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8.パタパタ鳥とスープ。

思いの丈を履き出したからか

“大きなリボン”が気に入ったのか

ウェザーは泣き止んで大人しく座っていた。


精霊とはいえ女の子と二人きりだ。

何を話したら良いのだろうか。

このまま無言は気まずい...


「ウ、ウェザーって甘いのは苦手なんだよね?」

「.....基本たべない」


緊張から変に声が上ずってしまった。

ウェザーもちょと間を置いてから答えた。


「何か好きな食べ物とかある?」

「にくっ」


この問いには間髪入れず答えた。

肉を食べる精霊なんて聞いたことがなかったから

意外な返答にキョトンとしてしまった。


「そんな顔しないっ」

俺の表情を見て彼女は少しむくれた。


「ゴメン、俺が詳しくないだけだよ」

彼女は何度も(うなず)いた。


確かに俺はまだ冒険者ですらないし

この広い世界の事なんて

本の中に書かれている限りの知識だ。

女神が肉を食べったって良いじゃないか。


「お腹は空いてたりする?」

「........うん」


俺は早めの夕食を作ることにした。

ウェザーはその服じゃ外へ出たがらないだろうし。

(しばら)くは自炊する事になるだろう。


「パタパタ鳥のお肉は食べられる?」

「大丈夫。にく何でもたべられる」


味の好みは分からないから

シンプルに塩とコショウで味付けを。


甘くないもので精霊が好きそうなキノコや

少しだけ残っていた木ノ実を砕いてスープも作った。


ウェザーは手持ち無沙汰なのだろうか。

さっきから無意味に部屋を行ったり来たりしている。


「ウェザー、これを運んでもらえるかな」

素直にこちらにやって来て皿を持っていく。


前にも記述したが

女神級の精霊という生き物は個性が強い。

怒りっぽい性格だったりしたら...


“なぜお前はこの私に皿を運べと言うのだ?”

“ろくなアイテムも持たない甲斐性なしめがっ!”


程度には言われて然りだろう。

この点ではフィオと同じタイプのようで安心した。


「ありがとう。じゃあ席にすわって」

「どうぞ召し上がれ」


ウェザーがとっても嬉しそうな顔をしたから

なんだか俺も照れくさいけど嬉しかった。


「スープも美味しい?」

スープの器をすすりながら頷いた。


「口のまわりついてるぞ」

(さじ)を使わないものだから付いてしまったスープを

俺が反対側の席から手を伸ばして拭う。

ウェザーは恥ずかしそうにしていた。


それから色々話してくれた。

この“世界”になる前は冒険者と旅をしていたこと。

野営をしてたからモンスター肉をよく食べたこと。

上級の魔物に追いかけられたこと。


精霊の命は長いから

他にも沢山の世界を見て来たんだろうな。

ウェザーの話はとても(うらや)ましくて

少しだけ悔しかった。


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