゴン。
ニトによると、あれは西大陸から渡って来た旅竜。
暖かい場所を求めて世界中を巡るそうだ。
この時期には時々降りてくるらしいのだが...
「普通あんなデカくないっしょ」
「でも戦うしかなさそうね」
クリスがウォルターにハンドサインを送る。
なんだかカッコいい。
「はい。君もボケっとしてたら死んじゃうわよ」
「あ...うん。あれ?ニトがいな.....」
ヒュゥーン
「おりゃぁぁぁぁぁ!!!」ドガンッ!
グリフォンで中庭の上空まで垂直に上昇すると
真っ逆さまに突撃して体当たりをくらわせた。
ギ...グアァァァァァァ...バシィーン!
鋭い爪が背中に食い込んだが
竜はすぐさま振り返って反撃を繰り出す。
ニトはグリフォンをホバリングさせることで
なんとかその攻撃を回避している。
「オレがオトリになってやるから早くしろっ!」
「計画が台無しじゃない...なんなのよっ!」
怒りながらもフィールドに飛び出すクリス。
盾を持たずに両手にレイピアを構える。
片方に短剣を構える二刀流はよく聞くけれど
彼女はこの方が戦い易いようだ。
ヒュッ...助走をつけて竜に飛び移ると
二本のレイピアを背中に突き刺した。
ザンッ!
グアァァァロォォォォォ!!!
弾き飛ばされるクリス。
でもクルッと身を翻してウォルター側へ着地。
レイピアは背中に刺さったままだ。
「ウォルター剣を出してっ」
「あいよ。これとこれでいいかな」
“ポッケ”を持っているウォルターは荷物係。
今度は長剣のクレイモアを構える。
左手を刃にかざすと青白く光り出した。
「いくわよっ!」ジャキーン!スザンッ!
魔剣術には二種類あって
今のは詠唱と魔石を使って剣に魔術をかけている。
魔法の場合は常にかけることは出来ないけれど
斬りつける前とかに発動してダメージを与える。
(さすがは元傭兵だな...)
少し圧倒されてしまったけれど俺も参戦。
カレンは攻撃魔法が不安定だから横で応援。
まあ、こればかりは仕方がない。
味方に当たってしまったら元も子もないのだから...
「ドラゴンは...まず尻尾から切り落とすっ!」
フィオに教わった通りに尻尾を狙う。
ブンブン振り回すし太いから中々難しいが
リンツの雷魔法で痺れている間に振り抜いた。
「雷撃の轟」
「火炎!」スパーンッ...
ドスン...
ギエェェェェェェェ!!!!(ダンダンッ)
痛みで暴れて地面が大きく振動する。
興奮させてしまったが動きは確実に落とせた。
ここから皆で一気呵成に攻める。
シャキーン...ゴォォ...ヒュバーン...ザンッ...
「駄目だ。脂肪が厚くて魔法が効かないや」
「図体がデカくても脂身が多過ぎよっ!」
ポヨヨンッ...
動くたび腹の肉が上下に揺れる。
(.....たしかにちょっと太り過ぎだな)
態勢を整えるために皆で回廊に戻ったが
何故か中庭に残って空へと両手を広げるカレン。
「グラン...」「え!? カレンちょっとま...」
「ボルトォォォォー!!」
制止する声が間に合わなかった。
あの物置小屋を破壊した覚えたての攻撃魔法は
まだコントロールが効かないのだ。
ズ...ズダァァァァァァン!!!!!
上空に現れた雷雲からの稲妻は一直線に落ちて
次に俺が見た時には真っ黒く焦げたドラゴンが
頭を下げて横たわっていた。
「.....大丈夫ですか?」「私は平気よ」
「すごい機転でしたね〜!(尊敬の眼差し)」
怪我人が出なくてホッとしたが
偏光メガネで一部始終を見ていたリンツによると
カレンはちゃんと計算して撃ったらしい。
「レイピアを避雷針にしたんだよ」
「だから竜にだけ直撃したし威力も増したんだ!」
「ボク初めて見ちゃった精霊魔法...(うっとり)」
魔法マニアの解説が止まらないが
ニトとグリフォンも軒下へ入ったのを確認し
考えた上での“偉大なる雷光”だったようだ。
「えへへー。美味しいとこもらっちゃった」
「当然よ。あなたの手柄なんだからねっ!」
カレンの経験値は一気に上がったようで
新しい魔法も覚えたかもしれないと言っていた。
トドメを貰ったから落ちた魔石はクリス達に。
ドラゴンは脂身以外ほぼ炭化してるから
夕飯用に切れた尻尾を保存してポッケへと移した。
「そこから上に行く階段があるからな」
「オレはコイツと先に行くわっ」
ニトは偵察する為に中庭から飛んで先回り。
俺達も通路沿いの狭い階段を登って二階に出たが
今度は無数の“魔物”が待ち構えていた。




