The Last Daylight 「Angel of the Air Autrue ch Rutuc」
今日も昨日と変わらず笛を吹いていると、女の子が現れた。この世界の人間は口が無く、機械で体が出来ている様だった。同じ宝石を付けていたのは驚いた。とりあえずその宝石のメロディーをハープで吹いて楽しんでいた。
しばらくして、女の子は立ち上がり、何処かへ行こうとした、何やら別れの言葉を出力しているようだ。また一人になるのは寂しかったが、こちらも別れの言葉で応じた。
「じゃあね、キャステ」
この名前は一体何処から出てきたのだろうか。考えている内に彼女はもう何処かへと去っていってしまっていた。何の面識も無かった女の子を追って、僕は走り出していた。そして、気付いた時には抱きしめていた。
女の子の金属を全て背中に付けた。そして肉体を彼女に分けた。分けたら僕の体は機械の羽根だけになっていた。羽根だけになってしまったので、僕はどうしても空に飛んでいかなくてはならない気がした。
肉体を分けてしまう前に、その女の子の髪がとても綺麗だったので、一本だけ貰っておく事にした。そしてその代わり、僕は先日作った草の冠を彼女の頭に載せた。可愛らしい寝顔が少しだけ緩んで、微笑んでいるように見えた。彼女の頭を守る役目を得たその冠は、頼り無い程簡素な作りなのに、ちょっとだけ勇ましく、立派な物に見えた。
僕は空を見上げた。
さっきから何故泣いているのか、全然見当がつかなかったから、上を向いた。
もう、体は空気になってしまったので、あの音の出る宝石も地面に落ちてしまった。なんだか二つの宝石は、離れ離れになってしまった恋人たちの様だったから、もうちょっと二つを寄せたいと思った。でも僕にはもうどうにも出来ない。涙だけは空気じゃなくて、僕の真下に落ちた宝石にぽたぽたと雫が落ちていた。見ると彼女も涙を流していて、それが彼女の方の宝石にもかかってそれを濡らしていた。そして二つの宝石が共鳴した。
共鳴した宝石の間に光の柱が立ち上り、そして光は天使の形になった。僕は直感的に思った。僕がこんな赤黒い不気味な場所に彷徨いこんだのは、この天使に出会う為だったのだと。彼女は僕の目に見えない手を取って、僕の目に見えない笑顔を読み取って微笑んでくれた。もう僕は泣いてはいなかった。僕はこの人さえいてくれれば、誰にも知られず誰にも触れる事の出来ないこの空気の体でも幸せに生き続ける事ができる。僕は機械と言う人の業を背負い、太陽の天使と手を携えて、空の一部になりに行った。もう空は黒く染まっていた。この次に空に光の広がる時には、この空一杯を澄んだ青で染めてやろう、そう思った。




