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魔王ルグレが学ぶ街  作者: じゃっく
1章 「少女との出会い」
3/3

【改変中】




頭の中で体が浮かぶ感覚を覚える。

ふっと 徐々に体の感覚が戻ってくる。

その感覚は柔らかいフワフワした物に包まれているように感じた。

ルシフェルはその浮かんでいる感覚が心地よく、このまま、また眠ってしまいたいと思えた。




彼は2度目の目覚めだと認識する。



しかし、穏やかで心が落ち着く。そんな感覚は初めてだった。


眠ってしまいたい気持ちを抑え、ルシフェルは重たい瞼をヌルヌルとあげた。


視界に映るのは真っ白な天井。

初めての鼻に臭くもないが特徴的な不思議な匂い。


自分の体が何かの上にあるのが分かる。


自分は布団と思われるモノに包まれていた。


服装もあの軍服ではなく白い病院着。


ここはいったい。どこだ。

ルシフェルは自分が眠る前、なにがあったか思い返す。

気づいたら戦場の中にいて、何故かあの人間を助けて逃げたことは思い出した。



ん?あの人間は何処へ?彼女は無事なのだろうか。



ルシフェルは首を動かし少女を探した。壁が白く、眩しい。小さな机と花の入った花瓶。それがおいてあるだけだ。あとはよくわからない機械も。

しかし、見つからない。落胆で頭がしたに下がる。すると自分の体以外にあの金色の髪が見えた。


恐る恐る髪に触って金髪を解く。

髪がどいた顔はあの少女の顔だった。

可愛らしい顔立ち。あの青い目は閉じられすやすやと眠っている。


安堵感。落ち着いて赤い目で少女をジッと見つめる。


指はまだふわふわとした金髪に絡まっていた。


日差しが彼女の髪の美しさを際立てている。


ルシフェルはまた今までに感じたことのない欲求にかられる。

それは頭をなでたいという欲求だ。

なぜそのような欲求に駆られるのか疑問に思い、彼女の髪を撫で続ける。

柔らかく、指通りの良い髪。ずっと触っていたくなる感触。


気持ちいい。


そんな感想が出てきた。ルシフェルこれも初めてのような気がした。


あの時、 目が覚めてから初めてのことばかり、頭が混乱してくる。


まだ、目覚めて時間はたってない筈なのに。


髪はサラサラとルシフェルの指から滑り落ちる。


だが、少女は起きない。


その少女に興味を奪われ、ルシフェルは時間を経つのを忘れていた。



耳が不意に声を捉える



「ああ、良かった。起きられたんですね!」


顔を上げ、声のした扉へと目線を向ける。


そこには、花の入ったバスケットを持った茶髪で緑の目をした10代と思われる女性が立っていた。


胸には、ロザリオを下げており、黒いシャツに茶色のスカートを靡かせ、ルシフェルと少女の寝ているところへと歩いてくる。


「貴様は何者だ?此処は何処だ?」


表情を変えず、 ルシフェルは金髪の少女を腕で隠し、茶髪の女性を見つめる。


ルシフェルは茶髪の女性に自分たちにとって害があるのかないのか、分からないでいた。

人間は害あるものだと認識しているがしかし、自分のそばにいる少女によってその概念が壊されてしまった。

今まではただ何も聞かずに排除すればよかったのに。

どうすればいいのか、分からなくなってしまった。



目の前の女性は微笑む。




「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ」


混乱し、警戒を解かないルシフェル。

そんな彼に彼女はそう言うと胸に手を当て、自分の名前を言った。



「私はリリー・マーガレット。居酒屋マーガレットの看板娘です」


胸から腰へと手は移動し、えっへんと胸を貼るリリー。

そんな彼女に目を白黒させて、表情は無感情のまま変わらないものの心では、呆然でとして聞いたことのない単語を復唱した。


「かんばんむすめ?」



「そ!看板娘!あ、まずは私のことより、あなたのことですね」


手をパチンとあわせ、満足と言った顔で頷くと、リリーは花をテーブルにある花瓶の横に置き、その横にある椅子を持って、ベッドの横へと移動してきた。それをルシフェルは目で追いかける。


「私のこと?」


「そう!あなたのことです!」


硬い音を立てて、床へと着いた椅子。その椅子へと少女は座る。


「昨日はほんとに驚きましたよ。門の前で警察の人と入荷品の点検してたら、あなたが女の子を抱き抱えて。フラフラだったし、そのまま倒れちゃうし、大変でしたんですから!」


先程からコロコロと表情を変えるリリー。この人間も害はないように感じる。

もう自分には右も左もない状態だ。このリリーという人間の話を聞くしかない。だが、


「よく分からない。」


そう、意識が飛ぶ前も分からないことだらけで今も不可解なことへの連続。ルシフェルの頭はパンクしそうであった。如何せん現代に対する知識も皆無。お手上げと言ったところだ。


「あ、色々と省いてすいません。とりあえず倒れる前のことは覚えてますか?」


「覚えてはいるが、意識が朦朧としていて、周りの状況が把握出来なかった。」


頭を抑えなんとか思い出そうとするがあの時必死だったので、記憶が曖昧だ。


「そうですか。貴方はその子を抱いてこの街の門の前まで、朦朧として歩いてきたんです。何かから逃げるような、そんな感じがしたのですが」


そうリリーは心配そうに顔に手を当て考える素振りを見せる。


ルシフェルは先程から無表情のまま変化しない顔で彼女の疑問に答えた。


「戦場と思われる場所でこの人間と会った。しかし、抹殺しようと襲われたので、そこから逃亡した」


「戦場!?」


ルシフェルはベッドで眠る少女の髪を撫でながら、端的に声を出す。


「ただ、気がついたらその場所だったので、戦場とは断定できないが」


「そう、でしたか。もしかしたら、この子に記憶がないのはそのショックでかしら」


顔を蒼白にさせながら、リリーは少女を物悲しそうに見つめる。


ルシフェルはその言葉に疑問と不安を覚えた。


「記憶がない?」


「ええ、あなたが倒れたあと、私達が保護したのです。その時に名前を聞いたのですが全く答えがでないようで」


ルシフェルは再び少女を見る。

目覚めてから最初に出会い、様々なことを短い間ながら与えてきた少女。その少女に何もないのだ。記憶もなければ、親も分からない。

天涯孤独と言ったところだろうか。

ルシフェルは親というものを知らないが、この小さな存在には大きな存在がいないと生きていけないのが本能的にわかる。


再びの不安と焦り、これは心配と言った方がいいだろう。


本当にあの無感情のルシフェルはこの少女に感情をグルグルと変えられてしまっていた。


「記憶がないので貴方のそばにいないと怖いみたいで、貴方を治療する時も、着替えさせる時もずっと貴方から離れなかったんです。」


「そうか。治療?」


「体力もかなり消耗してましたし、それにあなたの頬、銃弾掠めたみたいで、その、お医者さん曰く一生消えないみたいなんです。」


申し訳ないように利用リーはルシフェルの右頬を指す。


それにつられてルシフェルの手は自分の右頬へと移動していた。


触るとツルツルとした布のようなもので覆われている。少しふわふわしてる。


ルシフェルは物珍しそうに自分の頬に貼られたガーゼとテープを撫でていた。



一生残る傷。この際どうでもいい。


どうせ消えると思っていたが、何故か生きている。


殺されかけたのに生きている。


それにこんな経験をさせてくれている少女がいる。


この傷が残ろうが関係のないことだ。



そこまで考えてルシフェルは少し疑問に思った。

堕天使は天使の名残か力が強い者だとそれほど深くない傷なら比較的短い期間で治る。

かすり傷なら数分。肉が少しえぐれたなら数日。

もちろん命にかかわる傷はかなり時間がかかるが、今回のこの傷は数日で治るような傷だ。


「力がないから」


もしかしたら、自分は








人間と同等になってしまったのではないか。




胸に手を当て自分の中にある魔力を確認する。

普段ならこんなことしなくても溢れてくるほどあるはずだ。

しかし、何も感じられなかった。

すっからかんだ。

目覚めた時に何も力がないと感じていたが、ここまで酷いものとは思わなかった。



「あの?大丈夫ですか?」


胸に手を当てたまま考え込んでいたルシフェルの顔をのぞき込むリリー。


そういえば、リリーもルシフェルのことを人間だと思っているようだ。

堕天使だと、魔王ルシフェルだと知っていたらこんなことはしてくれないだろう。

それに、一人ではないだろうがここまで自分を運んで、この少女と一緒にこのベッドで寝かしてくれて、ルシフェルは案外人間は悪いものではないような気がしてきた。

良く考えたら自分は人間を知らなすぎたのではないだろうか。


ルシフェルはそんな考えをするようになった。



「大丈夫だ。」


「そういえば、貴方のお名前聞いてなかったですね」


名前…きっとルシフェルと名乗ってしまえば、彼女は敵に回るのではないか?そうすればこの少女も危ないのでは?

様々な不安がルシフェルの中で渦巻く。

あの兵士に狙われていた少女を守らなければ




それに人間として暮らしていくのも悪くない気がする。







そう言えば、何故、私は人間をあまり知ろうともせずに滅ぼそうとしたのか。

ルシフェルは自分の今の感情を己の名前にすることにした。




「私の名前はルグレ」



後悔という意味の名を自分につけて




「ルグレ・トレートル」



神に逆らった反逆者は、新たな一歩を歩き出そうとしている。















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