迅重対張遼!?
「さぁて、あんさんの得物は何なんや?」
張遼は自身の得物を頭上で振り回した後に石突きで地面を打ち付けて迅重を見る。
「俺の武器はこの旋棍だ。」
迅重はそう言って軽くトンファーを振り回し不備が無いか確認する。
「見たことない武器やな…?」
「熟れるにはそこそこ時間が掛かるが使い勝手は良いからな。」
「ほな、始めよか!」
「良い?あくまでも試験だって事を忘れないように…始め!」
賈駆の合図と共に張遼が先ずは小手調べと突きを繰り出す。
「おっと!」
迅重は旋棍で受け流しつつ一足飛びで横に飛ぶ。
「それは流石に食らわんなぁ」
「いきなり突きを放つか?」
「そんなんでアンタがやれるとは思うとらんよ。」
「そうかい…。なら今度は此方から行くぞ!」
迅重はそう言って旋棍を構えて走り出す。
「きいや!」
対する張遼は飛竜偃月刀を構えて迎え撃つ。
「破ッ!」
迅重は左右のジャブから柄の長い方にシフトして突きを放つ。
「甘いわ!」
しかし、張遼は難なくそれを処理して反撃とばかりに横に薙ぎ払う。
「っと!」
すかさず迅重は旋棍で受け流しその軌道を変えて懐に入るが…
「ぐっ!?」
迅重は水月の辺りに石突きで攻撃を喰らうが即座に後退して追撃をされないようにする。
「危ない危ない…。いきなり懐に入られるとは思わんかったわ♪」
張遼はそんな迅重を見ながら喜色満面の笑みを浮かべて飛竜を正眼に構える。
「…懐に入られた時の対処もしっかりとしてるんだね…。」
「そらそうや。偃月刀もそうやけど長物使う奴は懐に入られた時の対処っちゅうんのは必要になるんやからな。」
「…なら、少し本気出すかな…。男の意地ってもんをみせてやるよ!」
「よっしゃ!受けて立つで!」
「ただ、しっかりと気を張っておけよ!第一仙気門解放!」
「っく!なんや!?」
一瞬だが迅重の方からとてつもない風圧と威圧を感じた張遼は身構えるが…。
「止まってる事は悪手だぞ!」
すぐ後ろから迅重の声が聞こえた張遼は確認する間もなく薙刀を背後に振るうが手応えを得られなかった。
「こっちだ!」
「なんやて!?」
背後を振り向いた時には既に迅重の姿は無く張遼の目と鼻の先で旋棍を突き付けていた。
「…勝負ありかな?」
「因みに、聞くんけど妖術とかとちゃうよな?」
「これは妖術とは違うよ。体内の生命エネルギー…所謂、氣と言う物で身体能力の向上をしただけだよ。これは素質のある者か後天的に目覚めた者が扱えるものだよ。」
「そっか…か~!ウチの負けや!けど次に勝つんはウチやで!」
張遼はそう言ってニッと笑う。
「改めて自己紹介するわ。姓は張、名は遼。字は文遠、真名は霞や!」
そう言って偃月刀を持っている手とは逆の手を差し出す。
「良いのか?真名は神聖な物なんだろ?」
「ええんよ。手合せしてみてアンタは悪い奴やないっちゅうのは分かったんやからな♪」
「…武人としての感性か。姓は鐵、名は迅重。こちらもよろしく頼むよ霞。」
「お互いに気張って行こうや!」
こうしてお互いに握手を交わす2人であった。