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3-4

 周囲は乾燥地帯の樹木や、落下してきたらしい巨石などが散見されたが、トンネルの入り口付近はまだしも整備されているらしい。

 道が何本か伸びており、そのうちの一本は四人が今まで歩いてきた道、もう一本は村への直通のようだ。しかし他の道は途中から完全に荒れ果て、単なる山の斜面と化して、廃トンネルめいた雰囲気を作り出す一端を担っていた。

 しかしそれは道のみならず、破壊された検問所のせいでもあるだろう。検閲官が詰めるはずの小さな建物は、廃材の山と化している。門の役割を果たす柵も、支柱すら残っていない。

「これは……酷いですね」

 リコネスが最初に漏らした感想は、そんなものだった。

 まだ大きく肩で息をしながら、悲痛な顔で惨状を見回していく。

 同様に、冒険者たちも周囲を確認していた――ただしリコネスとは全く違う意味合いだったらしい。マナガンが呟く。

「奇妙だな」

「ああ。場所は間違ってないんだろうな?」

 オデッサが頷き、エルが肯定する。

「形状からみても間違いない。そもそも、この近辺に他のトンネルは存在しない」

 冒険者たちは慎重な声音で言い合いながら、ゆっくりと歩を進めていった。リコネスだけはきょとんと首を傾げ……取り残されていることに気付き、慌てて追いかける。

 向かう先は当然、トンネルの中だった。

 二頭立ての馬車がすれ違えるようにと設計されていたのだろう。幅も高さも、その必要分ほどにしかなかった。とはいえ人間にとっては十分な広さではある。

 また、奥行きも人間にとっては十分過ぎるほどだった。緩い湾曲を見せながら伸びるトンネルは、朝一番に出発したとしても、往復するだけで昼近くになってしまうだろう。

 いくつかの穴を見せながらも補強された内部は、一応の照明が灯されているが薄暗い。さらに土の道を踏みしめる音が深く反響し、不気味極まりなかった。

 リコネスは恐々と声を発する。

「あの……どこまで行くんですか?」

 まだ辛うじて、入り口の光が届く範囲ではある。しかし冒険者たちは、ゆっくりとだが確実に奥へ奥へと進んでいた。

 声の反響が収まるのを待つようにして、マナガンが答えてくる。

「おかしいとは思わないか? 我々はモンスターの群れを退治するよう依頼されたんだ」

「そういえば……」

 ようやく気付き、リコネスは改めて周囲を見回した――モンスターの姿がない。

「ひょっとして、村に……!?」

 ハッとして口元を押さえるリコネス。激痛のような不安に、しかしオデッサはあっさりと頷いてきた。

「その可能性は十分にある。ま、ここで待ってりゃ戻ってくるだろうがな」

「そんな! それなら早く村に行かないと!」

「……まだそうと決まったわけではない」

 踵を返しかける同行員の肩を捕まえ、エルがぼそりと言う。

「このトンネルはとても長い。もっと奥に潜んでいるのかもしれないし、出口の側にいる可能性もある。だから今は、もっと奥へ進んでから考えるべき」

「それは……そうかもしれませんけど」

 リコネスはまだ納得いかない様子だったが、冒険者たちに言われて渋々と歩みを再開した。また不気味な足音の反響が耳に入り、さらには奥へ進みたび、それが大きく深くなっていく。

 ……と、その時だった。オデッサが不意に、薄暗い照明の中で怪訝に眉をひそめた。

「待て。おかしくないか? この音――」

「音?」

 聞き返したのは、誰だったか。いずれにせよ四人はその場で足を止めていた。ザッと一度土を踏みしめて、それきり足音が消える――いや。

 消えていなかった。

 全員が足を止めたにも関わらず、足音だけは残っていた。

 いや正確に言えば、それは足音ではなかっただろう。ざりゅっざりゅっと土を削る音のように思える。それがどこか遠くから、次第に大きくなって近付いてくるのだ。

 反響のせいで正確な位置は掴めない。しかし前後にはなんの姿も見えないまま、音だけが迫り来るのがハッキリとわかった。

「これって……」

「避けろ!」

 リコネスが呟いた瞬間。それを遮る叫びと共に、彼女は思い切り突き飛ばされていた。

 そしてそれら全てを飲み込む轟音が、トンネルの中を包み込んだ。

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