心の在り処
とある町、そこには天真爛漫な少女がいた。
少女は表情豊かで、感性も人よりある少女だった。
そんな少女には特別な力が備わっていた。その能力と言うのが、感情を他人に分け合えると言うものだった。
そんな能力を所持はしていたが、少女にはこの能力の使い道と言うのがわからなかった。
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そんなある日のことだった、街を散歩しているときに空き地で子供たちが遊んでいる中で一人だけそれを見つめる少年がいた。
「どうしたの?」
そう声をかけると少年は少し悲しそうな表情をしていた。
「あのね、仲間に入れてほしいんだけど声をかける勇気がなくて…」
少年は少し元気なさそうに、そう呟いた。
「そうなの?うーん、あ、お姉さんが君に勇気をあげるよ!」
そう言い、少女は胸のあたりに手を当て、光るものを少年へと授けた。
すると、少年はみるみると、自信がついた表情になっていった。
「わぁ、なんか、お姉さんのおかげで勇気がわいたよ、ありがとね!」
「いえいえ、楽しく遊んでくるんだよ」
そう言うと、少年は子供たちの方へと走っていった。
少女は初めて能力を人に使うこととなったのだが、この能力でできることに気づいた瞬間でもあった。
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こうして、少女はこの能力を使って、感情を必要としている人々に、与えようと考えていた。
喜びを必要としている人々には、楽しいと思わせる感情を与え、
悲しみを必要としている人々には、涙を与え、
怒りを必要としている人々には、激情を与えた。
そして、町はどんどん明るくなり、感情溢れる情熱の町となっていった。
だが、少女は能力の影響で自分の心を失いつつあった。
それでも、少女は人のための優しさという感情が作用してか、町の人々に感情を与え続けた。
しかし、求められ続けた感情は、その優しささえも失ってしまった。
こうして、少女は完全に心を失ってし合ったのだった。
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少女は心を失い、家に塞ぎ込むようにっていた。
少女の家は森の奥にあるので、町の人々は誰一人立ち入らなかった。
そんな中一人の少年が家を訪ねてきた。少年は家の扉を叩き言葉を掛けてきた。
「あのー、お姉さんいらっしゃいますか?」
そう少年が言って出てきたのは、無表情で心が固い氷にでもなったような雰囲気を持った、少女だった。
「なにか?」
やはり、声も前に聞いた時の元気はなかった。
「昔、お姉さんに勇気をもらったものです」
「それで?」
「お礼を、したくてきたんですけど、少し僕に付き合ってもらいませんか?」
なんで?と聞いても良かったのだが、やることもなかったので付き合うことにしたのだった。
そして、向かった先は山の頂上だった。
そんなところに行って何があるのだろうと思ったが、その理由はついた時にわかっていた。
「綺麗…」
久しぶりに心からの言葉というのが出た気がした。そうして、吸い込んだ空気はとても優しい甘い味を込めていた。感情が流し込まれてくるように。
そう感じていると横で少年が笑っていた。
「前会った時の顔付きに少し戻りましたね」
そう言って少年は微笑んだ。
こうやって、少年少女は感情を戻す、為に出掛けるようになった。
楽しいダンスパーティや、悲劇で終わる演劇、美しい海など色々な場所に赴いた。こうして、少女はだんだんと感情を取り戻していったが、人に対する思いがどうしても取り戻すことができなかった。
そんな日々を過ごしていた時、森の花畑に立ち寄った。
「私、色々な感情が思い出せて、今とても嬉しいの。なんでこんな思いをあの時手放そうと私は考えたのか今となってはもうわからないな」
そう少女は答えた、すると少年はいつも彼女に向ける笑顔とは少し違い寂しさが混ざった笑顔を向けた。
「あなたに、勇気を与えてもらってから僕は自分でしたいことを自分で決めることができた、これもお姉さんのお陰だね。だから、あなたへの恩を返したいと考えた。そして、僕に出来ることはあなたの感情を戻すことだって気づいたんだ」
「だから…」
そう言い少年は、短剣を取り出し自分の胸に押し付けた。
「え…?」
横で今まで笑っていた少年は赤い血を流し横たわっていた。
すると、少女の目の色には生気が戻っており、人を思いやる心が復活していた。その途端、彼女の目には涙がとめどなく流れる。
「なんで…、なんで!」
すると少年はなけなしの気力を振り絞って言った。
「僕は…あ…なたの…、無邪…気な笑顔…が…好きで…し」
そう言うと、糸が切れたように、少年は命を落した。
少女に人を好きになる感情を残して。
人気があれば、ハッピーエンドも書いてみたい