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67.クレーム対応は迅速に。

パチパチパチ...カチ

熱心にログのニュースを読んでいるカレン。

チェックしているのは何故か気象関連の記事。


「雨が降らなくて困ってるんだってー」


最近の異常気象で南部は雨不足。

市場で野菜の価格が急激に高騰しているのも

大干ばつが影響しているのだとか。


「ウェザーって天気も動かせるんでしょ?」

「まあねー。でも基本はやっちゃダメなんだよ」


自然を勝手に変えることは

即(すなわ)ち神の決定に逆らうことと同義だから

精霊であっても倫理的な部分があるらしい。


「前に大洪水になちゃったんだぁ〜あははっ」

(.....それは笑い事じゃないよね?)


いま位のレベルならそんなに心配はないけれど

以前の彼女は相当女神にまで近付いていたようで

ちょっと加減を間違えてしまうと

えらい大災害を引き起こしてしまうのだとか。


天災を引き起こすのもウェザーであるが

それを鎮(しず)めるのが得意なのも彼女達である。

各地をふらふらと放浪しては

気紛れに人々の頼みを聞く自由人(精霊)なのだ。


「もっと役に立ちたいなぁ...」

「カレンは天気予報でちゃんと人の役に立ってるよ」

「そうかなー? そうだと嬉しいなっ(ニコリ)」


カレンの“天気予報(フォーキャスト)”は98%で外さないから

街の人達からは非常に感謝されている。

それを仕事にしている気象魔術師の中には


“そんな確率で当てられたら商売あがったりよ!”


なんて文句を言う人もいるけれど

ただの言いがかりにすぎない。



「そろそろ端末を閉じて。仕事に出かけるよ」


今日は雨だからゴム靴を履いて仕事へ行く。

でも傘は不要だ。


「アイウォールッ!」


シュカーァン...キラキラ

“台風の目(アイウォール)”で俺達の周りだけ日光が燦々と降り注ぐ。

足元はぬかるんでいるから気を付けて歩くけど

それ以外はいたって快適。


カチャ...

「おはようございます」

「おはようレオナルド、カレンちゃん」


大雨で荷物の箱が少し濡れている。

店内の湿度も気持ちが悪いくらい高いけれど

これも彼女の“コンディショニング”で解消。


「カレンちゃんがいてくれて助かるよ」

「またお願いね」「はいっ!」


嬉しそうなカレン。

でも俺は攻撃魔法を覚えて欲しいのだが...

まあ、もう暫(しばら)くの我慢だ。


この後彼女はひたすら届いた荷物の乾燥をして

俺はそれを地下の倉庫に運び入れた。

それから一緒に近くの届け先へ歩いて配達。


「ケニー、今日の分は全部終わったよ」

「お疲れ様。今日もありがとう」


手渡されたコインの袋が割増賃金で重い。

雨の日はこれがあるから嬉しい。



帰り道。

行きの時よりは雨も勢いを弱めていた。

まだ早いけれど晩ご飯の食材を市場で買い出し。

カレンは行きつけの肉屋へと向かった。


「無駄遣いしちゃ駄目だよ?」

「わかってるよー!」


肉なら基本なんでも食べるけれど

高級なお肉はもちろん大好物だから困る。

これはダンジョンに出れば解決する問題なのだが

俺達だけで行くにはまだ無理がある。


(......そろそろパーティーに入ろうかな)


最近それを調べているのだけど

初心者歓迎の所は参加条件が厳しかったりして

仕事をしている俺には都合が合わないものばかり。

どうしたものか...さてと。


「これで買い出し終了。行くよカレン」

「うん!今日はドラゴンステーキだよー!」


........勝手に高いやつ買ったなカレン。

まあ、今日の給与は彼女のおかげでもあるし

肉屋も常連割引してくれたらしいから特別に許す。

俺もドラゴン肉は好きだ。



家に着いてから貯蔵庫に食材を入れる。

ステーキは焼くだけだから仕込みも要らないし

あとは晩飯の時間になるまでの間

昨日届いたフローリアの曲でも聞こうかな...ん?


ピロン♪


“メッセージが届きました”

“レオナルド、悪いんだけれどすぐ戻ってくれる?”


ケニーから連絡が来た。

客を待たせているとも書かれている。

(これはクレーム対応で土下座コースか.....)


配達でミスったのだろうか。

小さなトラブルならお店が処理するはずだから

呼び出しをくらうなんて余程の事態だ。


俺は一瞬頭が真っ白になったが

とりあえずカレンを連れて店まで急ぐ。

こういう時は速さが重要だ。



カチャ...バタン

「レオナルド。帰ったのに呼び出してゴメンね」

「あんたに逢いたいって娘(こ)がいるんだけど...」


待合所のソファーの真ん中で

偉そうに足を組んで座っている女の子。

どうやらクレームとかではなさそうな感じだから

俺はホッと胸を撫で下ろした。

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